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研究誌新着論文:ハシブトガラスとハシボソガラスが観察される高さ

バードリサーチニュース 2022年6月: 1 【研究誌】
著者:植田睦之

 北海道教育大学の三上研究室では,毎年学生さんたちが函館でカラス類の研究を続けています。昨年はハシブトガラスとハシボソガラスの利用環境の違いについての論文(廣部ほか 2021)を掲載しましたが,今回は,昨年の論文では,ちょっとデータ的に弱かった利用している高さについて細かく検討した仲村さんたちによる論文が掲載されました。


仲村翔太・森 荘大郎・三上 修 (2022) 都市環境において2種のカラスが観察される高さの違い.Bird Research 18: A31-A37.

論文の閲覧:https://doi.org/10.11211/birdresearch.18.A31

 

ハシボソガラス(左)とハシブトガラス(右).撮影:三木敏史


 ハシボソガラスはハシブトガラスよりも低い場所にとまることが多いと言われています。それがハシボソガラスが,低い場所を「選んで」とまるからなのか,それともハシボソガラスが生息している環境に「低いとまり場所しかない」からなのか,それとも地面で採食することが多いため,そのデータのせいで「低い場所にいるように見えるのか」についてはわかっていませんでした。今回,それを明らかにするために調査したところ,ハシボソガラスが観察された場所の周囲のとまり場所の高さがハシブトガラスのそれより低いということはなく,地面に降りていたデータを除いても,ハシボソガラスは,ハシブトガラスよりも低い場所にいたことがわかり,やはりハシボソガラスは低い場所を選んでいると考えられました。

 地面を採食によく利用するので地面が見やすいなどの理由で低い場所を好むのか,それともハシブトガラスとの種間関係で,ハシブトガラスがとまっている高い場所を避けて低くなっているのかなど,その理由は現時点でわかりませんが,ステップバイステップで研究が進んでいるので,次の研究に期待したいと思います。


引用文献
廣部博之・藤岡健人・三上 修 (2021)  カラス2 種の生息環境,利用空間の高さ,および行動個体数の違い. Bird Research 17: A21-A29.

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