全国鳥類繁殖分布調査が無事完了しました。バードリサーチニュースでもこれまで何度もその成果をご報告したように,2000人以上の方にご参加いただいたおかげで,多くの成果を上げることができました(最終報告書はこちら)。
それに続き,越冬分布とその変化も明らかにしようと,現在,越冬期の情報収集をしています。越冬分布については,残念ながら,まだまだ情報の少ない地域があるのが現状です。普段からの観察情報をぜひご登録ください。特に1980年代に行なわれた調査と比べて,鹿児島県周辺および岩手県太平洋側の情報が少ないので,このあたりの情報をお持ちの方は,ぜひお願いします。情報の送信方法は本記事の最後をご覧ください。
大きな分布変化をみてみる
このように,まだ情報が不十分なので,細かい変化を見るのは難しいのですが,大きな分布変化を集計してみました。情報を40km四方のメッシュに集計することで,大きな分布をとらえることとして,さらに主要な分布の北側の位置が,北上したかどうかを見てみました。
ここに示したのは分布の変化が明確なヒクイナの40kmメッシュの分布図です。日本列島は北東方向に延びているので,分布が北上した場合,その分布は北東方向に拡大することになります。そこで,その変化を数値化するために確認地点の緯度と経度を足した値がどのように変化したかをみてみることにしました。
ヒクイナの場合は,大きく分布が変化しているので,分布の中心も変化していますが,ここまで極端に分布が変化していない種では,分布の中心は変わらずに主要分布域の北東側が北へと広がっていることがあります。そうした分布変化を検出できるように,分布の75%点(図2の右側の図の箱部分の上側の点)が1980年代とどう変化しているか(図2のAの値)を計算し,それをその種の生態別に集計してみました。
飛翔採食性の鳥と水辺の鳥が北上
1980年代と今回のどちらかで50メッシュ以上記録がある種(ただし,どちらかの年代で数メッシュしか記録が少ない種は除外)を対象に,各種の分布の変化(図2のAに相当する値)を計算しました。そしてその分布変化をカモメ類や海ガモなどの「海鳥」,湖沼などで見られるカモ類やカワウなどの「水鳥」,シギチドリやクイナなどの「渉禽」,カワセミ類やセキレイ類などの「水辺」,キジ類やツグミ類など地上で採食する「地上」,ウグイスなどの「藪」といった属性で集計して図3に示しました。0が主要な分布範囲の北側の位置が変化していないことを示し,プラス方向は北上したことを,マイナス方向は南下したことを示します。渉禽類や水辺,水鳥といった浅い水域に依存している鳥の値はプラス方向に偏っていて,分布を北上させている種が多いことがわかります(図3)。こうした浅水域は凍結などの影響を受けやすいので,1980年代よりも温暖になってきたことで,こうした種が利用できる地域が北へと広がり,分布もまた,北へと広がったのだと思います。
また,ツバメ類,ヒメアマツバメ,サンショウクイといった飛翔採食性の鳥も大きく分布を北上させていました。これらの鳥たちが食べる飛翔性昆虫は冬には少なく,そのため,こうした食性を持つ鳥は夏鳥が多いのです。冬が温暖になってきたことで,こうした昆虫もより北の地域で増えているのかもしれません。
情報収集への参加お願いします
さらに詳細な分布変化を見ていくためには,もっと多くの情報収集が必要です。ぜひ,みなさんの2016年以降の越冬期の観察記録をお寄せください。バードリサーチの野鳥記録データベース「フィールドノート(さえずりナビ)」の記録はすでに利用していますので,そこに登録してあるデータは再送いただく必要はありません。
情報の送信は以下の方法があります。
・フィールドノート(さえずりナビ)への入力 https://birdwatch.bird-research.jp/home
12月から2月の記録を使用しています。11月や3月に観察したけれども「その場所で越冬している」という記録は,以下の専用サイトから入力ください。
・冬鳥分布調査サイトやエクセルデータの送付
専用のウェブフォームを用意してあります。そこに入力していただくか,入力用エクセルをご利用ください。
WEBフォーム:https://www.bird-atlas.jp/wba.html
Excelのダウンロード:https://www.bird-atlas.jp/data/wba.xls
よろしくお願いいたします。