バードリサーチニュース

東京都鳥類繁殖分布調査 2017年-2019年までの成果と2020年の調査のお願い

【参加募集,参加型調査,活動報告】
著者:佐藤望

 東京は世界で最も開発が進んでいる都市の1つで、都心部(23区)には高層ビルなどが立ち並んでいますが、こういった場所でも鳥類は繁殖しています。それどころが種によっては近年になって都市に進出してきた種もいます。また、東京郊外には多摩丘陵地、西部には亜高山帯、さらに伊豆諸島や亜熱帯地域の小笠原諸島まで様々な環境があります。東京都鳥類繁殖分布調査(注1)は、これらの環境で繁殖期に生息している鳥類を詳細に調べる調査です。2017年からの3年間で、890コースの調査を176人の調査員の皆さんとともに実施しました。今回はこの3年間の調査結果や過去の調査と比較する事で、東京の鳥の現状や変化が見えてきました。

どこで多くの鳥が観察できたか

図1 東京本土部で観察された鳥類の種数。区画ごとに約1kmのコースを歩き、確認できた種の数を色で示しています。枠がない場所は未調査地です。

 まずは調査した場所で何種記録されたのかをみてみます(注2)。本土部の種数を見ると、東京都心部(23区オレンジ)から郊外(水色)にかけて種数が増えていくのが分かります(図1)。一方、西の端の方では再び種数が減ります。東京の西端は標高2000mを超える亜高山帯となり、ここまで来ると再び種数が減るためです。次に中央部をよく見ると東京の中央部分に種数が多い(濃い緑色の)メッシュが線状に東から西へと続いています。このラインは多摩川流域です。河川流域には、森林性の鳥以外にもアオサギやカワウといった水辺に生息する鳥類やオオヨシキリなど河川敷で生息している鳥類も生息しているため多くの種が確認されていました。

 続いて、島しょ部を見てみましょう(図2)。島しょ部の鳥類の特徴については以前のニュースレターでも触れましたが、大きい島ほど種数が多くなる傾向があります。しかし、八丈小島は調査した伊豆諸島10島の中で最も小さい島(3.08km2)であるにもかかわらず、観察種数が多く、2コースでそれぞれ11種と14種確認されました。新島(23.17km2)では4-11種、神津島(18.48km2)でも2-12種なので、八丈小島は小さい割に種数が多いと言えます。八丈小島は伊豆大島や三宅島などで移入されたホンドイタチがいない事や、野生化していたヤギもほぼいなくなったと考えられています。さらに今回の調査した島で唯一、無人島(元々は有人島)である事から、他の島よりも人を含む哺乳類の影響が少ないと言えます。この事が面積が小さい割に種数が多い事と関係していると考えられます。実際、八丈小島で野ヤギの駆除事業が行われてから、地上営巣をするクロアシアホウドリが繁殖するようになりました。

図2 伊豆諸島・小笠原諸島で確認された鳥の種数。島の大きさが大きく、本土から近い島は種数が多く、本土から離れた小笠原諸島では種数が少ない。

分布が広い種は?

 次に東京でどの鳥が多く生息しているのかを調べるため、記録されたメッシュが多かった種を順に並べてみました(表1)。その結果、本土(579地点)ではヒヨドリ、ハシブトガラス、シジュウカラが、島しょ(306地点)ではウグイス、メジロ、ヒヨドリがそれぞれトップ3でした(表1)。島しょでヒヨドリが順位を落としているのは、伊豆大島では分布が少ないため(詳細はこちら)でしょう。それ以外の上位種のうち、シジュウカラやキジバト、スズメ、ウグイスなど全国でも広く分布している種がどちらもランクインしていますが、島しょ部はカラスバトやアカコッコなど、島しょ性の鳥類も比較的広く分布しています。一方で、ムクドリやカワラバト(ドバト)のように本土では普通に見られる鳥でも島しょではほとんどみられません。今回の調査で島しょに進出できた種とできていない種も分かりました。いったい進出できるかどうか何によって決まるのか、今回のデータを詳しく分析する事で検証できるかもしれません。

