バードリサーチニュース

第2回インターネット・バードソン 2347カ所で292種を観察 バードウォッチング記録から分かる越冬分布の変化

バードリサーチニュース2020年1月: 2 【活動報告】
著者:神山和夫・植田睦之

 インターネット・バードソンは、観察した鳥をバードリサーチの野鳥記録Webサイトフィールドノートに登録し、全国で観察種数を競う競技です。昨年6月の第1回大会に続き、2020年1月1日~19日に第2回大会を開催しました。今回は244名の皆さんが参加されて、2347カ所から3039回の観察記録が集まり(図1)、記録された種数は293種になりました。全国鳥類繁殖分布調査で使用している20kmメッシュにすると397メッシュで観察が行われています(図2)。

 はじめに、競技の結果から見てみましょう。今回のバードソンには種数部門と探鳥スポット部門がありました。種数で順位を競う種数部門では160種を観察された方がトップで、100種を超えた方が24名いらっしゃいました。昨年の繁殖期に開催した第1回大会で100種を越えたのは3名だけだったのですが、これには参加人数が増えたことに加えて、日本では繁殖期より越冬期の方が野鳥の種類が多くなることも理由でしょう。今大会ではフィールドノートの地図上に表示された探鳥スポットという場所で観察をするともらえるボーナスポイントの加味する探鳥スポット部門も設けました。この部門では全国の自然観察施設から提供していただいた素敵なオリジナルグッズが賞品になっています。探鳥スポットは野鳥の多い場所をみんなで観察してモニタリング地点にすることを目的に順次設置していますので、今後も探鳥スポットで観察をされたら、ぜひフィールドノートに記録してください。

図2.野鳥観察が行われた場所(20kmメッシュ)。色が濃いほどメッシュ内に観察地点が多い。

 第1回大会でもそうだったのですが、今回も多くの参加者の皆さんが、ご自身が住まわれている県や隣県だけで観察をされています。種数部門トップの「おとりほ」さんは福岡県だけで160種。3位の「ai」さんも宮城県だけで130種です。実は第1回大会トップの方も宮城県だけで観察されていたので、自分がよく知る場所で見落としなく観察することが種数を増やす秘訣のようです。

 

越冬期の野鳥分布図

 今回のインターネット・バードソンは、集まった記録を使って全国の越冬分布図を描くことを目的にしていました。バードソンの記録に加えて、これまでフィールドノートに登録されている記録と全国鳥類越冬分布調査、そして環境省のモニタリングサイト1000(いずれも2016/17~2019/20年の12月16~2月15日)の記録を総合して分布図を作成しましたので、約20年前に環境省が実施した越冬期調査と比べて変化の大きな種をご紹介しましょう。

分布が拡大した種

 まだ越冬記録の収集途中で、データ不足の地域があるせいで分布が縮小した種は不確かなため、分布が拡大している種を取り上げます。ヒドリガモは548カ所、オオバンは777カ所がバードソンで記録されました。両種は陸上の草や水草を好んで食べるため冬に植物が少なくなる寒冷地には住みにくいと思われますが、北海道東部に越冬分布が広がってきています。気候が温暖になって餌の植物が増えているのかもしれません。北海道のバードソン記録を見ると、流れがある川や、河口、漁港などの凍結しない水辺で記録されています。

図3.ヒドリガモとオオバンの越冬分布図。

 オオジュリンは178カ所、ミソサザイは79カ所がバードソンで記録されました。オオジュリンは日本海側の分布が北上しており、ミソサザイは道東で増えています。記録されている場所は、オオジュリンは河川湖沼の岸(ヨシ原が越冬環境)、ミソサザイは低地林や河川沿いが多いようです。

図4.オオジュリンとミソサザイの越冬分布図。

 

越冬ツバメ

図5.宮城県の伊豆沼のそばにある本吉旅館の古巣で越冬する7羽のツバメ。(2019-12-03撮影 粕谷和夫)

 今年はツバメの越冬期繁殖が話題になっています。暖冬の影響なのか、岐阜県多治見市で昨年12月にツバメのヒナが巣立ち、千葉県我孫子市でも12月にツバメが産卵したそうです。暖かい宮崎や鹿児島では冬期にツバメが繁殖することがありますが、まさか本州でも繁殖するようになるとは驚きました。バードソンではツバメが18カ所で記録され、一番北は宮城県名取市でした。イワツバメは13カ所で記録され、一番北は岐阜県でした。分布図で見ると、イワツバメはツバメより西で越冬する傾向であることが分かります。

 バードソンでツバメ類を記録された皆さんに、越冬状況を教えてもらいました。兵庫県加古川市では川のそばで10羽のツバメの群れが記録されていて、集団で飛び回るのを見るようになったのは最近数年のことだそうです。イワツバメは佐賀県鹿島市で30羽の群れが記録されてましたが、このあたりでは以前から冬に生息しているそうです。福岡市の溜池でも10羽の記録があり、ここも以前からいるそうですが、1990年代に増えた印象があるということでした。1980年代の分布図と比べると九州の分布が減っているように見えますが、報告が集まっていない可能性もありそうです。

 

図6.ツバメとイワツバメの越冬分布図。

 この記事で紹介した分布図に載っていない場所で越冬記録があるのをご存じでしたら、ぜひフィールドノートに記録を入れて下さるか、または鳥類越冬分布調査のWebサイトにある登録フォームかExcelファイルで情報をお寄せ下さい。