3月になりました。留鳥の繁殖活動が活発になる時期です。先週,秩父に行っていたのですが,カワガラスが巣材を運んだり,となりのつがいと争ったりしていました。季節前線ウォッチにもウグイスの初鳴き情報が続々と届いていて,さえずりが活発になってきたようです。
ほとんどの鳥は,雄だけがさえずります。その理由の1つはさえずりが雌のつがい相手選択に使われているためです。複雑な声で鳴く雄のほうが雌につがい相手に選ばれたり,早くから鳴く雄が選ばれたりするということが知られています。
ただ,さえずりの機能は雌を呼ぶことだけではありません。なわばり防衛の機能もあります。それを考えると,雄だけでなく雌もさえずって良いように思います。ルリオーストラリアムシクイ Malurus cyaneus は雌もさえずる鳥ですが,この鳥の研究から,雌がさえずることで,卵やヒナの捕食が増えてしまい,それが雌のさえずりを制限している可能性が見えてきました。
オーストラリアのKleindorferさんたちは,ルリオーストラリアムシクイのさえずり行動と卵やヒナの捕食率について調べました。その結果,捕食されるかどうかと雄のさえずり頻度には関係性はありませんでしたが,雌のさえずり頻度については,よくさえずる雌の方が捕食されやすいという関係がありました。雌は抱卵や抱雛など,巣にいることが多いので,雌がさえずって目立つことにより巣に捕食者を誘引してしまうのだと考えられます。
つまり巣が捕食を受けることが多く,雌が多く抱卵したりする種では,雌がさえずることは不利になりそうです。逆に捕食されることの少ない種や雄の抱卵分担が多い種ではどうなのでしょう?またさえずりほどの音量はありませんが,地鳴きでも同様のことが言えそうですよね。雌の鳴き声やその生態にちょっと注意してみたいと思いました。