よく似ていて、ごちゃごちゃと群れているのでシギ・チドリ類は十把一絡げにされることもよくありますが、日本では稀な記録の種も含めると約80種のシギ・チドリが渡ってきます。それぞれに特徴があって好む環境やエサが異なるのですが、日本への渡来の時期もまた異なります。バードリサーチでは、シギ・チドリ類の春の初認記録調査を収集する”季節前線シギチドリ”を行なっています。2012年春から始めたこの調査は今年で6年目になり、いままでに136名の方のフィールドの記録をいただき、データ数はのべ1,300ほどになりました。ご協力ありがとうございます。対象とした8種のそれぞれの国内通過の様子を報告します。
これまでの初認情報のまとめ
対象は2012年から2018年のメダイチドリ、ムナグロ、アオアシシギ、キアシシギ、トウネン、チュウシャクシギ、キョウジョシギ、オオソリハシシギ(オオソリハシシギは2015年から追加)の8種です。データの中から観察頻度が高い場所で、越冬していなかったか、もしくは越冬個体とは違う個体を観察した春の最初の観察日を抽出し、日本を1次メッシュ(1辺約80km)に分けて種ごとに初認時期別に色をつけました(図1に例としてオオソリハシシギとキアシシギを示す)。
メッシュの色は初認時期の平均を示していて、3月以前と4月と5月は10日毎に7段階に色分けをしており、春の早い時期は青色となり遅くなるほど赤色で示しています。色のついてないところは今回の条件に合わなかったので除いたところです。例えば、オオソリハシシギは春の渡り時期には早い時期から確認されるため、本州・九州地域で青色が多くなっていて、逆にキアシシギは後半に現れるのでオレンジ色が多くなっています(図1)。他の種についても初認時期を分けてヒストグラムを作成しました(図2)。初認されるシギ・チドリの渡りの特徴
図2は左から平均初認日が早い順に種を並べています。オオソリハシシギは、3月頃から初認報告があり対象種の中では最も早く渡来していました。早い年には3月に東北地域南部でも確認されています。次いでムナグロ、メダイチドリの報告が4月中旬くらいにピークを迎え、アオアシシギ、トウネン、チュウシャクシギ、キョウジョシギが4月下旬を中心に報告されます。アオアシシギは3月から5月の下旬まで長く報告されています。関東で越冬している個体もいるので早い時期に北日本で見られたり、渡りの特徴が見にくい種でした。トウネン、キョウジョシギ、オオソリハシシギも長く報告されていますが、トウネン。キョウジョシギは南から北に向かって比較的順当に初認されているので短い移動を繰り返して北上しているのではないかと考えられます。また、オオソリハシシギはオセアニアから黄海へ移動する時と、黄海から繁殖地のアラスカへ移動する時に日本を2度通過しているため日本の観察期間が長いのではないかと考えられます(Hassell, 2008)。チュウシャクシギは4月の中下旬に各地で急に観察され始めます。最後に報告されるキアシシギも4月下旬から5月初旬に現れます。またキアシシギは本州以南と北海道地域との初認日の差が5日ほどと最もその差が少ない種であることも特徴で、春の渡りの後半に確認されると短期間で日本列島全体に渡来するようです(図3)。
今年の渡りは?
では、2018年春の渡りは例年に比べどうだったのでしょうか。
各種の地域別の平均初認日との差を北海道および本州以南と全国(北海道+本州以南)に分けて比較してみました(図4)。
全国的には、オオソリハシシギ、アオアシシギ、チュウシャクシギが例年より約2~3日早く、ムナグロ、トウネン、キョウジョシギ、キアシシギは1日遅く、メダイチドリは4日ほど遅くなっていました。メダイチドリは西日本からの報告数が少なく、今年は観察があまりできなかったことが影響したかもしれません。アオアシシギは北海道で例年より2週間早い記録があり、国内で少数越冬していた個体の移動の可能性があります。このように平均初認日と比較することで、年ごとの渡りの時期のズレを探し出し、彼らの渡りに影響を与える要因を絞ることができるのではないかと考えています。
参考文献
Hassell, C., 2008, REPORT ON THE DEPLOYMENT OF SATELLITE-TAGS ON BAR-TAILED GODWITS LIMOSA LAPPONICA MENZBIERI AT ROEBUCK BAY, NORTH WEST AUSTRALIA FEBRUARY 18-23 2008. http://globalflywaynetwork.com.au/our-work/satellite-tracking/