バードリサーチニュース

オオタカの子育てに何が起きているのか 2016–2025年アンケート調査から見えた変化

バードリサーチニュース 2026年5月: 2 【レポート,活動報告】
著者:守屋年史

オオタカの繁殖を全国で見守る

 オオタカは、かつて数が少なくなったことから、種の保存法に基づく「国内希少野生動植物種」に指定されていました。その後、個体数の回復傾向などを受けて、2017年9月に指定は解除されました。しかし、指定が解除されたからといって、もう調べなくてよいわけではありません。開発や森林の変化、人の立ち入りなどによって、繁殖状況が変わる可能性があるからです。

 そこで、2017年から2021年までは環境省とバードリサーチが共同で全国モニタリング調査を行い、2022年以降もバードリサーチがアンケート形式で調査を続けています。調査には、日本オオタカネットワークの関係者や、地域でオオタカの営巣を見守っている人たちが参加しています。

 今回の報告では、2016年から2025年までの記録を整理しました。全体では599営巣地、1,330件の記録があり、そのうち「成功」または「失敗」がはっきり分かる904件を中心に分析しています。成功は641件、失敗は263件で、単純に計算すると成功率は約71%でした。ただし、年ごとに見ると、この成功率は大きく変化していました(表1)。

表1:2016–2025 年の繁殖成否の内訳(n=1330)表1︓2016–2025 年の繁殖成否の内訳(n=1330)

繁殖成功率は近年低下している

 オオタカの繁殖成功率は2016年と2017年には80%前後でした(図1)。その後、2018年から2023年までは70%前後で推移していましたが、2024年に57.8%、2025年には49.2%まで下がり、2023年から2024年の間で落ち込みが特に大きい(-12.29ポイント)ことが分かります(表2)。

  図1:繁殖成功率の経年変化(2016-2025 年)95%信頼区間

 2016年は74件中60件が成功、2017年は71件中59件が成功していました(表2)。一方、2025年は63件中31件の成功にとどまり、成功と失敗がほぼ半々に近い状態になっています。全体として低下傾向にあり、特に直近2年で大きく減少していることが確認されました。

表2:繁殖成功巣の件数と成功率

 詳細な解析では、年々「繁殖成功のしやすさ』が約12%ずつ低下していたこともわかりました。これは繁殖成功率の結果そのものが毎年12ポイント下がるという意味ではありません。実際の繁殖成功率は、図1のように年によって上下しながら全体として低下する傾向を示しており、あくまで繁殖成功のしやすさが減少しているという意味です。

ヒナの数は「成功した巣」では大きく減っていない

 次に、巣立ったヒナの数を調べています(表3、図2)。重要なのは、「成功した巣だけで見た平均ヒナ数」と、「失敗した巣を0羽として含めた平均ヒナ数」の比較です。図2では、青の線が成功した巣だけの平均、橙の線が失敗も含めた全巣の平均です。成功した巣だけを見ると、多くの年で平均2羽前後のヒナが巣立っています。つまり、いったん繁殖に成功した巣では、育つヒナの数は大きくは崩れていません。一方、失敗した巣を0羽として含めると、平均巣立ちヒナ数は下がっています。2016年は全巣平均で1.69羽でしたが、2025年には0.83羽まで下がりました。これは、成功した巣の中でヒナが少なくなったというよりも、そもそも繁殖に失敗する巣が増えたためだと考えられます。

表3:年別の巣⽴ちヒナ数と成功巣あたり巣⽴ち数(2016-2025 年)

図2:平均巣⽴ちヒナ数の経年変化(2016-2025 年)
 ⻘:繁殖成功した巣のみ、橙:全巣(失敗した巣0 ⽻を含む)帯:95%信頼区間

 さらに図3では、5年以上記録がある営巣地だけを対象に、営巣場所の違いを考慮してヒナ数の変化を見ています。これは営巣地によって、もともとヒナが巣立ちやすい場所と、そうでない場所があります。そのため、単純に年ごとの平均を比べるだけでは、年の変化なのか、調査した場所の違いなのか分かりにくくなります。そこで、この解析(TRIM解析)では、営巣地ごとの違いを差し引いたうえで、巣立ちヒナ数が年ごとにどう変化したかを調べました。2016年を100%とすると、2025年にはおよそ半分ほどまで下がっており、営巣地の違いを含めて見ても、巣立ちヒナ数が低下していることが示されています。

         図3:TRIM 解析による巣⽴ちヒナ数指数の経年変化(2016-2025 年)                           基準年(2016)=100%、5 年以上モニタリングされた営巣地(n=75 地点)    帯:95%信頼区間

失敗は繁殖の早い時期に多い

 繁殖がうまくいかなかった理由として表4を見ると、失敗が確認された263件のうち、未記入・不明が78件ありますが、理由が分かるものでは「求愛・造巣期」や「抱卵期」など、繁殖の早い段階での失敗が多いことが分かりました。これは、巣を作る時期や卵を温める時期に、オオタカが特に影響を受けやすいことを示している可能性があります。たとえば、人が営巣林に近づく、工事や伐採が行われる、カラスなどに妨害される、ペアが安定しない、といったことが繁殖初期の失敗につながるかもしれません。

表4:繁殖ステージ別の失敗時期(2016-2025 年:n=263)

 表5では、失敗要因の分類が示されています。ただし、失敗263件のうち175件、つまり約3分の2は「不明・記載なし」でした。そのため、原因をはっきり断定することはできません。理由が書かれていた事例では、開発・工事・伐採などの人為的なかく乱、カラスやヘビなどによる捕食・妨害、落巣などが挙げられていました。

表5:繁殖失敗要因の分類(2016-2025 年:n=263)

 

 今回の調査から、オオタカの繁殖状況は近年悪化している可能性が見えてきました。特に2024年と2025年と急激に低下しており、気象、餌の量、人の活動、調査地の違いなどを含めて、現地調査などでさらに詳しく調べる必要がると考えています。また、繁殖初期の失敗が多く、繁殖初期の営巣地周辺では、頻繁な立ち入りを避けることが、やはり保全では重要であることが分かりました。