季節によって異なる餌の内容
食性データベースに登録されている、イソヒヨドリが餌を「自分で食べた」記録は、2026年5月7日時点で183件あります。食性データベースを始めた2022年にイソヒヨドリ食性調査チームをつくって参加者の皆さんと冬の記録を集めたことと、調査研究支援プロジェクトの支援を受けて2025年の冬に重点的に記録を集めたこともあって、冬の記録が120件で圧倒的に多くあります。春から秋の記録はまだそれほど多くありませんが、食性が季節によってどのように変わるかをみてみました(図1)。春から秋にかけては餌に占める動物の割合が70.8%から85.7%と高くなっています。春から秋にかけて食べていた動物質の餌は、その70%ほどが昆虫でした。他にはカニの仲間やミミズ、ムカデ、カエルやトカゲなどが少数ずつ記録されています。ところが、冬には動物質の餌の割合は33.3%に下がり、代わりに植物質の餌が多くなっていることがわかりました。イソヒヨドリの食性は、季節によって大きく変わるようです。冬になるとあまり昆虫をとれなくなって、代わりに植物質の餌が増えるのかもしれません。
緯度によって異なる冬の餌
全国鳥類越冬分布調査によると、イソヒヨドリは冬にも沖縄から北海道まで広い地域に生息しています(図2)。一般的に冬には昆虫が少なくなりますが、南日本では冬にも昆虫がそれなりに活動しています。そこで、冬のイソヒヨドリの食性と緯度との関係をみてみたのが図3です。低緯度地域の暖かいところでは、冬でも動物質の餌の割合が高いことがわかりました。

図3. 緯度と越冬期(12月から2月)の食性の関係。橙色が動物質の餌、緑色が植物質の餌の記録。黒い実線は「その緯度の場所で動物質の餌が選ばれる割合」の推定値、破線は推定の不確かさの範囲を示しています(glmによる予測確率と、95%信頼区間)β = −0.258 ± 0.049 SE, z = −5.26, p < 0.001。
説明
この図では、一つ一つの記録を橙色と緑色の点であらわしています。それをもとに、緯度ごとに動物質の餌の割合がどのくらいになるかを予測したものが実線で示されています。実線をみると、低緯度(左)の暖かいところほど動物質の餌の割合が高く、高緯度(右)の寒いところほど動物質の餌の割合が低い(植物質の割合が高い)傾向があります。例えば北緯24度のあたりでは、実線の位置は0.8を超えるので、この辺りではイソヒヨドリの冬の食性のうち80%以上が動物質の餌だと推定されます。北緯32度のあたりでは動物と植物の割合が半々くらい、北緯38度のあたりだと実線は0.2くらいなので、動物質の割合は20%くらい、植物質の割合が80%くらいだと考えられます。
登録されている記録を南西諸島に限ってみてみると、冬の餌のうち動物の割合が80%と、夏の全国での割合と変わらないほど高い結果でした。餌の内容は、セイヨウミツバチやオキナワウスカワマイマイ、毛虫が多く食べられていました(図4)。ヤモリの仲間や大きなタイワンツチイナゴを食べた記録などもあります。植物の記録は、漁港でココヤシの中身をつつく記録、道に落ちた島バナナの皮をつつく記録、街路樹のモモタマナの種子に残る果肉をつつく記録、公園でランタナの実を食べた記録と、他の地域では無いような特徴的な記録ばかりでした。北の地域に行くほど動物の割合は下がり、新潟や仙台のあたりでは動物の割合は20%ほどで、植物が圧倒的に多くを占めていました。新潟や仙台のあたりでの冬の動物食の記録は、フナムシやイワガニなどの甲殻亜門の生物を食べているものでした。植物の方は、海岸でトベラの実やホンダワラなどの海藻を食べた記録が多く集まっています。ホンダワラは、特に気泡を食べているようです。もしかすると、海藻につくワレカラという小型の甲殻類や打ち上がった海藻に潜む小さな虫も食べているのかもしれませんが、今のところそういった記録は来ていませんでした。南と北では、動物植物の割合も違っているし、それぞれの内容も違っているのですね。
冬に南では動物の割合が高く、北では植物の割合が高いという傾向は、雌雄別にみた場合にも変わりませんでした。また、冬に捕食する動物の餌の大きさにも、雌雄間で違いはみられません。冬のみだと数が少なかったので全期間で比較しても、やはり雌雄間で餌の大きさに違いはありませんでした(図5)。
今回、冬の食性記録があった地点の北限は仙台です。イソヒヨドリはもっと北の方でも越冬分布していますが、食性データベースには記録がまだ来ていません。南西諸島は緯度の幅がある地域ですが、まだ南部の一部でしか記録がありません。今回の解析では、越冬分布の全域で記録が取れているわけではないことに注意が必要です。それから、図3の北緯38度のあたりでは集中して記録がたまっていますが、これは新潟県にある長岡市博物館の鳥居憲親さんがたくさんの記録をとってくれているためです。北緯25, 26度あたりは、筆者が集中的に記録をとった沖縄島と宮古諸島の記録が多く含まれています。まだ全体での記録は必ずしも多くなく、人による記録の偏りがある可能性もありますので、もっと多くの場所から多くの方による記録を蓄積していく必要があります。他の地域でも記録がありましたら、ぜひ登録していただければと思います。温暖化によって将来的には北の地域でも冬の間の餌に動物質のものが増えてくるなんてこともあるかもしれません。他にも、イソヒヨドリは内陸に進出してきていることがよく知られていますが、全季節で内陸と沿岸とでも餌内容を比較できるようになると楽しいですね。一緒にイソヒヨドリの食性をもっと調べていきましょう!
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