バードリサーチニュース

日本鳥学会2016年度大会 発表してきます!

バードリサーチニュース2016年9月: 2 【学会情報】
著者:高木憲太郎

今年の日本鳥学会大会は今週末、9月19~21日に北海道大学 札幌キャンパスで開かれます。今回、バードリサーチのスタッフは下記の口頭・ポスター発表を行なうほか、自由集会内でも発表します。また、調査研究支援プロジェクトの過去に支援した調査研究から、2件発表があります。大会に参加される方は、発表を聞いていっていただけるとうれしいです。

日本鳥学会2016年度大会のホームページ
http://osj-2016.ornithology.jp

バードリサーチのスタッフが関わっている発表


口頭発表 1題
ポスター発表 6題
自由集会 5件


調査研究支援プロジェクトで支援した調査研究成果の発表


口頭発表 1題 
ポスター発表 2題


バードリサーチのスタッフが関わっている発表

口頭発表

イスカ Photo by 三木敏史

イスカ Photo by 三木敏史

なぜこんなにもまつぼっくりがおちているのか
三上かつら

 北海道の函館市から七飯町にかけての旧国道5号線沿い,通称「赤松街道」では,3月~4月ごろになると,地面に大量の球果(まつぼっくり)がみられる.これは春の渡りの時期にこの地を訪れるイスカが落としたものだ.イスカは枝から球果を外さずに種子を取り出して食べることもできるが,なぜこのように大量の球果を落とすのかは興味深い.今回,落とされた球果の観察,計測およびイスカの行動観察を行った結果について考察する.

 


ポスター発表

九十九里浜におけるシロチドリの孵化の確認
守屋年史、佐藤達夫、岩崎加奈子、奴賀俊光、北村亘、茂田良光
 我々のグループでは、九十九里浜の砂浜環境においてシロチドリの繁殖状況調査を実施しており、特に繁殖の成功率や失敗の要因について注目して調査を進めている。インターバルカメラ、センサーカメラ、温度ロガーなどを利用し、シロチドリの孵化の確認が可能か試行調査を行なった。あわせて、今までに確認できた孵化の状況や繁殖失敗の要因、抱卵中の巣内の温度変化などの特徴についても報告する。

南関東のコアジサシの動向と営巣地における保全対策
奴賀俊光・北村亘・早川雅晴
 コアジサシは営巣環境の悪化から、環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。コアジサシの保全のためには、複数の営巣候補地が近隣にあることが望ましいが、営巣状況を長期間にわたり広域で記録した研究は少ない。本研究では、南関東での個体数や営巣状況を1990年代からわかる範囲で集計した結果、2001年以降、全体としてコアジサシは減少していることが明らかとなった。その他、餌量との関係など個体数増減の要因について考察したい。

一般参加型調査「メジロとランチ♪」から探るメジロの子育て
堀江明香
 日本国内のメジロの生活史の違いを調べるために,一般参加型調査を企画した。“さえずり初認調査”からは、日平均気温が10℃に近づくとメジロがさえずり始めること、おおむね季節と共に南から北にさえずり前線が北上するが、太平洋側などでは早くからさえずりが始まる傾向があることが分かった。“メジロとランチ♪”からは、地域ごとの繁殖ピークが分かってきた。

富士山で楽しく学ぶ -垂直分布調査の体験実習法の開発-
高木憲太郎・森本元
 森林性鳥類の生息状況の調査は、主にラインセンサスとスポットセンサスによって行われるが、調査には一定の技術が必要である。我々は、こうした調査技術を普及するための方法として、より参加者の満足度が高い体験実習の形を求めて、富士山で6年間の試行を行なってきた。その結果、1泊2日の行程で、調査の実施、結果のとりまとめ、座学、バードウォッチングをパッケージとした体験実習法が確立できたので報告する。

日本産シロチドリ Charadrius alexandrinus の国内の移動と分類
◯茂田良光・守屋年史・奴賀俊光・佐藤達夫・岩崎加奈子
 九十九里浜においてシロチドリ35個体にカラーリングを装着して放鳥した。非繁殖期における観察回収は18例あり、いずれも国内からであった。山階鳥類研究所がもつバンディング・データもあわせると日本で繁殖する個体が国外に渡った例は知られていない。また、九州以北の繁殖個体が南西諸島以南に移動した例はないが、台湾で放鳥された幼鳥が石垣市で確認されている。沖縄県で繁殖する個体は,体色が淡い傾向があり異なる亜種の可能性がある。周辺地域の亜種も含め,日本産亜種との比較・検討が必要である。

