バードリサーチニュース

調査研究支援プロジェクト2023 ~寄付&投票のお願い~

バードリサーチニュース 2023年12月: 2 【お知らせ】
著者:高木憲太郎

一次審査を経て、10件の調査研究プランが決まりました

 2023年9月~10月に支援先となる調査研究プランの募集を行ない、20件の調査研究プランが集まりました。その中から支援先を決定するため、上田恵介立教大学名誉教授、金井裕日本野鳥の会参与、出口智広兵庫県立大学准教授、水田拓山階鳥類研究所自然誌・保全研究ディレクター、植田睦之バードリサーチ代表の5名で一次審査を行ない、9件が選定されました。この9件にバードリサーチからの1件を加えた10件の調査研究プランが今年度の支援対象となります。

支援(寄付&投票)対象に選ばれた調査研究プラン

 渡りの謎に迫る調査が今年も多数選ばれました。アプローチもさまざまで、GPSを使うもの、鳴き声によるもの、目視によるものなどさまざまです。この他にも、不思議な繁殖生態の解明を目指す研究、分布の変化を捉えようとする調査、保全のための実態把握の調査などが選ばれましたが、どの調査研究プランも魅力的です。支援対象に選ばれた調査研究プランをご紹介いたしますので、お読みいただきより詳しく知りたいと思う調査研究プランがありましたら、タイトルをクリックして調査研究プランのPDFをご覧ください。調査や研究の着想や考え方、謎解きのアプローチなど、たくさん学べるところがあり、こんなことがわかったら楽しいだろうなぁと、わくわくします。
 ホームページには10件分全部をまとめたPDFもあります。

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001 日本のコミミズクの繁殖地を探れ
高橋佑亮・長井和哉・東淳樹(東北自然史研究会)

コミミズクはユーラシアと北アメリカの高緯度地域で広く繁殖し、日本にも冬鳥として渡来します。個体数の減少が懸念されていますが、繁殖地や渡りのルート、日本で越冬するものとアメリカで越冬するものが同じ繁殖集団なのかなど、いろんなことがまだわかっていません。高橋さんたちは、コミミズクを捕獲してGPSによる追跡とDNA解析によって、これらの謎を解き明かそうとしています。

002 ジョウビタキの高山進出 実態の解明
飯島大智(東京都立大 学振PD)

冬鳥として観察されていたジョウビタキが国内で繁殖するようになり、中部山岳の山麓でも繁殖期に記録されるようになりました。また、気候変動の影響でさまざまな生物が高山帯に進出しています。そんな中、飯島さんは中部山岳の高山帯でジョウビタキの繁殖行動を確認し、この鳥の高山への進出の実態を明らかにしようと調査を計画しています。変化が起きている今だからこそ得られることが沢山あると思います。

003 龍飛から全国へ、夜に渡る鳥の目視による種別カウント調査
  -夜渡り調査の継続と、全国の新しい観察地開拓に向けて-
原 星一

原さんによる夜渡る鳥の種の識別調査は3年連続で支援対象になりました。これまでにも多くの成果を挙げてきていますが、今年はデータを積み上げるだけでなく、調査を広げていこうとしています。これまでは津軽半島の龍飛崎で秋にのみ調査していましたが、春の渡りを調査できるポイントを見つけたことで南から北に渡る鳥の調査にも挑戦します。また、調査地を増やすため勉強会を開いて技術を伝えていく計画です。

004 ネコの病原体が野鳥を脅かす?
  
-奄美大島における鳥類のトキソプラズマ感染調査-
鈴木遼太郎(日獣大・院・獣医生命科学 博士後期1年)

ネコが島に侵入したとき、捕食以外にも、目に見えない形で固有鳥類に影響を及ぼしている可能性があります。鈴木さんは、奄美大島で、ネコが媒介する病原体が鳥に感染して、死亡させているのではないかと危惧し、その実態を調査しようとしています。対象は、地上性でネコの糞などに接する機会が多いアマミヤマシギと、地上の動物を捕食するサシバ。すでに入手している両種の死亡個体から、病原体のDNA抽出と組織切片の顕微鏡検査で実態を明らかにする計画です。

005 皆で地鳴きから夜の小鳥の渡りを調べる(初年度:基礎検討)
大坂英樹(トリルラボ)

多くの鳥が夜に渡っていることをご存知でしょうか?星が輝く夜空を見上げている時、ホオジロ類やツグミ類の声が空から聞こえてくることがあります。大坂さんは得意の録音&音声解析を武器に、夜空を鳴きながら渡っていく鳥のモニタリング体制づくりに挑戦します。参加型調査で、地鳴き音声データの提供や、自宅等でICレコーダーによる録音をしてくれる協力者を募集して実施します。

006 ウチヤマセンニュウの保全は島だけじゃダメ!!
  -未確認繁殖島と本土部の葦原の利用状況調査-
大槻恒介・山口典之(長崎大・院・水産環境)

