シマアオジの越冬ねぐら調査を実現するため、会員の皆さまから写真などを提供していただいて2025年9月から11月にかけて実施したクラウドファンディングでは、のべ411名の方から461万円のご寄付をお寄せいただくことができました。ご協力、ありがとうございました。
シマアオジの状況やクラウドファンディングについての詳細はこちら
バードリサーチニュース 2025年9月: 2
シマアオジのいる景色を取り戻したい -クラウドファンディング開始のお知らせ-
皆さまからのご支援をもとに、2026年2月中旬から3月中旬にかけてネパール、ミャンマー、タイ、カンボジアの4か国の研究者や自然保護団体と共に調査を実施しました。その結果、16か所のねぐらで、187,310羽のシマアオジを記録することができましたので、ご報告いたします。
アジア4か国16か所の越冬ねぐらでシマアオジの個体数調査を実施
背景:シマアオジの減少とその原因
シマアオジは日本では、北海道の草原で広く繁殖していましたが、現在はほとんど生息が確認できない状況になっている夏鳥です。かつて1億羽以上がユーラシア大陸の広範囲の草原で繁殖していたとされていますが、その80%以上が失われたと推定されています ( Kamp et al. 2015 ) 。シマアオジの保全のためには、その正確な状況把握が必要です。しかし、これまで地域的な調査報告はあっても、全体を把握するような調査はされていませんでした。
繁殖地の北海道の草原に大きな変化がない中、減少の原因として指摘されているのは、越冬地や中継地などにおいて、かすみ網を用いた捕獲により大量に捕獲されていたことです(中国では2021年2月にシマアオジが保護種の第一類に指定され、現在では狩猟が禁止されています)。その他にも、農薬や湿地の乾燥化、農地への転換なども影響しているかもしれません。
なぜ越冬地のねぐらで調査するのか
国境を越えて渡るシマアオジを保全するためには、国際的な連携が必要です。彼らの置かれている現状を彼らの渡りの中継地や越冬地の国々に周知し、減少要因と考えられるものを一つずつ減らしていかなければいけません。そのためには、個体数をモニタリングし、具体的な数字を根拠として示さなければなりません。そして、そのモニタリングを継続することで、取り組みの効果がシマアオジの個体群の回復に繋げられているのか、今もなお減少が続いているのか、把握することが必要です。
繁殖期のシマアオジの分布は広く、また、なわばりを持つためばらけており、さらに個体数密度が低下しているため、単純に生息適地の面積から推定することができません。一方、秋になるとすべてのシマアオジが東アジアを通過して南下していると考えられており、越冬地は繁殖地に比べて範囲が狭く、また、大きなねぐらを形成するため、効率よく個体数を調査することができます。
調査の方法
調査を実施するためには、シマアオジのねぐらを探しておく必要があります。彼らのねぐらは広い草原や農地の中にあり、数万羽が1か所に集まることもあります。今回調査を実施した4か国では事前にその準備を進めていました。また、シマアオジのねぐらには他の鳥も一緒にねぐらをとっていますが、ねぐらから飛び立つ際、他の鳥よりも高く舞い上がってから移動していくので、行動の違いから種を識別することができるのです。
今回の越冬ねぐらでの個体数の調査では、夜明け前の暗いうちにシマアオジのねぐらに移動し、ねぐらを取り囲むように調査員を配置しました。そして、夜明けに飛び立つシマアオジをカウントする方法で調査しました。
この動画は2025年に実施したクラウドファンディングにおける成果のひとつとしてタイで撮影したものです
監督・撮影・編集: 下村礼介 制作:特定非営利活動法人バードリサーチ
調査結果
世界初のシマアオジの多国間合同越冬ねぐら調査は、2026年2月11日から3月11日の期間に実施しました。調査には4か国から105名の調査員(ネパール36名、ミャンマー25名、タイ32名、カンボジア12名)が参加して実施されました。日本からもバードリサーチの2名がタイでの調査に参加しました。
その結果、タイでは6か所のねぐらで126,076羽を数え、ネパールでは5か所で1,741羽、ミャンマーでは3か所で49,086羽、カンボジアでは2か所で10,407羽を確認することができました。合計16か所のねぐらで、187,310羽という計算になります。急激に個体数を減らしているシマアオジがまだこれだけ残っていたという結果は、とても嬉しいものでした。この結果は、越冬地での調査がシマアオジの総個体数を把握するために効果的であるということを示しています。
一方で、1億羽以上いたとされる過去と比べると18万羽という数はごく少ない数字ですし、短期間に起きた急激な減少の事実があることを忘れてはいけません。今も彼らは危機的な状況にあると捉えるべきです。
