バードリサーチニュース

生態図鑑 センダイムシクイ

バードリサーチニュース 2023年11月: 3 【生態図鑑】
著者:川路則友

○英名 Eastern Crowned Leaf Warbler     
○学名 Phylloscopus coronatus
○分類 スズメ目 ムシクイ科

センダイムシクイ(撮影:黒田治男)

○羽色
 雌雄同色.体上面はやや明るいオリーブ緑色を帯び,翼には明瞭な黄白色の翼帯が見られる.下面は白っぽいが,ところどころ黄色味が交じる.頭部は背面よりやや暗いオリーブ色を帯び,長い黄白色の眉斑,暗褐色の過眼線がある.頭頂部に淡い白色の頭央線があるのが特徴である.

○鳴き声
 さえずりとしてもっともよく知られているのは,「チヨチヨビーッ」という声で,「焼酎一杯ぐいーっ」「鶴千代君~」などと聞きなしされているのはあまりにも有名.しかし,北海道では渡来後数日すると多くの個体が,「チヨチヨチヨ」「チーチョイチョイチョイ」「チーチヨ,チーチヨ,チーチヨ」「フィンチ,フィンチ,フィンチ」など複雑な声を出し始める.「フィッ,フィッ」や「キキキキーッ」といった警戒声も出す.

典型的なさえずり


それ以外のさえずり


○卵
 卵はほぼ白色で,大きさは長径1.6cm,短径1.3cmほど.本州では一腹卵数が4-6個と言われているが,札幌では,2-8個で,平均は6.4個.7個の巣が最も多い.この差は,札幌市が本州より緯度が高いためと考えられるが,本州以南の情報が少ないため,さらなる調査が必要がある.抱卵途中で失敗してやり直したと思われる例を除き,一繁殖期内で複数回繁殖した例はなかった.

○ツツドリとの攻防
 センダイムシクイは,ツツドリによく托卵される種として知られている.また北海道では,本州以南と異なり,ツツドリが赤褐色無斑の卵を産み込むのが特徴的である.札幌では托卵率は平均は16.3%であった.ツツドリヒナのふ化日は,同じ巣内のセンダイムシクイヒナよりも早いものや同日,やや遅いものもあったが,ほとんどがふ化後,センダイムシクイの卵やヒナを巣外へ排出し,巣を独占する.巣に座っているメス親は自分の卵やヒナが押し出されても,それをじっと見ているだけで,阻止しようとしない.
 抱卵中の巣の1mほど手前にツツドリの剥製を置いたところ,巣からメスが飛び出してきて,激しく剥製の頭部などを突くなどの攻撃を見せることから,センダイムシクイは,ツツドリ成鳥を托卵される相手としてしっかり認識し,拒絶していると考えられた.しかし,いったん巣内でふ化し,大きく成長していくツツドリヒナには違和感を持つことなく巣立たせる.托卵した巣のうち,ツツドリのヒナが巣立った割合は36.4%であった.

◆その他掲載記事
 ・全長,自然翼長,尾長,露出嘴峰長,ふしょ長,体重
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 ・繁殖システム
 ・巣
 ・抱卵と,育雛期間,巣立ち率
 ・食性と採食行動
 ・渡り

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