2017年9月21日,オオタカが種の保存法に基づく「国内希少野生動植物種」から解除されました。その解除のオオタカへの影響の有無をモニタリングする環境省の事業がスタートし,バードリサーチはその事務局を務めています。この事業では全国6か所のモニタリングサイトでオオタカの繁殖数や繁殖成績をモニタリングしていますが,環境省の予算がなくても継続的なモニタリングができるような体制もつくろうと,日本オオタカネットワークなどと一緒にアンケートによる全国のオオタカの繁殖成績の情報収集も行なっています(バードリサーチニュース 2018年2月: 2)。このアンケート調査も4年目を終え,オオタカの繁殖状況が見えてきました。
東日本では繁殖成績が低下?
これまで全国から375件の情報をお送りいただきました。情報を提供いただいた皆様,ありがとうございました。このデータを集計するとオオタカの繁殖成績が低下している可能性が見えてきました。
まず1羽でもヒナが巣立った巣を「繁殖成功」として,その割合を地域別に見てみました。すると,北海道・東北,関東,中部では繁殖成功の割合が2016年以降,徐々に低下する傾向にありました(図1)。近畿以西の地域は一定の傾向は見られませんでしたが,残念ながら,この地域は情報件数が少ないため,変動が大きく,傾向が見えていないだけなのかもしれません。
次に観察巣数の多い関東と中部について巣立ちヒナ数の変化を見てみました。すると,上述した繁殖失敗に該当する「巣立ちヒナ数0」だけでなく,「巣立ちビナ数1羽」の割合も徐々に増えていました(図2左と中央)。つまり巣立ちヒナ数でみても成績が低下している可能性があるのです。この4年間のうち,少なくとも3年の情報があった41巣のみを対象にして,その傾向をみてみましたが,やはり巣立ちヒナ数は減少傾向にあることが示されました(図2右)。したがって,繁殖成績が低下している可能性は高そうです。
必要な長期的な情報蓄積と西日本の情報
この4年間でみると,東日本のオオタカの繁殖成績が下がっている可能性は高そうだということがわかりました。ただ,まだ調査を始めて数年しかたっていないので,長期的に下がっているわけではなく,長期的には上がったり下がったり変動しながら安定している可能性も否定できません。もう少し長期的に見つつ,低下しているのかどうか,そして,低下しているのだとしたら,その原因が何なのかを探っていく必要あります。
また,西日本の情報を集めていく必要もあります。各地でオオタカの生息状況を聞くと,東日本では2000年代をピークにやや減っている印象を持たれている方が多いようですが,西日本では安定しているかやや増えている印象を持たれている方が多いようです。同様に,繁殖成績にも地域的な違いがあるかもしれません。
オオタカの繁殖を観察されている方は,その情報をご提供いただけないでしょうか? 協力いただいた方には,繁殖期終了後に繁殖状況をまとめた結果をご報告しています。ご協力,よろしくお願いいたします。
アンケート送付ページURL
http://www.bird-research.jp/1/otaka/