シマアオジの越冬個体数をすべて把握できたか、と言われると、調査できていない国や地域、未発見のねぐらもあると思われるので、この個体数がどれくらいの割合をカバーしているのか分かりません。それでも、絶滅危惧種シマアオジの主要な越冬地である4か国において、合同で現時点の個体数を把握できたことは、今後の保全への非常に大きな一歩となりました。少なくとも、今回調査したねぐらで継続して調査をしていくことで、彼らが今も減少し続けているのか、回復に向かっているのかが分かります。
成果の公表
調査結果は、バードリサーチのホームページ、共同実施団体になっていただいている日本野鳥の会のホームページ、READYFORのサイトでの活動報告、PRTIMESのサイトでのプレスリリースにて5月11日に公表しました。その後、朝日新聞に取材していただき、6月11日付のデジタル版と、7月3日付の夕刊に掲載されました。また、全てを把握しきれていませんが、今回調査したアジアの国々やインドなどでもニュースとして取り上げられています。
今回の活動では、より多くの人にシマアオジの現状を知っていただくことも目的としていました。活動を通して、日本の草原で繁殖している小さな小鳥たちの中にも、シマアオジのように絶滅の危機と向き合っている鳥がいる、ということを伝えられていればと思います。
バードリサーチの会員の皆さまには、写真や音源の提供、SNSなどでの情報発信にご協力いただきました。そのお力添えがあったからこそ、これだけの成果に繋がったのだと思っています。本当にありがとうございました。
調査成果を掲載した・された媒体
- NPO法人バードリサーチ ホームページ
絶滅の危機に瀕しているシマアオジ 彼らのいる景色を取り戻したい - 公益財団法人日本野鳥の会 プレスリリース
絶滅が危惧されるシマアオジの越冬個体数を日本の市民からの支援により初めて捉えました - READYFOR クラウドファンディング活動報告
絶滅の危機に瀕しているシマアオジ 彼らのいる景色を取り戻したい 活動報告 - PRTIMES 2026年5月11日 <バードリサーチ・日本野鳥の会 共同発表>
絶滅が危惧されるシマアオジの越冬個体数を日本の市民からの支援により初めて捉えました - 朝日新聞 デジタル版 2026年6月11日
日本で絶滅寸前の渡り鳥、シマアオジ アジア4カ国で初の個体数調査 - 朝日新聞 夕刊 2026年7月3日
シマアオジ、国超え初調査 国内繁殖確認、2024年が最後の渡り鳥
調査を継続していくために
来年の2027年2~3月には、今年調査を実施した4か国だけでなく、他の国にも参加してもらってより規模を大きくして調査を実施する計画です。調査には多くの調査員と移動経費がかかります。調査の継続のためには、ネットワークの維持や、ねぐらの探索、調査参加者の確保なども必要になります。
バードリサーチでは、2026年9月から11月にも日本野鳥の会と共同で今回と同様のクラウドファンディングを実施し、各国の調査を支えたいと考えています。その際はまた会員の皆様にご連絡いたしますので、情報発信にご協力をお願いいたします。
調査の実現に向けて取り組んできた活動
時間をかけて進めてきたネットワークの構築
私たちは調査者、研究者、保全関係者のネットワークの構築を進めてきました。2023~2024年度に地球環境基金の助成を受けて、アジア各国の自然保護団体と協力し、現地の野鳥関係者と調査手法や保全対策を検討するワークショップを行い、彼らと協力してミャンマー、タイ、カンボジアの越冬ねぐらの調査を試験的に実施し、調査方法について議論しました。2025年3月には、タイのコンケンで国際ワークショップを開催し、ネパール、ミャンマー、タイ、カンボジア、ラオスの研究者が調査手法の改善について議論し、時期を揃えて同じ調査方法で2026年に調査することを合意しました。
バードリサーチニュースニュース 2025年6月号: 2
東南アジアのシマアオジ越冬地調査 数千から数万羽が利用するねぐらが見つかりました
いざ、合同調査に向けて 2025年10月と2026年1月の会合
2025年10月14-15日に、公益信託経団連自然保護基金の助成を受けてタイのバンコクでシマアオジやその他のホオジロ類の越冬ねぐらの調査に向けたワークショップを開催しました。現地に加えてオンラインも併用してハイブリッドで開催することで、シマアオジが越冬している国以外からも参加者があり、日本、タイ、ミャンマー、ネパール、カンボジア、ロシア、中国、モンゴル、韓国、ベトナム、ラオス、バングラデシュ、インド、パキスタンに加え、スウェーデン、米国、英国、ドイツから98名もの参加がありました。