西日本で越冬するカモ類の渡り
○土方直哉ほか25名(含 植田睦之・高木憲太郎
 カモ類に発信機をつけて春の渡りの衛星追跡を行ったところ,ヒドリガモは日本海を越えて北海道へ移動するもの、日本海を越えて大陸へ移動するもの、朝鮮半島に移動するもの、の大きく3つに分かれた。オナガガモの多くは本州の各地で短期間の滞在を繰り返しながら北上し、北海道へ渡った。マガモとコガモは、朝鮮半島を経由して大陸を北上するものと、朝鮮半島を経由せずに直接大陸へ渡るものに大きく分かれた。


自由集会

日本の鳥の今を明らかにしよう ~全国鳥類繁殖分布調査への誘い~
主催者:植田睦之・荒 哲平
 2020年の完成を目指し,日本の鳥の今を明らかにする官民学の共同事業「全国鳥類繁殖分布調査」がはじまった。この事業は誰でも調査や解析へ参加でき,参加者の手で成果をあげていく共同事業である。本自由集会では,すでに調査に加わっている研究者から各自の研究を紹介していただく。そして自由集会参加者からは「こんなことができないか」などアイディアや意見をいただき,これを機に新しい研究がうまれたら,と考えている。

集会内話題提供:
山地鳥類・とくに高標高帯に生息する鳥種の広域調査における現状把握(森本 元・高木憲太郎
過去2回の東京都鳥類繁殖状況調査の成果と第3回の実施に向けて(佐藤 望
ほか

カワウを通じて野生生物と人との共存を考える(その19)
-カワウのフンによる生態系サービス-
世話人:亀田佳代子・熊田那央・加藤ななえ
 魚食性鳥類は、基本的に陸域から水域へと移動している窒素やリンなどの栄養素を、もう一度陸域へと持ち上げる役割を持っている。今回の集会ではカワウのフンに着目し、カワウが供給する栄養素の特徴や量、そしてその恩恵とマイナス面について、中村雅子さんと風間健太郎さんに話題提供していただく。

自由集会タイトル:ドローンを使った鳥類調査
企画者:上野裕介・時田賢一
 ドローンの進歩と低価格化によって、鳥類学の分野でもドローンを使った事例が増えつつある。調査の事例として、高橋佑介さんが八郎潟のチュウヒを、時田賢一さんが出水のツル類を、中山文仁さんが湿原での営巣植生調査を、そして神山がマガンのカウント調査について発表する。さらに、ドローンで撮影した写真からGISで利用できるオルソ画像を作る手法や、ドローンに関係する法制度について上野裕介さんの発表が予定されている。

集会内話題提供:
ドローンを利用したマガンカウントの試み(神山和夫
ほか

カササギは北海道中に広がるか?
世話人:藤岡正博・長谷川理
 カササギといえば九州北部と思っているあなた、もう古い! 北海道にいるんです。しかも、うじゃうじゃと。カササギは間違いなく北海道に定着している。しかし、どこからどうやって北海道に来たのか。なぜ市街地・住宅地に多いのか。分布域は広がっているのか。バードウォッチャーや市民を含むたくさんの人でモニタリングを続け、鳥類の新規定着・分布拡大について研究を進めている。

集会内話題提供: 
室蘭のカササギはなぜもっと増えない?(黒沢令子
ほか

千歳川遊水地へ鳥は来るだろうか?
主催者:正富宏之・正富欣之
 北海道にあった湿地の実に7割が消えたと考えられ、当然、湿地に依存して暮らす鳥は、生息基盤を失い北海道の各地から消えていったし、一見湿地が残っているように見えても、その多様な構成要素の変化により生息不能となった種もいる。このような状況の中、湿地創出の可能性のある大規模な遊水地群の整備計画を北海道開発局が実施している(目的は千歳川流域の洪水調整だが)。この状況で、機会を逃さず、官民を問わず協力して、遊水地のよりよい利活用を目指すため、鳥の研究者がどのような対応をすべきか議論する。

集会内話題提供: 
遊水地の鳥-渡良瀬遊水地の鳥の現状と課題-(平野敏明
ほか

 

調査研究支援プロジェクトで支援した調査研究成果の発表

口頭発表
都市近郊におけるオオタカの繁殖成績に影響する環境要因
夏川遼生 

ポスター発表
美しくないツバメのオスほどかわいさに投資する
○長谷川  克・新井絵美

リュウキュウアカショウビン Halcyon coromanda bangsi の繁殖地への帰還率
○浜地 歩・植村慎吾・櫻井宥昌瑚・仲地邦博・高木昌興