まもなくかわいいヒナ連れの姿を見せてくれるカルガモ。現在実施している第3回繁殖分布調査の記録を1990年前後の第2回繁殖分布調査のときと比べてみると、分布地域が広がってきているようです。カルガモが記録された調査コースから分布図を作ると(図1)、中国地方や北海道の北部とオホーツク沿岸で前回調査時にはいなかったメッシュに出現していることが分かりました。しかしその一方で、東北地方では記録されるメッシュが減っているようです。
次に、図1のメッシュ内には2本の調査コースがあるのでコースごとに前回と今回の調査を比較してみたところ、新たにカルガモが記録されるようになったコースが記録されなくなったコースよりも多いことが分かりました(図2)。北海道と中国・四国の出現率が高いので、これまで繁殖が多かった本州中央部から南北に広がってきたのかもしれません。図1では分布域が変わっていない中部太平洋岸でも出現するコースが増えているので、個体数密度が高まっているようです。
越冬期には大陸から渡ってくるカルガモもいますが、繁殖期にいるカルガモは一年を通して国内にいる個体だと考えられています。そうすると繁殖期の分布や個体数が増えた理由には、成鳥が長生きするようになったか、一腹卵数が増えたか、雛の生存率が高くなったかの3つの可能性があるでしょう。成鳥の寿命を調べることは難しそうですが、ヒナの生存率は野外調査で知ることができます。親が連れているカルガモのヒナはカラスやノネコに食べられて日に日に減っていくという話を聞きますが、実際にどのくらいが成鳥になれるのでしょう。
カルガモ・サバイバル調査
過去との比較はできませんが、現状把握のためにカルガモのヒナの生存率を調査してみたいと思います。https://www.bird-research.jp/1_katsudo/karugamo_survival/に特設ページを開設したので、ご覧ください。生まれて間もないカルガモのヒナを見つけたら、ヒナが捕食されにくいサイズになるまで数週間の継続調査をして、何羽のヒナが生き残るかを調べようという調査です。私が住んでいる東京では、カルガモは一見すると環境の悪そうな小さな人工池でヒナを育て、ヒナが成長したら広い水域に移動していきます。地域によってカルガモが子育てに利用する環境も違っているのかもしれませんから、そうしたことも合わせて報告していただけたらと思います。
追記:カルガモ・サバイバル調査の結果を2019年8月のニュースレターで発表しています。