19巻最後の論文が公開されました。渡辺さんのムナグロが芝草地を夜に利用していたという論文です。
渡辺朝一 (2023) 春秋の渡り期におけるムナグロの水田から芝草地への夕刻の移動.Bird Research 19: S27-S34.
論文の閲覧:https://doi.org/10.11211/birdresearch.19.S27
渡辺さんは,これまでも,埼玉の大久保農耕地で,ムナグロの採食生態などを研究してきましたが(渡辺 1991, 2006),その調査の中で,夕方になると,ムナグロが水田から公園やゴルフ場などの芝草地へと移動していることに気づき,その移動状況を調査しました。
春は,湛水/田植えなどの農作業がはじまり,ムナグロにとって良い生息地ができると,夜間も水田にとどまって,芝草地に移動しないムナグロも出て来るものの,水田があまりよい生息地でないと考えられるそれ以前の時期や秋期は,夜間になるとその多くが芝草地に移動していると考えられました。そして,ナイトスコープを使って夜間の芝草地でのムナグロの行動を観察すると,そのほとんどが採食をしていることがわかり,芝草地が夜間の重要な採食地になっていると考えられました。
でも,なぜ夜間に芝草地を利用するのでしょうか? 日中は人がいて落ち着かないのでしょうか? それとも芝草地で食べているもの(昆虫?)が夜になると捕りやすくなるのでしょうか? そのあたりも知りたいですね。
渡辺朝一 (1991) 埼玉県大久保農耕地におけるムナグロの渡来状況.Strix 10: 107-114.
渡辺朝一 (2006) 春期の水田における農作業進行状態の違いに対するムナグロの採食行動・食物内容の変化.Strix 24: 23-30.