バードリサーチニュース

日本鳥学会2015年度大会参加報告

バードリサーチニュース2015年9月: 6 【学会情報】
著者:高木憲太郎・小島みずき

 9月18~21日に兵庫県立大学神戸商科キャンパスで開かれた鳥学会大会に参加してきました。9月後半といえど、例年、暑い日が多く、大勢が集まる口頭発表会場やポスター発表会場では、蒸し暑くて汗だくになることもあるのですが、今年は涼しく過ごしやすい大会でした。三宮から電車で20分ほど揺られた先に複数の大学があつまった学園都市という名の駅があります。右も左も大学のキャンパス、かと思いきや駅の周りはマンションが立ち並び、お目当てのキャンパスまでは意外と距離がありました。ルートがちょっとわかり難いので、駅には案内の学生がいましたが、それでも道に迷ったという人に何人も会いました。

 口頭発表は2会場51題,ポスター発表が112題,高校生発表が14題,そのほかに自由集会,シンポジウム,黒田賞受賞講演がありました。口頭発表は例年より少なかったのですが、ポスター発表は例年通りたくさん並び、そこかしこで議論に花が咲いていました。近年は鳥を専門にしている教授が何人も退官されて研究室が減り続けていますが、大学生の参加や発表はたくさんあり、高校生発表も質の高いものが増えてきていて、今後が楽しみです。また、バードリサーチ調査研究支援プロジェクトで支援させていただいた研究が多数、発表されていました。僕らが聞いてきた発表の中から、いくつかご紹介したいと思います。

 ■日本鳥学会2015年度大会のホームページ
http://www.stork.u-hyogo.ac.jp/osj2015/

■ヒバリにおける非繁殖期のさえずりの歌構造
 (植村慎吾・江口和洋)

写真.ポスター発表する植村さん

写真.ポスター発表する植村さん

 秋にさえずるヒバリ、よく聞いてみると、いや、いくら耳をそばだてても人間には判読困難だそうですが、春のさえずりとは少し違うというのです。鳥のさえずりも人間の言葉のように、「チュク」、「ツピッ」などという音の集まりで構成されているのですが、この音のレパートリーが違う、ということはよくあります。ところが、ヒバリの春と秋のさえずりでは、レパートリーは変わらないというのです。何が違うかというと、この音の「配列の線形性」が違うというのです。はて?どういう意味でしょうか。つまり、こういうことです。ヒバリは、春には音と音の順番が固定され「あ~あ、かわのながれのように」という風に決まったパターンでさえずるのですが、秋では「よにあうが、あわのなかにれ~」、「あの、うに~、よのなれわがあか」という風に出現する音は同じでもその音の順番は決まっておらず歌の形が固まっていない、ということが起きているというのです(たぶん)。このことから、植村さんたちは、秋のヒバリのさえずりは、なわばり防衛などの機能を持ったものではなく、さえずりを完成させるための学習ではないか、と考えています。

■人工飼育下のカワガラス亜成鳥の日間エネルギー消費量に対する外部気温の影響
 (風間麻未・風間健太郎)

 毎日どのくらい食べているのか、その内どのくらいエネルギーとして体内で消費されているのか、自分自身の体の事でもわからない事が多いのではないでしょうか。今回発表された風間さんは、水族館で飼育されているカワガラス2羽の餌の量、体重と気温の関係を調べました。生後60日~165日のカワガラス、平均72g(オスと推定)、平均57g(メスと推定)の個体にそれぞれ25gと21gの餌を毎日与えたところ、気温が上がるにつれエネルギー消費量が減ったそうです。鳥は恒温動物なので、気温が低いと多くの餌を食べて体温を維持しようとしますが、気温が高くなると体温調節に必要なエネルギーが減るためにエネルギー消費量が減ったのでは、と風間さんは考えています。古典的な基礎代謝量の研究ですが、気温との関係がはっきり捉えられていて面白いと思いました。それにしても、72gの鳥が毎日25gの餌を食べているとは、人と比べるととても多いですね。ヒト(約65kg)の毎日の食事量は約2kgだそうです。ちなみにカワウは平均体重2.3kgで毎日500gの魚を食べると言われています。鳥を飼育している施設は数多くありますが、なかなか人手が足りず毎日の餌量と体重を計測はできない所が多いのではと思います。野鳥の飼育は特別な許可が要りますが、鳥を飼われている方や救護施設に関わっている方は体重と餌量を毎日測って見てはいかがでしょうか。

■スズメが食べている砂の量は季節によってどのように変化するのか?
 (大須賀詩織)
 高校生の大須賀さんは、個体数が減ってきているといわれるスズメが何を食べているのか知ることは、保護に役立つのではないかと考えて、スズメの糞を分析しました。すると、植物質の食べ物と動物質のもののほかに砂が含まれていて、しかも、砂の量が季節によって変化することに気付いたのです。調査は、ベランダに餌を置き、スズメを集めて、その場に残された糞から砂の量を数えるという方法と、博物館で標本の筋胃を調べ、その砂量を数えるという2通りの方法で行ないました。その結果、どちらの方法でも、夏に砂が少なく、ほかの季節に砂が多いということがわかりました。動物質の食べ物が少なく硬い種子などからより多くの栄養を吸収するために、夏以外の時期に砂を多く食べている可能性が考えられますが、種子などを砕く目的以外にもミネラルを摂取する目的もあるのではないかと考えているとのことでした。

写真.懇親会のようす。なぜ、こぶしを突き上げているのか?写真を撮ることにだけ集中していた著者には謎である。

写真.懇親会のようす。なぜ、こぶしを突き上げているのか?写真を撮ることにだけ集中していた著者には謎である。

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