全国鳥類繁殖分布調査と並行して,東京では1kmメッシュで,茨城では5kmメッシュで詳細な調査を行なってきました。東京都の調査には237名の方の,茨城の調査には70名の方のご参加を得て実施することができました。参加いただいた皆様,協力団体の皆様,ありがとうございました。この東京と茨城の地域報告が完成し,公開しました。
東京都レッドリストへ成果を反映
東京というと都会のイメージが強いかもしれませんが,アカコッコやイイジマムシクイが生息し,オオミズナギドリ最大の繁殖地のある伊豆諸島,そしてメグロが生息する小笠原も東京です。今回の調査ではこれらの有人島もすべて1kmメッシュで調査を行ないました。
分布図を描けた種は143種。本土部については1970年代,1990年代そして今回2010年代の分布変化を図示し,島嶼部の2010年代の分布図も示しました。
全体の傾向としては,全国の傾向以上に樹林性の鳥が増加し,開けた場所の鳥が減少している傾向が強いことがわかりました。全国では優占種の1つであるホオジロですら,東京では激減しており(図1),1970年代から現地調査が行なわれているメッシュで比べると,149メッシュから1990年代は80メッシュ,そして今回は60メッシュへと減少していました。
こうした成果は2021年4月に発行された東京都のレッドリストにも反映されており,ホオジロは準絶滅危惧に選定されました。
茨城でもアマサギやコサギは減少
茨城では5kmメッシュ内にコースを新設し,日本野鳥の会茨城県と共同で調査を実施しました。2005-2006年には県による5kmメッシュの分布調査が行なわれています。調査コースや方法などが異なるので,厳密には比較できないのですが,131種について,分布の変化を今回の結果と並べることで示しました。
その結果,全国調査と同様に,茨城でもアマサギやコサギが大きく減少していることがわかりました(図2)。茨城では以前,サギ山の調査やアマサギの衛星追跡調査をしたことがあり,サギ天国のイメージだっただけに,「ここでもか」とちょっとショックでした。
最終報告はPDFで公開
こうした分布図や増減種について示した最終報告は,PDFで公開しています。さらに東京都のデータは希少種のことも考えて,5kmメッシュに集約してBird Research誌に,調査データ論文として公開しました。以下よりご覧いただけますので,興味ある方は是非ご覧ください。