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生態図鑑(要約版)ジョウビタキ

バードリサーチニュース2015年11月: 3 【生態図鑑】
著者:山路公紀

○英名 Daurian Redstart
 学名 Phoenicurus auroreus

○分類 スズメ目 ヒタキ科

○羽色

ジョウビタキの雄

ジョウビタキの雄

 オスとメスで羽色が大きく異なる.成鳥オスは額から後頸までがシルバーグレーで,顔から喉,背から肩羽,雨覆は黒い.風切も黒いが,次列風切と三列風切の基部近くの白い部分が目立つ白斑となる.胸から腹,脇,腰,上尾筒,下尾筒は赤橙色である.成鳥メスは頭部から背,顔から喉にかけては赤橙色を帯びた灰褐色.胸,腹は淡黄色を帯びた赤橙色,翼は暗褐色で雄よりも小さめの白斑がある.

○鳴き声
 越冬期には,灌木の頂等の低い場所にとまり「ヒッ,ヒッ,ヒッ」と澄んだ声で鳴き,時折低い声で「カッ,カッ,カッ」と鳴くことが多い.日本でさえずりを聞く機会は少ないが,「チチルリ チチロリ ピーチクピ, チチルリ チチロリ」と聞こえ,余り長くないが複雑で美しい声である.

○生息環境
 越冬地では,一般には標高900m以下の平地や山林の灌木林,農耕地,草原,雑木林,アカマツ林,村落付近の樹林等に生息する.近縁のルリビタキが樹木の多いところで越冬するのに対し,ジョウビタキはより開けた環境に生息している.

○社会システム 
 越冬地には10月中旬ごろ渡ってくる.渡来とともにとオスとメスは別々になわばりを構えて生活する.繁殖地では4月上旬ころ飛来すると,オスはすぐさえずり始め,巣づくりはオスとメスが共同で行う.多くは毎日1卵ずつ産卵し,最終卵を産むと同時に,主にメスが抱卵する.ヒナへの給餌はオスとメスが共同で行う .

○抱卵,育雛期間,巣立ち率 
 巣づくりにかかるのは3-4日で,卵が孵るまでに約12日,それから2週間ほどで巣立ち,普通夏に2回卵をかえす(ヴァルチュク 1994).中国の遼寧省本渓地区の例では孵化率の平均は86%であった  .

八ヶ岳周辺で繁殖が定着,分布を拡大

ジョウビタキの巣立ちビナ

ジョウビタキの巣立ちビナ

 日本ではジョウビタキは冬鳥であるため,1983年に北海道上士幌町で確認された繁殖は偶発的な記録とされていた.ところが八ヶ岳連峰の裾野に位置するリゾート地 富士見高原では,2010年から4年間,少なくとも1つがいの繁殖が継続しており,周囲も含めると少なくとも5つがいが繁殖していた.また幼鳥の目撃など繁殖に繫がる9件の記録があり,八ヶ岳周辺では今後もジョウビタキの繁殖が継続され,徐々に拡大,広域化するものと考えられた.北海道上川,兵庫県鉢伏高原,岡山県新庄村でも繁殖が記録されており(笹野ほか 2015),今後,全国的に繁殖事例が増え,目撃も増えるのではと考えられる.

◆その他掲載記事
 ・全長,翼長,尾長,嘴峰長,ふ蹠長,体重
 ・分布
 ・巣の位置,形と材質,大きさ
 ・一腹卵巣,卵サイズ,卵色
 ・食性と採餌行動

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