東京で増加している鳥

図3 メジロの分布変化。90年代はほとんど都心部(23区)でみられなかったのが、20年で都心に生息地を拡大させています

 ここからは90年代の調査結果(注意3)と比較し、過去20年間の鳥類相の変化を見ていきます(表2)。90年代と今回の調査で共通した調査メッシュは255ありますので、まずはその結果を元に増加している種を見ていきます。確認されたメッシュ数が増えた(分布が拡大した)のは、メジロ、ガビチョウ、ハシブトガラスがトップ3でした。メジロと同様に森林性の鳥であるシジュウカラ、ウグイス、コゲラなども増えており、こういった種が都市に進出してきています。これは都市環境の中で公園の道路の樹木が成長した事が関係しているかもしれませんし、鳥類が都市の環境に順応してきている事も考えられます。メジロやコゲラは1970年代には緑被率が高い地域に生息していたのですが、1990年代の調査では緑被率が低い場所でも生息するようになっています(詳細はこちらを参照)。一方、これらの種は他の都市でも分布を拡大しているのでしょうか。水戸と東京の繁殖分布調査を比較すると、メジロやシジュウカラが東京に比べて水戸の方が出現率は低い事が分かっています(参照)。水戸ではメジロやシジュウウカラが進出してきたのが東京よりも遅かったため、都市環境にまだ十分に適応していないかもしれません。そうだとすると、今回の調査結果が他都市の鳥類相の将来予測に役立つかもしれません。 

東京で減少&変化している鳥

 次に分布が縮小している種についてみていきます(表3)。ホオジロやヒバリ、セッカなど草原性の鳥類の減少が目立ちます。草原環境は全国で減少しており、1990年代にはヒバリはすでに減少していたのですが(植田ら 2005)、この20年間でも回復せずに減少を続けています。
 分布域が大きく変化した鳥もいました。オナガは全国鳥類繁殖分布調査のこれまでの結果だと分布が縮小しており、東京でも減少しているのですが、郊外では分布が減っている一方、都心部では分布が広がっているようにみえます(図4)。なぜ、このような分布の変化が起きたのかは分かりません。現在では、有力な仮説も立てられていません。何か情報やアイディアがある方は是非、教えてください。

図4 オナガの分布変化 1990年代には東京中央部に多く生息していたのが、2010年代には都心部で確認されるようになりました

2020年も調査にご協力ください

 今年も本調査は実施します。1990年代に実施された327メッシュのうち、32メッシュ(12コース)はまだ未調査です(図5)。また、今回からすべてのメッシュで調査を開始しましたが、都心部や東京西部で未調査のメッシュがまだたくさんあります(図6)。都心部は種数も少ないため、識別にまだ自信の無い方も是非、ご参加ください。調査の参加方法などはこちらをご覧ください。

図5 未調査コース 都心にもいくつかあります。是非、登録をお願いします

図6 調査がまだ終わっていないメッシュ(赤)。特に都心部や東京西部の調査の実施をお願いします

 

注1) 東京都鳥類繁殖分布調査 東京都内をおよそ1km×1kmごとに区画(メッシュ)ごとに1kmのコースを設定し、そこをゆっくり(時速2km)歩いて、確認した種の数と行動を記録する調査。繁殖期(5月~6月)において、各調査コースで2回(島しょ部は1回)調査を実施しています。1970年代、90年代に東京都が実施したものを今回はNGOが中心となって実施しています。詳しくはこちら

注2) 繁殖の可能性がある種の数です。調査で確認した種は、その場所付近で繁殖しているのかどうかを判断するために、繁殖に関する行動などを記録しています。さえずりや餌運びなどは繁殖の可能性が高いと評価しますが、渡りの通過や採餌に訪れていると考えられる種に関しては、今回のレポートでは含めていません。

注3) 東京都は1970年代と1990年代にそれぞれ調査を実施していますが、いずれも本土部のみ実施しているため、ここでは島しょ部について触れません。なお、研究者による調査結果と比較した結果は過去のニュースレターで紹介しています。

参考文献
植田睦之, 松野葉月, & 黒沢令子. (2005). 東京におけるヒバリの急激な減少とその原因. Bird Research, 1, A1-A8.