バードリサーチニュース

セグロカッコウの分布 北上中?

バードリサーチニュース 2021年6月: 2 【参加型調査】
著者:植田睦之

図 1 バードリサーチの野鳥記録データベース「フィールドノート」のセグロカッコウの記録数の変化。最近の増加は「インターネット・バードソン」での記録送信数の多さも影響していますが,2020-21年は他より期間が短いので,やはり増加しているといえるだろう

セグロカッコウは,インド以東のアジアに生息する鳥で,日本周辺では中国やロシアで繁殖しています。托卵鳥で,オウチュウの仲間,オナガ,アカモズなどに托卵し,宿主の大きさ・分類群の多様さを考えると,いろいろな鳥に托卵する潜在能力がありそうです。
 日本では繁殖記録はなく,数少ない旅鳥と言われていましたが,近年観察されることが増えています(図1)。九州や中国山地では繁殖期を通して生息するようになり,繁殖の可能性があります。バードリサーチでは,2018年9月号のニュースレターで情報募集を開始し,その後,情報収集を続けてきました。その結果,観察記録が,東北地方,北海道へと北上している傾向がでてきたのでご報告します。

北日本の記録が増加

図 2 アンケート情報を基にした近年のセグロカッコウの分布の変化。2020年と2021年には北日本での新たな記録が増えているのがわかる

 セグロカッコウ調査には90件の情報をお寄せいただきました。調査に参加いただいた皆様,ありがとうございました。これまでの記録は,九州山地と中国山地の情報が多くを占めていました。その状況は,ここ数年も変わりはありませんが,変化があったのは,北日本の記録が増えたことです。
 図2には2021年の記録を赤丸で,2020年の記録をオレンジで,それ以前の記録を黄色で示しています。古い記録を上に重ねて図を作っているので,2020年や2021年の九州山地や中国山地の記録は黄色い丸に隠されて見えなくなっていて,赤やオレンジの丸が見えるところは,新たに記録された場所になります。その分布をみれば関東以北での新たな記録が目立つのがわかります。
 これまでも北海道天売島(先崎 2013)などでの記録がありましたが,去年,今年の状況をみると,今後は迷鳥から旅鳥そしてもしかしたら夏鳥へと変化していくのかもしれません。北日本の皆さんは,「カ カ カ コウ」という聞きなれない不思議な響きの声を聞いたら,セグロカッコウの可能性があるので,鳴き声図鑑で確認してみてください。

情報をお寄せください

 今後も分布の変化が考えられますので,引き続き,情報の蓄積をしていきたいと思っています。セグロカッコウは特徴的な声で鳴くので,その声で気づくことができます。この声を聞かれましたら,ぜひ情報をお寄せ下さい。また,セグロカッコウが日本で繁殖しているのかどうかは,まだわかっていません。托卵鳥だけに,繁殖の確認は容易でありませんが,繁殖期を通して生息しているかどうかで,その可能性の高低が推測できます。セグロカッコウの声を聞かれた場合は,その後もそこに滞在し続けているかどうかも気にしていただけたら幸いです。

セグロカッコウの声 https://db3.bird-research.jp/saezuri/birdsong/detail/371

 

情報収取のページ http://www.bird-atlas.jp/segurokakko/sk.html

 

引用文献
先崎理之 (2013) 北海道におけるセグロカッコウ Cuculus micropterus の初記録.日本鳥学会誌 62: 78-81.

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