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生態図鑑 セイタカシギ

バードリサーチニュース 2022年6月: 3 【生態図鑑】
著者:守屋年史、松井淳、三木敏史

○英名 Black-winged Stilt      
○学名 Himantopus himantopus
○分類 チドリ目 セイタカシギ科

写真1 セイタカシギ(オス)

○羽色
 非常に長く赤い脚と,細く長い嘴が特徴.成鳥は顔,胸部,腹部が白色.飛翔時に背中に白色のスリットが入る.雌雄ほぼ同色だが,オスの繁殖羽は頭部付近から後頸まで様々なパターンの黒色模様があり,背面は緑暗色で光沢がある(写真1).メスの頭部と後頚部には薄墨色模様があり,背面は緑褐色で光沢がない.非繁殖羽はメスに似るが足の色はくすみピンク色になる.虹彩は赤色.幼鳥の背面は褐色味があり,バフ色の羽縁がうろこ状にある.

 ○鳴き声
 短く強く,「ケッケッケッ」と鳴く.興奮すると,より速く高い音の「キキキキキ」と鳴き,より警戒すると「ピユー」と鳴く.(ヒナと雄の声 音源:黒田治男)


○分布
 汎世界的に分布し,アフリカ大陸中南部,ユーラシア大陸南部,インド,東南アジア,オーストラリア大陸,北アメリカ大陸南部,南アメリカ大陸にかけて不連続に繁殖分布する.オーストラリアに分布する亜種オーストラリアセイタカシギ(H. h. leucocephalus)は,独立種として扱われることもある.
 日本では全国的に観察される旅鳥だったが,1975年に初めて愛知県で繁殖が確認され,その後,千葉県,東京都,愛知県,三重県,大阪府,兵庫県,鹿児島県,沖縄県など局地的に繁殖記録があり,一部で留鳥化している.

○食性と採食行動
 主な餌は水生昆虫類.二枚貝や巻貝類,甲殻類,クモ類,貧毛類や多毛類,オタマジャクシ,小魚やその卵も食べ,時には種子なども食べる.内陸部の繁殖地では主に昆虫食であるのに対し,潮間帯で過ごす非繁殖地では甲殻類,多毛類,軟体動物などを食べるように変化する.

◆その他掲載記事
 ・全長,自然翼長,尾長,露出嘴峰長,ふしょ長,体重
 ・鳴き声
 ・生息環境
 ・繁殖システム
 ・巣,卵
 ・抱卵・育雛期間,繁殖成功度
 ・渡り
 ・国内の繁殖分布と定着の課題
 ・オーストラリアセイタカシギとの識別
 ・引用・参考文献

 

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