バードリサーチニュース

調査研究支援プロジェクト2020年度 ~投票結果のご報告~

バードリサーチニュース2021年3月: 5 【活動報告】
著者:高木憲太郎

 2020年度もバードリサーチ調査研究支援プロジェクトへのご協力をいただき、ありがとうございました。その投票結果をとりまとめましたので、ご報告いたします。

 2020年度は13件の応募の中から選ばれた9件と、バードリサーチからの1件を合わせた10件の調査研究プランが支援対象でした。投票総数は2017年度の461票を上回り、プロジェクト開始後最多となる514票の投票があり、支援総額は1,543,000円になりました。このうち8割を得票数に応じて分配し、2割を10件の調査研究プランに均等割りで分配して、各調査・研究プランごとの支援額を決定し、支援先に贈呈いたします。今年度もたくさんのご投票とご寄付をいただき、皆さまには心よりお礼申し上げます。

 

2020年度の投票結果

2020年度の支援先調査研究プラン上位5件の得票数

 投票状況はホームページでお知らせしてきましたが、日本鳥類保護連盟の境友昭さんによる調査研究プラン「蓮田の防鳥ネット有効性(無効性)の検証、野鳥の羅網死をなくすために」が最初から最後まで首位を守り続けました。
 境さんは、蓮田で羅網死している鳥が内側から引っかかっていることから、侵入を防ぐ目的の防鳥ネットが、本来の機能を果たしていないのではないか、と考えています。侵入を防ぐことができていないのであれば、ネットの敷設は農家の負担でしかありません。境さんは、主な対象を昼行性のサギ類とオオバンとして、蓮田への侵入経路などの行動と蓮田の対策状況や収穫の段階との関係を調べる予定です。
 5位以上の上位に入った調査研究プランでも得票の傾向はさまざまで、大口の投票を得たプランもあれば、一人あたりの投票数は少なくても多くの方から投票を得たプランもありました。調査研究プランの実施者がご自身でも積極的に広報されると、得票数も伸びているようです。

 

 

投票総数と支援総額の推移

投票総数と支援総額の推移

 これまでの投票総数と支援総額の推移をみてみると、2016年度までは投票数が約200票、支援総額も60万円ほどで、徐々にしか増えていませんでした。2017年度に 池野進さんと安藤温子さんによる調査研究プラン「防鳥ネット羅網死根絶に向けたハス田におけるカモ類の採食方法とその頻度の解明」が220票を獲得し、投票数と支援総額を大きく押し上げると、2018年度と2019年度も約400票の投票と120万円ほどのご寄付をいただくことができていました。
 今年度は、COVID-19感染症の第3波がきて、首都圏などで緊急事態宣言が発令されている中での投票でした。少なからず皆さまも経済的なダメージを受けておられると思いますが、それにもかかわらず、多くのご支援をいただけたことに、驚いたと共に、非常にうれしく思いまいた。厳しい状況にあって、頑張ろうとされている調査者や研究者と、それを応援しよう、と思ってくださる皆さまを、今後もつないでいくことができれば幸いです。

 

 

毎年の応募の状況と1件あたりの支援額

応募調査研究プラン数とその中から採用した調査研究プラン数(上)と、1件当たりの支援額の推移

 調査研究プランの応募は、年によって4~21件と変動があります。2013年度以外は毎年バードリサーチから1件の調査研究プランを出させていただいているので、応募いただいた中から一次審査を通って支援対象として採用している調査研究プランは3~9件です。
 1件あたりの支援金の贈呈額は、年ごとの調査研究プランの数や投票の偏りによって変わりますが、2018年度から2020年度までの3年間では、最小得票数の調査研究プランが約5万円~約9万円、最大得票数の調査研究プランが約21万円~32万円となっています。プロジェクトを開始した初期のころに比べると増えてきています。
 今後も良い調査研究プランが集まり、多くの方にご支援いただけるよう、運営していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

調査研究支援プロジェクト2020 支援先調査研究プラン
今年度の調査研究プランの内容について、もう一度確認したいという方は、下記のリンクからどうぞ。
どれも興味深い調査や研究です。良い成果が得られることを期待したいと思います。

001 蓮田の防鳥ネット有効性(無効性)の検証、野鳥の羅網死をなくすために
   境友昭([公財]日本鳥類保護連盟)
002 世界遺産平城宮跡で寝るツバメはどこから集まってくるのか
 -6万羽のねぐら入りルートを探る-

   奈良ツバメねぐら研究部 (岩井明子・西田好恵・三輪芳己)
003 20年に1度の大型台風直撃!生き延びたのは誰?
 -ダイトウコノハズクの台風対策-

   中村晴歌(北大・理学部4年)・熊谷隼(北大・理学部4年)・澤田明(北大・理学院博士3年)
004 鳥の翼の動かし方と機能
   小林遥香(千葉大学理学部生物学科4 年)
005 ヤンバルクイナの鳴き声収集と環境音からの自動識別
   森下功啓(熊本高等専門学校)
006 潜水性鳥類はマイクロプラスチックに汚染されているのか
   徳長ゆり香(日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科4年)
007 もっといるんじゃない? 北海道の繁殖鳥類
 -ジョウビタキとオオムシクイの繁殖確認調査-

   土屋尚(Eureka!北海道)
008 地域のみんなでアカモズを守る!
 -市民科学と保全生態学への挑戦-

   青木大輔(北大・院理)・赤松あかり(北大・院理)・松宮裕秋(信大OB)・原星一(信大OB)
009 伊豆諸島で繁殖しているツバメをしらべよう!
   重原美智子
010 ムクドリが好むねぐら環境の調査
 -ヒトとムクドリの共存を目指して-

   バードリサーチ

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