各国からホオジロ類の調査や研究、保全に関する事例発表や、モニタリング手法に関する発表、今後注目していくべき対象種についての議論などを行いました。そして、各国の一般のバードウォッチャーへのシマアオジをはじめとしたホオジロ類の分布や調査について理解の浸透を図るとともに、観察報告を集めて、市民調査による情報収集のネットワークを広げていくこと、ネパール、ミャンマー、タイ、カンボジアでのこの冬の共同調査の計画について合意を得ることができました。
調査実施前の1月15日にはオンライン会議を開催し、ねぐら調査マニュアルのドラフト版を共有し、調査方法を確認し、ネパール、ミャンマー、タイ、カンボジアで2026年2月11日から3月11日の期間に調査を実施することを確認しました。
シマアオジだけの問題じゃない、草原性の夏鳥の保全
シマアオジの保全は、カシラダカやホオアカ、アオジ、シマノジコなど、同じような渡りと越冬の生態を持つ草原性の鳥たちの保全にも繋がります。また、北海道と長野県に局所的に分布し、保全活動が進められているアカモズも草原を利用する渡り鳥です。
最も絶滅の危機に近いシマアオジをきっかけに、草原性の鳥たち全体をモニタリングする体制を作り、国際的な連携を深めることで、中継地や越冬地での保全活動を盛り上げていくことが大事だと考えています。
草原性の渡り鳥もEAAFPの対象になるよう提案
2025年11月に、フィリピンのセブ島で東アジア・オーストラレーシア・フライウェイ・パートナーシップ(EAAFP)の第12回パートナー会議(MOP12)が開催されました。そこで、私たちはアジアの鳥類研究者との議論をもとに、EAAFPにおいて水鳥だけでなくシマアオジなどの陸鳥の保全について議論する場を設置する必要があるとの提案をとりまとめ、議案提出(アジアの研究者を代表してパートナー団体である公益財団法人日本野鳥の会から提出)しました。
議論の結果、EAAFPの保全対象範囲を渡り性陸鳥に拡げる可能性について議論する特別委員会の設置案が採択されました。私たち市民レベルの連携だけでなく、政府レベルでも連携していく体制づくりに向けて、大きな一歩だと思います。
バードリサーチは引き続き、日本野鳥の会や各国の研究者、NGOと連携しながら、シマアオジをはじめとした渡り鳥たちの調査や保全に向けて活動していきます。ご支援をよろしくお願いいたします。
引用文献
Kamp, J., Oppel, S., Ananin, A.A., Durnev, Y.A., Gashev, S.N., Hölzel, N., Mishchenko, A.L., Pessa, J., Smirenski, S.M., Strelnikov, E.G., Timonen, S., Wolanska, K. and Chan, S. (2015), Global population collapse in a superabundant migratory bird and illegal trapping in China. Conservation Biology, 29: 1684-1694. https://doi.org/10.1111/cobi.12537
2026年の調査に参加した団体・機関
・ネパール
Krishna Prasad Bhusal
Bird Conservation Nepal
Pokhara Bird Society
Himali Anusandhan Kendra
・ミャンマー
Biodiversity And Nature Conservation Association(BANCA)
Kyone Ka Pyin – Tap Seik Community Conservation Group
・タイ
Bird Conservation Society of Thailand (BCST)
Khon Kaen University (コンケン大学)
King Mongkut’s University of Technology Thonburi (モンクット王工科大学トンブリ校)
・カンボジア
NatureLife Cambodia
Wildlife Conservation Society
Cambodia Bird Guide Association
Sam Veasna Conservation Tour
Ministry of Environment (環境省)
Khmer Nature Photographer
・インド(予備調査)
Bird Count India
・ラオス(予備調査)
National University of Laos (ラオス国立大学)







