近年,これまでは冬鳥だったジョウビタキが各地で繁殖するようになっています。北海道で繁殖するジョウビタキは「山の鳥」のようですが,本州で繁殖するジョウビタキは,人の近くで繁殖する鳥です。ポストの中や家の隙間などに営巣します。そのため,同じような場所に生息するシジュウカラと巣場所が競合することがあるようです。そこで,山路さんたちは,ジョウビタキとシジュウカラで選ぶ巣穴の特性が違うかを調べました。
山路公紀・石井華香 (2023) ジョウビタキとシジュウカラの営巣場所における巣からの視界の違い.Bird Research 19: A11-A20.
論文の閲覧:https://doi.org/10.11211/birdresearch.19.A11
山路さんたちは,ジョウビタキのみが利用したポストや巣箱,両種が利用したもの,シジュウカラのみが利用ものの3グループに分け,巣内からの視界と営巣場所の構造的要素に着目して比較しました。その結果,両種の営巣の違いには巣からの視界が最も大きく影響していて,それが広い場所ではジョウビタキのみが利用し,狭くなると両種が利用し,さらに狭くなるとシジュウカラのみが利用していることがわかりました。
巣からの視界には,穴径や巣の深さなどが影響します。穴径が広ければ視界が広くなりますし,同じ穴径でも巣が浅くなればその分視界が広くなるからです。そのためか,ジョウビタキは深い巣穴では巣材を高く積み上げて,巣の高さを高くして営巣し,またシジュウカラが営巣して,巣が浅くなってから,その上に営巣した例も3例あったそうです。ジョウビタキは深い巣箱の利用率が低いという情報もあり(楠ほか 2022),このあたりは,ジョウビタキの利用率の高い巣箱をつくるうえで参考になりそうですね。
引用文献
楠なづな・楠ゆずは・楠まどか (2022) 伯耆大山山麓におけるジョウビタキ Phoenicurus auroreus の繁殖と3タイプの巣箱の利用状況.Strix 38: 107-114.