バードリサーチニュース

バードバス(水場)調査を始めます! 調査にご協力ください!

バードリサーチニュース2019年5月: 1 【参加募集】
著者:佐藤望・山﨑優佑・守屋年史

水たまりに集まるカエデチョウ

 水は人にとって必要不可欠です。厚生労働省によると,1日に2.5リットルの水が必要で,体内の20%の水分を失うと死に至るそうです(「健康のため水を飲もう」推進運動より).水が必要なのは人だけではなく,鳥類も同じです.熱帯地方に行ったときにちょっとした水たまりにたくさんのカエデチョウが水浴びや水飲みをしていたのを目撃したとき,水の重要性を実感しました(写真).
 カエデチョウだけでなく,多くの鳥類が水場を利用する事が分かっています.海外の事例ですが,ニューカレドニアの森林内にあった15ヵ所の水場にインターバルカメラ(1分毎に1枚撮影)を設置し,計1,340時間撮影したところ, 21種の鳥類の水場利用を確認しました.水場付近で実施したラインセンサスでは33種の鳥類を確認したので,1分間に1枚の撮影だけでも生息種のうちかなりの種の鳥類が確認できました(Okahisa et al. 2015).
 このように多くの鳥が水を求めて水場を利用するため,人工的に水場を作ることで鳥類のモニタリング調査に利用できると期待できます.たとえばトカラ列島の3つの無人島に設置した水場を赤外線センサー式自動撮影カメラで撮影したところ,臥蛇島では7種,上ノ根島では10種,横当島では12種撮影されました(関 2012).無人島のように調査するのが困難な場所では,水場を設置し,鳥類を撮影する方法は生息している鳥類を確認するために有効です.また,この研究では直接観察も実施していますが,直接観察では確認できなかった種も撮影できたため,一時的に滞在する渡り鳥などの調査にも有効と考えられます.

図1 清瀬市内の住宅の庭に設置した水場に訪れたシジュウカラ、ヒヨドリ、キジバト、メジロの日毎の観察回数.

 同様にバードリサーチスタッフの守屋の自宅(東京都)に設置したバードバス(人口の水場)に赤外線センサー式自動撮影カメラを設置したところ,1月1日から3月25日までの84日間で1,394回.12種の撮影に成功しました(日平均16.8回).1日に撮影された回数をみると,シジュウカラ,メジロは1月後半に多く,2月中旬からそれまでこなかったキジバトが観察されるようになりました(図1).また,秋にはオオルリ,シメ,キビタキが撮影された事から,留鳥だけでなく渡り途中の鳥類もバードバスを利用する事が分かりました。一方で,近くに生息しているムクドリは撮影する事ができませんでした(守屋の自主研究はこちらも参照).これは季節によって水場の利用状況に変化があり,鳥類によってバードバスの利用頻度が異なるか,あるいはバードバスの大きさや水位の深さ,周りの環境といった要因によって利用する鳥類が異なる可能性を示唆しています.

身近な鳥類調査にバードバスの有効性を検証

 これまでの先行研究や守屋の自主調査によって,バードバスを設置して撮影するモニタリング調査はある程度,有効である事が分かりました.そこで,調査の有効性を高めるため,データ収集をご協力頂きたいと考えております。特に以下のような事が分かれば,モニタリング調査として活用できます.

・水場を利用しない鳥がいるかどうか
・どの程度,渡り鳥が利用するか
・季節によって利用頻度が異なるのかどうか
・場所(たとえば、都心と郊外)によって利用頻度が異なるかどうか
・バードバスのタイプや周りの環境(樹木の有無など)によって,利用する鳥類に影響があるかどうか

 これらの疑問を解決するためには,多くの情報が必要となります.オーストラリアでは都市と郊外で観察された鳥類相が異なる事などが分かりましたが、この調査では992人が参加しております(Cleary et al. 2016).恐らく,日本でも都市と郊外では,両方に生息している種であっても,利用頻度や利用の有無も異なってくると予測できます.

バードバス調査を実施します

 前述した疑問を明らかにするため,皆さんと共にバードバスを利用する鳥類調査を開始します.まずは第1弾として、すでにご自宅などにバードバスを設置している方を対象に,これまでどのような鳥類がバードバスで観察できたのかを教えて頂ければと考えています.是非,ご協力ください!必要な情報な以下の通りです.
必須項目
・お名前
・メールアドレス
・バードバスが設置されている場所(住所か,緯度経度)
・バードバスに訪れた鳥類のリスト
任意項目
・バードバスでは観察していないが,周辺で観察した鳥類のリスト
・バードバスの大きさ(直径)、高さ
・水換えの頻度
・メンテナンスの頻度
・バードバスが置かれている場所の周りの環境

データの記入と送信はこちらから行えます.紙媒体で直接,バードリサーチまで送って頂いても構いません.

ホームページにも掲載しておりますので、こちらからご確認ください.

 

参考文献
Cleary, G. P., Parsons, H., Davis, A., Coleman, B. R., Jones, D. N., Miller, K. K., & Weston, M. A. (2016). Avian assemblages at bird baths: a comparison of urban and rural bird baths in Australia. PloS one, 11:   e0150899.
Okahisa, Y., Nakahara, T., Sato, N. J., Theuerkauf, J. & Ueda, K. (2015). Puddle use New Caledonian         rainforest birds. Ornithological Science 14: 41-45
関伸一. (2012). 自動撮影カメラとタイマー付録音機で記録されたトカラ列島の無人島群における鳥類相.              Bird  Research 8: A35-A48.