研究誌の論文を3本公開しました。チゴハヤブサの食物、オオミズナギドリの新繁殖地そしてツバメの秋の繁殖の報告です。
立石淑恵・高橋雅雄・東信行 (2021) 青森県津軽地域における繁殖期のチゴハヤブサの採食内容.Bird Research 17: A1-A9.
論文の閲覧:http://doi.org/10.11211/birdresearch.17.A1
チゴハヤブサは,日本では北日本で繁殖する猛禽です。全国鳥類繁殖分布調査の結果によると,最近分布は拡大傾向にあり南下しています。しかしこれまでの分布域では記録されたコース数が減っており減少傾向にありそうです。そんなチゴハヤブサの食物を調べたのがこの論文です。食痕,ペリット,ビデオ撮影という異なる手法で巣に持ってくる食物を調べたところ,調査手法により異なるのですが,鳥類や昆虫をおもに食べていることがわかりました。チゴハヤブサというと空をブンブン飛んで空中の獲物を捕らえているのだろうと思っていて,この結果はまさにその通りなのですが,少ないながら,モグラやヒミズなんてとっていたのには驚きました。どうやってとってるんだろう…。
関 伸一・安田雅俊 (2021) 瀬戸内海南縁部におけるオオミズナギドリの新繁殖地.Bird Research 17: S1-S8.
論文の閲覧:http://doi.org/10.11211/birdresearch.17.S1
瀬戸内海の南縁にあたる豊予海峡の大分県高島でのオオミズナギドリの新しい繁殖地の記録です。ここでは外来種のクリハラリスの駆除が行なわれており,その過程でオオミズナギドリの繁殖地が見つかりました。高島のそばには瀬戸内海には唯一の内海の営巣地(ふつうは外海の島に営巣地はある)宇和島があり,その個体群維持にも興味深い位置を占めています。また,クリハラリス自体はオオミズナギドリには影響はないと思われますが,それを駆除することで食物の競合するクマネズミが増加する可能性があります。クマネズミは海鳥の捕食者になるのでオオミズナギドリの繁殖に影響を与えてしまうことが心配されます。今後のモニタリングや研究に注目したいと思います。
深瀬 徹 (2021) 宮城県仙台市における11月のツバメの繁殖.Bird Research 17: S9-S11.
論文の閲覧:http://doi.org/10.11211/birdresearch.17.S9
ツバメの繁殖期は当然春から夏にかけてですが,最近,秋から冬にかけても繁殖していること知っていますか?その多くは九州南部なのですが,岐阜や千葉でも観察されています。そして,なんと宮城県仙台で今回観察されました。巣立った4羽のうち3羽は死んでしまい,やはり冬の繁殖の厳しさがわかりますが,今後どうなっていくのでしょう。バードリサーチでも情報を集めていきたいと思います。