最近は洋上風力発電所の計画も増えてきました。そうした計画の鳥への影響を検討するためには,鳥の分布状況の情報が重要です。陸上についてはバードリサーチが中心になって調査してきた全国鳥類繁殖分布調査の結果など,ある程度の情報があります。しかし海上については,オオミズナギドリなど一部の種については,GPSロガーを使った調査による情報がありますが,それ以外についてはほとんど情報がありません。そんな情報にもなる論文が今回BR誌に掲載されました。
倉沢康大・平田和彦 (2021) 津軽海峡における海鳥の密度の季節変化.Bird Research 17: A31-A41.
論文の閲覧:http://doi.org/10.11211/birdresearch.17.A31
倉沢さんと平田さんは,津軽海峡の海鳥の密度と季節変化を明らかにするために,2006-2010年に函館と大間を結ぶ旅客フェリーからセンサスを行ないました。
151回もの調査の結果,11科51種の海鳥が記録されました。渡り途中のミズナギドリ類やアカエリヒレアシシギなどが飛来する4-5月に海鳥の密度が最も高いこと,11-12月には種数が最も多くなること,日本海と太平洋を結ぶ地理的な位置にあるためか,沿岸にもかかわらず外洋性の鳥が多いことなどがわかりました。このような定期航路を使った情報が各地で蓄積され,公表されるようになるといいですね。