バードリサーチニュース

オオハクチョウ「テツオ」の旅

バードリサーチニュース2018年2月: 4 【研究誌】
著者:植田睦之

2016年11月に伊豆沼・内沼でGPSを装着したオオハクチョウの移動を追跡したデータが公開されました。

植田睦之・嶋田哲郎・内田 聖・杉野目斉・高橋佑亮・時田賢一・三上かつら(2018)GPS 発信機で追跡したオオハクチョウの位置情報のデータ.Bird Research 14: R1-R4.

論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.14.R1


 これまでアルゴスシステムを使った衛星追跡でたくさんのオオハクチョウの移動経路が追跡されてきています。しかし,アルゴスシステムによる位置測定は誤差が大きく,地球規模の渡りの追跡には有用ですが,越冬地内の動きなど詳細な追跡には向いていません。鳥インフルエンザの対策や風力発電施設のオオハクチョウへの影響を検討するためには,詳細なデータが求められています。今回明らかにすることができた渡り経路や越冬地や中継地内での移動状況の情報はそうした面で有用なデータになると思います。

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乱暴者テツオ

図3 オオハクチョウ「テツオ」の渡り経路

 テツオはさらに北上し,サハリン南部まで達しました(図3)。しかし,ここからは携帯電話の圏外にでてしまい,追跡することができなくなりました。
 このGPS発信機は携帯圏外にでても,GPSによる位置情報を蓄え続け,圏内に戻ってくると,それを送信してくれる仕組みになっています。「秋になって日本に帰ってくれば,繁殖地や渡りの経路もわかるね」と期待していたのですが・・・,いつまでたってもデータは送られてきません。そしてデータよりも先にテツオの目撃情報が届きました。送ってもらった写真を見ると,首環はついているのに,なんとGPSが外れてしまっています。この発信機の製造者のLeeさんに聞くと,今までたくさんのハクチョウが追跡されているけど,そんな事例はなかったとのこと。テツオのパワーおそるべし。

WANTED

 残念ながらサハリン以降の移動経路の情報を回収することはできませんでしたが,元気で日本に帰ってきてくれたのはうれしい限りです。さらに首環がついているので,目視記録で今年の越冬地や渡りもわかるかもしれません。テツオを見かけましたら,ぜひ,植田までお知らせ下さい。

mj-ueta@bird-research.jp

2017年秋,蕪栗沼で目撃された「テツオ」(狩野博美氏 撮影)。灰色の首環がついていて,GPSが取れた部分がオレンジ色になっている