4月半ばに北海道北部へ行ったとき、いくつかの湖沼でキンクロハジロの小群を見かけましたが、いずれもオスばかりの群れだったので不思議に思いました。もしかすると雌雄で渡り時期が違っていて、この時期にはオスが多いのかもしれません。そこで、ガンカモ調査の記録を分析してみました。
ガンカモの雌雄別に記録がある調査地は少ないのですが、そうした調査地のデータデータを抽出して、複数年にわたる月別のオス率について箱ひげ図を作りました(図1)。偶発的な雌雄の偏りを避けるために20羽以上の記録を選び、同じ月に複数回の調査がある場合はいちばん個体数が多い記録を使用しています。ガンカモ類の北帰は一般的には2月から始まるので、10-1月と2-4月の記録に分けて比較すると、大野川河口(北海道函館市)、高松の池(岩手県盛岡市)、相模原貯水池(神奈川県相模原市)、大阪城公園(大阪府大阪市)、昆陽池(兵庫県伊丹市)は2-4月のオス率のほうが高くなることが統計解析で確かめられました。他のカモ類についても、同じハジロ属のホシハジロ、それからマガモ、オナガガモ、ヒドリガモ、ミコアイサの記録を分析しましたが、春の渡り時期にオス率が高くなる調査地はほとんどありませんでした。
マガモやコガモなどの水面採食ガモ類と異なり、キンクロハジロのような潜水ガモ類は越冬地では雌雄がペアにならず、渡りの中継地や繁殖地に着いてからペアを形成をするようです。その理由は、潜水しているあいだオスは自分の相手のメスが見えないので、メイトガード(メスを他のオスから守る行動)ができないためだと考えられています。ペアを作っていないために雌雄が別々に渡るとしたら、北帰が始まるとオス率が高まるのはオスが先に渡るためかもしれません。もしそうなら、さらに遅い時期にはメス率が高くなっているかもしれませんが、季節が進んでカモ類全体が減る時期にはカモ調査の記録も減ってしまうので、4-5月には雌雄別の調査記録がほとんどありませんでした。しかし雌雄は別としてキンクロハジロの渡り時期がいつまで続くのかは調べることができます。図2は環境省の渡り鳥飛来状況調査の、2024-05年のキンクロハジロの地域別個体数合計値の季節変化です。約半数の調査地では3月までで調査が終わるため、4-5月は個体数が過小評価になりますが、それでも北海道や北陸で4月下旬から5月上旬がピークになっていて、オス率の解析に使った雌雄別データが存在する時期より遅くまで渡りが続くことがわかります。もしかすると渡りの後半にはメスの割合が増えているかもしれません。この仮説のようなことが起きているとしたら、キンクロハジロの越冬地ではオスが北帰してメスが残っているところに渡りのオスが入ってくるかもしれないので単純ではありませんが、来シーズンはキンクロハジロの雌雄の割合について調べてみたいと考えています。秋になったら調査方法をお知らせしますので、興味のある皆さまに参加していただけるとうれしいです。

図2.渡り鳥飛来状況調査の2024-05年のキンクロハジロの地域別個体数合計値の季節変化。9-5月を表示しているが、約半数の地点は調査期間が10-3月であるため4-5月が過小評価になることに注意。

