前回に続いて、3回目の全国鳥類繁殖分布調査から5年がたったタイミングで、この5年間にみられた鳥の変化を紹介します。
ヤイロチョウの繁殖分布がさらに北へ拡大?
過去3回の調査を通して、ヤイロチョウの繁殖分布は拡大傾向にあります(図1)。1970年代には九州と、本州の太平洋側のごく一部でのみ記録されていましたが、1990年代、2010年代と、中国地方、近畿地方、千葉県までの太平洋側へと分布が広がってきています(植田・植村 2021)。バードノートに登録された、2022年から2026年の繁殖期の結果を見ると、特に北陸や南東北でわずかに繁殖分布が広がってきているように見えます。他の地域も含めて全国鳥類繁殖分布調査と比べると記録が少ないのは、調査努力量の少なさを反映しているものと思われます。

図1. ヤイロチョウの繁殖分布
左側が前回の全国鳥類繁殖分布調査の結果、右側が2022–2026年の繁殖期にバードノートに登録された記録。 赤: 繁殖を確認した 青: 繁殖確認できなかったが、繁殖可能性がある 水色: 生息を確認したが、繁殖の可能性は、何ともいえない
サンジャクの定着と増加
サンジャクは中国原産の外来種で、2000年に愛媛県南西部の観光施設から逃げ出したものが起源になっていると考えられています。逃げ出してからじわじわと分布を広げていると考えられ、2010年代に実施した第3回の全国鳥類繁殖分布調査では3メッシュで記録がありました。それ以前の全国鳥類繁殖分布調査では記録がなく、前回の調査で初めて記録された鳥です。これまでに愛媛県と高知県の南西部で分布が確認されていて、定着した場所では農業被害が報告されています。佐藤ら(2018)によると、サンジャクはほとんどの記録が標高400mよりも低い場所でのもので、特に標高100以下での記録が大半を占めています。
高知県の南西部には、モニタリングサイト1000の陸生鳥類調査の調査地点の一つ、市ノ又サイトがあります。ここは毎年調査を行うコアサイトの一つで、標高500mより高い場所に調査地点が設置されています。ここでは、付近の低地でサンジャクが定着してからもしばらくの間はサンジャクの記録がありませんでしたが、2019年に初めて記録がありました。その後しばらく、記録はない状態が続いていたのですが、2023年に再び記録されてからは毎年記録があり、定着したものと思われます(図2)。最新の2026年の調査では4羽が記録されました。
サンジャクは今のところ四国南西部だけに分布していますが、四国東部にも生息に適した環境がひろがっています。特に、海岸から近い場所で、農地が広がる低地と森林が広がる山地にかけてが生息適地であるようです(Matsuda et al., 2025)。今後そうしたところに広がっていく可能性は高いでしょう。バードノートには、上の論文の著者である佐藤さんから2022年の記録があったのみでした。その記録は、高知県南部の島からの記録でした。四国本土からの距離がわずか100mしか離れていない島ではありますが、サンジャクが海上を移動することを示しています。今後、対岸の九州など他の地域に広がっていく可能性もあります。もしサンジャクを見かけられましたらぜひお教えください。
標高が低い場所でのヒガラの記録
こちらもモニタリングサイト1000の記録から見えてきた変化の紹介です。京都府京都市の上賀茂サイトはコアサイトのひとつで、ヒノキ、アカマツ、広葉樹が混交する標高約180mのところにある森林です。このサイトでは個体数が少ないながらもほぼ毎年ヒガラが記録されていました。しかし、2022年以降の調査では5年連続でヒガラが記録されていません(図3)。
全国鳥類繁殖分布調査では1970年代から2010年代にかけて継続的に記録地点が増加しています。特に1500m以上の場所で個体数が増加していました(植田 2023)。モニタリングサイト1000のコア・準コアサイトのすべてを対象とした解析でも、記録個体数はやや増加しています(図4)。一方で、上賀茂サイトはヒガラの分布の低標高側の端にあたります(図5)。このような標高が低い場所では、ヒガラの個体数や分布が減少している可能性がありそうです。
バードノートへのご登録を引き続きお願いします
前回と今回の記事で紹介した鳥の変化は、モニタリングサイト1000などの継続的な調査だけでなく、バードウォッチャーの皆様から寄せられる日々の観察記録がとても大切な情報源になっています。特に夏の間は登録される記録が少ない傾向が続いていますが、もし鳥見をされたらぜひ情報をお寄せください。普通種の記録こそ大歓迎です。
参考文献
Matsuda, H., Kawamura, K., Higa, M., Sato, S., Tanioka, H., & Yamaura, Y. (2025). Non-native Red-billed Blue Magpie Urocissa erythrorhyncha expanded into lowland areas with moderate forest cover, with no significant impact on native common bird occupancy, in Shikoku, southern Japan. Ornithological Science, 24(1), 85–98. https://doi.org/10.2326/osj.24.85
佐藤重穂・濱田哲暁・谷岡仁(2018).四国西部におけるサンジャクの野生化.Bird Research, 14, S1–S5.https://doi.org/10.11211/birdresearch.14.S1
植田睦之, 植村慎吾, 葉山政治, 荒哲平, 高川晋一, 川路則友, 梶田学, 仲村昇, 田畑早紀, & 内山優奈. (2021). 全国鳥類繁殖分布調査で収集された20 kmメッシュの鳥類の繁殖分布のデータ. Bird Research, 17, R5–R9. https://doi.org/10.11211/birdresearch.17.R5
植田睦之(2023)日本の森の鳥の変化:ヒガラ. バードリサーチニュース2023年7月:1. https://db3.bird-research.jp/news/202307-no1/