東アジアの限られた島嶼で繁殖するウチヤマセンニュウ。繁殖生態は調べられていますが、繁殖を終えた後、渡るまでの生態は謎に包まれています。大槻さんと山口さんは夏に長崎県本土部の葦原で複数の個体を捕獲し、島ではない場所で渡りに備えている可能性を見出しました。この調査研究プランでは、本土部の葦原における個体数変動や脂肪蓄積等を調査すると共に、周辺の島で繁殖実態を調査します。

007 もしかして:見栄っ張り
 リュウキュウコノハズクは広告声を用いて強い自分を演出する説
武居風香(北大・理学部4年)

リュウキュウコノハズクは「こっ ぽろ」と聞こえる声で鳴きますが、体サイズが大きいほど、より低い声で鳴くことがわかっています。また、同種の録音した声を流すと、一時的に声を変化させていそうだと感じたそうです。そこで武居さんは、この鳥のオスは相手の声を認識し、自分の声をより低くすることで優位性を示し、相手を騙してさえいるのではないかと考え、プレイバック実験を試みます。

008 南西諸島の渡り鳥、『音』を使って追跡する!
  -AI を用いた森の見える化への挑戦-
天野孝保(長崎大・院)・道上竣介(東京工業大・院)・江指万里(北大・院理)
・加藤銀次(鹿児島大)・惣田彩可 (京大・院)・末田晃太(北大・院環境科学)

南西諸島を渡る鳥は多くいますが、春の渡りを音声で調べられないか、と天野さんたちは考えました。録音機を南西諸島の10島に設置し、声が特徴的な4種を対象に調べます。リアルタイムで音を配信できる機器も用いて天候などもモニタリングし、対象種の抽出には AI を用いる計画です。鳥たちはどのように島を経由して渡ってくるのでしょうか?台風を避けて渡ってくる傾向がみられるのでしょうか?

009 キタアラスカハマシギが減っているのは日本の越冬地のせい?
  ハマシギの日本での越冬期の生存率を調べたい!
細谷淳1 ・飯塚拓也・飯塚彩子・橋本宣弘・高橋和也2・田谷昌仁1,3・竹田山原楽1,3・井上遠
(1.日本鳥類標識協会 2.日本野鳥の会宮城県支部 3.東北大 生命科学)

日本で越冬するハマシギの個体数は減少しています。また、北米大陸北極圏で繁殖する同種の3亜種の中で、日本に来ている可能性のある亜種キタアラスカハマシギだけが生存率が低く、中継地や越冬地に原因があると指摘されているそうです。そこで、細谷さんたちはハマシギを捕獲して標識し、越冬期の生存率と、来秋の帰還率を調べ、減少の原因が彼らの生活史のどこにあるのか探ろうとしています。

010 食性データベース 記録が少ない場所での記録を充実させる!
バードリサーチ

食性データベースにはこれまでに2000件以上の記録が集まっています。記録される場所には偏りがあり、人の多い場所では記録も多くなる傾向があります。例えば内陸に分布を広げているイソヒヨドリも採餌記録は人が多い海岸近くの方でより多く集まっています。こうした鳥について、記録のある場所とは環境が異なる記録が少ない場所でも採餌を観察し、場所による採餌内容や行動の違いを比較します。

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このプロジェクトは、皆さまの投票とご寄付によって成り立っています

ぜひ、頑張る調査者や研究者たちにお気持ちをお届けください。

 調査研究支援プロジェクトでは、みなさんから寄付を募り、それをもとに鳥の調査や研究に対して支援を行ないます(図)。寄付していただく際は、応援したい支援先を選ぶことができます。鳥類の調査・研究をみんなで支え合いながら、発展させていける仕組みになればと思っています。ご協力、よろしくお願いいたします。

図.	集まった寄付のうち,2割を支援先に均等に分配し,8割を得票数に応じて支援先に分配します.またこれに加えて,企業からいただいた寄付を支援先に均等に分配します.

図. 集まった寄付のうち、2割を支援先に均等に分配し、8割を得票数に応じて支援先に分配します。またこれに加えて、企業からいただいた寄付を支援先に均等に分配します。

寄付&投票の方法は次の2通りです

クレジットカードで寄付を送る場合

下記のホームページをご覧ください.
http://www.bird-research.jp/1_event/aid/kifu-a.html

 

銀行または郵便局から寄付を送る場合

Step1.メールする.

次の情報を高木( br@bird-research.jp )宛てにメールでお伝えください.

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・お名前とご住所
・寄付口数
・支援する調査・研究プランと投票数
・あなたのお名前を支援先に伝えて良いかどうか
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Step2.お金を振り込む.

下記のホームページに掲載されているいずれかの口座に合計額を振り込んでください.
(振り込み手数料はご負担ください.)
http://www.bird-research.jp/1_event/aid/kifu-b.html

 

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今年度の調査研究支援プロジェクトの運営には、
学校法人 滋慶学園 TCA東京ECO動物海洋専門学校
よりご支援いただいています。