調査研究支援プロジェクトで「ヤンバルクイナの鳴き声収集と環境音からの自動識別」をご支援いただきました森下です。この研究は音声データから作った画像をAIに学習させることで,自然環境音からヤンバルクイナを識別するというものです。ご支援いただいたおかげで,夏の昼間を含む500時間分の音源に対して耳を澄まさなくても聞こえる鳴き声なら誤検出なく識別できる精度を実現できました。予測モデルとプログラムの公開の準備も進めておりますので,もうしばらくお待ちください。
季節前線ウォッチへの応用
同じ仕組みでバードリサーチと共同で「季節前線ウォッチ」の対象種(秋の対象種の解説はこちら)についても自動識別し,初認日を明らかにできないか,ということを考えています。ご存じと思いますが,気象庁の生物季節観測が終了してしまいました。後継の調査の検討も行なわれていますが,季節前線ウォッチの情報を増やすために人の手によらないモニタリングを発展させていくことも必要と考えています。
もしそれを開発することができれば,モニタリングポイントを設定し,ICレコーダをセットしておくことで,いつモズが高鳴きを始めた(あるいはジョウビタキが渡来した)のかを,調査する人がいない場所でも,記録し続けることができるようになります。
こうした仕組みの開発のためには,学習のための音源が必要です。ちょうどモズが高鳴きを始めた季節です。そして,これから,ジョウビタキが飛来し,ツグミも飛来します。これらの鳥の声を近くで聞く機会があれば録音してお送りいただけないでしょうか?
また,ジョウビタキに似た声で鳴く鳥にはルリビタキやイソヒヨドリの地鳴きがあります。自動識別のためにはこれらの鳥の声との違いも学習する必要がありますので,こうした鳥の声もぜひお送りください。
お送りいただきたい音源
AIの学習には,識別対象種が単独で鳴いている音源と,他の種や虫等も同時に鳴いている音源が半分ずつ程度必要なので,モズだけが単独できれいに取れている音源,ほかの音と混じっている音源両方お送りください。単独での録音には指向性マイクの利用が有用です。また,ノイズフィルタの有無が学習されてしまいますので,録音したデータは,パソコンでの後処理はせずにお送りください。
なお,mp3形式は情報のロスが大きいので,WAVなどの形式が望ましいのですが,mp3形式でも320kbps以上で録音していれば基本的に問題ありません。もし収録地で良く入るノイズ(工場の操業音など)があれば,ノイズのみの音も収録していただけると背景音の学習に利用させていただきます。
お送りいただける場合は,市レベルの場所と日時といった情報と合わせて,バードリサーチまでお送りください。
識別精度を出すには,トータル1時間以上の鳴き声の音源が必要です。お送りいただく音源1つ1つの長さは問いませんので,音源の収集にご協力ください。
ゼロから十分な精度を出せるようになるまでには時間が必要ですが,じっくり取り組んでいきたいと思います。よろしくお願い致します。
録音データの送付先等
録音の欲しい種:モズ,ジョウビタキ,ツグミおよびこれらと似た声の種
送付先:バードリサーチ植田宛て mj-ueta@bird-research.jp
必要な情報:録音日,場所(市町村程度まででOK),録音者
ファイル名を「モズ高鳴き_202109250740_東京都国分寺市_植田睦之.wav」のようにして
お送りいただけるとそれらの情報をファイルに盛り込めるので助かります。
音源のサンプル(モズの高鳴き)