バードリサーチの設立とともにスタートした季節前線ウォッチは17年目を迎えました。これまで16種の鳥たちをモニタリングしてきましたが,2021年,新たに2種の鳥が加わりました。ツツドリそしてノビタキです。これらの鳥も加わった季節前線ウォッチの情報収集にご参加ください。
東アジアの季節前線ウォッチがスタート
季節前線ウォッチでは身近で識別のしやすい鳥を対象としてきました。対象にツツドリとノビタキが加わると聞いてちょっと違った感じを受けた方もいるのではないでしょうか? いずれも身近な感じではないですし,ノビタキは識別的にも中級者向けですから…。実はこれらは国外からのリクエストで加えたものなのです。
季節前線ウォッチは2016年からロシア語ページをつくって,北海道から先の季節前線を追おうと,サハリンや北方4島のデータも集めていました。そして,今年からは対象範囲を大きく広げて,東アジアの季節前線ウォッチを目指すことになりました。まだ中国の野鳥団体であるHong Kong Bird Watching Societyや朱雀会などと協力しながらの試験段階ですが,中国語,韓国語のページもオープンして情報収集をはじめました。そんな中,よく見聞きする鳥なので加えてほしいと対象種としてリクエストされたのがこの2種なのです。また日本ではあまり適した対象ではないので,日本の季節前線ウォッチのページには出していませんが,ジョウビタキとルリビタキの「春の初認」調査も国外では行なうことになりました(秋の調査ではルリビタキを日本の対象に加える予定です)。
調査範囲をアジアへと広げたことで,季節の進行が日本よりも大陸側の方が早そうなことなど見えつつありますし,今後,渡り経路などいろいろなことがわかってくるのではないかと期待しています。
追加された対象種
・ツツドリ
九州以北の山地に生息し,ムシクイ類などに托卵します。日本へはカッコウやホトトギスより早い4月下旬から5月上旬に渡来します。托卵相手も夏鳥で,より寒い山地に生息するにも関わらず早く渡来するのはちょっと不思議で,大陸側での初認時期などわかってくるとそのあたりのヒントも得られるのでは,とちょっと期待しています。
鳴き声図鑑:https://db3.bird-research.jp/saezuri/birdsong/detail/43
・ノビタキ
北海道に夏鳥として渡来し,本州では標高の高い高原でのみ繁殖します。以前は西日本の高原にも分布していましたが,2010年代の繁殖分布調査では記録されていません。
ジオロケータを使った調査では北海道石狩平野のノビタキは,秋の渡りでは本州を経由せずに直接大陸へと渡ることが明らかにされています(先崎 2016)。春の渡り経路はわかっていませんが,季節前線ウォッチの初認のパターンから,渡りの動きのヒントも得られるかもしれません。
鳴き声図鑑:https://db3.bird-research.jp/saezuri/birdsong/detail/80
今後,アジアでの季節前線ウォッチはモンゴルなどへも拡げていく予定です。対象種も増えてくると思いますが,この2種の情報を含め,引き続き,調査へのご参加よろしくお願いします。
季節前線ウォッチ:https://www.bird-research.jp/1_katsudo/kisetu/index_kisetsu.html