バードリサーチニュース

第6回インターネット・バードソン 3,185カ所で310種を観察

バードリサーチニュース 2022年2月: 1 【活動報告】
著者:神山和夫

 インターネット・バードソンは、全国のバードウォッチャーが期間内に見聞きした野鳥の観察記録を野鳥記録データベース「フィールドノート」に登録して種数を競う競技です。2022年1月1日~1月16日に開催した第6回大会には328名の方が参加して、3,185カ所で4,123回の観察記録が登録されました。

 

カモメはどこにいる?

 今回のインターネット・バードソンのテーマは「カモメはどこにいる」でした。カモメは冬鳥というイメージをお持ちの方も少なくないかもしれませんが、記事の後半で説明するように地域により観察できる時期が違っていて、日本で繁殖するオオセグロカモメやウミネコは冬期以外も観察できる地域がかなりあります。それでも数が多くなるのは冬期なので、バードソンで使用しているフィールドノートの記録を使って、主要なカモメの仲間について12~2月の分布図を作りました(図1)。集計期間は2016/17-2021/22年の5シーズンです。さらに種による特徴を調べるため、同じデータを使って海岸線から記録地点までの距離を表したヒストグラムを図2に示します。それでは、それぞれの種について見てみましょう。

図1.フィールドノートにカモメ類が記録された地点。2016/17~2021/22年の12~2月について作成。

図2.カモメ類と海岸線からの距離。縦軸は記録があった三次メッシュの個数。横軸は当該メッシュから海岸線までの距離(km)。

ズグロカモメ

 以前はほぼ九州だけで越冬していた種ですが、越冬分布が東へ広がってきており、いちばん東の記録は福島県の松川浦でした。記録地点のほとんどは、ズグロカモメが採食場所として利用する干潟ができそうな河口域でした。

ユリカモメ
 公園の池や河川など身近な場所で見かけることが多く、海岸線から記録地点までの距離を見ても内陸に入りやすい種であることが分かります。一番海から遠い記録は長野県の諏訪湖でした。ただ全国どこでもいる種ではなく、太平洋側に多く分布して日本海側には少ないようです。

写真1.ズグロカモメ夏羽(左)とユリカモメ夏羽・冬羽(右)。写真:三木敏史。

セグロカモメ
 冬期は全国で見られますが、関東で内陸の記録が多くあり、一番海から遠いのは群馬県高崎市の記録です。太平洋側の内陸ではユリカモメと同じ場所で記録されているケースがほとんどですが、ユリカモメよりは記録地点が少なく、好む環境の範囲が狭いのかもしれません。

オオセグロカモメ
 冬期は全国で見られますが、北海道から東北地方で繁殖しているため東日本では周年よく見られる種です。内陸ではあまり見られず、沿岸部で記録されています。

写真2.セグロカモメ(左)とオオセグロカモメ(右)。写真:三木敏史。

ウミネコ
 北海道,本州,九州,伊豆諸島などの沿岸や離島で繁殖していて、冬期ほど数は多くありませんが、北海道から九州で一年中見られる種です。内陸ではあまり見られず、沿岸部で記録されています。

写真3.岸壁に並んだウミネコ。

カモメはいついる?

 インターネット・バードソンでたくさんの記録があったせいもあり冬期はカモメのデータが多いのですが、他の季節の分布図を作るにはデータが不足しています。そこで、季節によって南北の分布がどう変わるかを見るために、毎月のカモメ類の記録地点と緯度の関係を散布図にしました(図3)。ロシアで繁殖するユリカモメやセグロカモメは夏期に少なくなりますが、北日本で繁殖するオオセグロカモメは夏期も北海道で多くの記録があり、本州にも繁殖地が多いウミネコは九州以北で見られています。一方、冬期の北海道では、分布図の情報も合わせて考えると、オオセグロカモメは沿岸部でよく見られるのですが、それ以外の3種が生息している場所は少ないようです。

 さらに個体数も加味して図にできれば、どのあたりに多いのかを示せるのですが、他種に比べるとカモメ類はフィールドノートに個体数まで入力してくださっている方が少ないようです。複数のカモメ類が混じった群をカウントするのは難しいことですが、数十羽なのか数百羽なのかで構いませんので、大まかな個体数を記録してもらえると、分布や個体数変化を分析することができるようになります。バードウォッチング記録を振り返るときにも役に立つと思いますので、可能な範囲でご協力いただければありがたいです。

 

図3.緯度とカモメ類の記録。2016/17~2021/22年にカモメ類の記録があった地点の緯度を月ごとにプロットしてある。