バードリサーチニュース

イワヒバリの生息確認調査に参加しませんか?

バードリサーチニュース 2023年7月: 2 【参加型調査】
著者:高木憲太郎

図1.標高1500m以上の東北から中部山岳までの山について、山頂から半径2.5kmの範囲でイワヒバリの目撃情報が得られている山とそうでない山における同範囲の裸地面積の比較。

 イワヒバリは、高山帯の岩場の岩の隙間などに営巣し、高山帯に滞在して繁殖する鳥です。バードリサーチでは、昨年の7月から目撃情報の収集をはじめ、登山記録サイトの写真の投稿をチェックして得られた目撃情報と合わせてこれまでに1317件の目撃情報を収集しました。
 この情報を使って、イワヒバリが生息する山の特徴を分析してみました。国土地理院がまとめている「 日本の山岳標高一覧 -1003山- 」に記載されている山のうち、標高1500m以上の東北から中部山岳までの山について、山頂から半径2.5kmの範囲でイワヒバリの目撃情報が得られている山とそうでない山を比較します。すると、イワヒバリが目撃されている山は、そうでない山よりも裸地面積が広い傾向がありました(図1)。目撃された山と同じような環境がある山でも、目撃情報が得られていない山や、岩場の面積が広くないにもかかわらずイワヒバリが目撃されている山もありました。

 そこで、目撃情報が寄せられていないものの、これまでの目撃情報に照らして、生息している可能性がある山をピックアップし、現地調査により生息の確認をすることにしました。ひとりで調べられる山には限りがあります。ぜひ、調査にご協力ください。詳細は、下記の調査概要でご確認下さい。

イワヒバリとカヤクグリ

イワヒバリ(左)とカヤクグリ。どちらも高山帯に生息するが、イワヒバリは岩場や雪渓など開けた場所を、カヤクグリはハイマツなどの低木からあまり離れずに行動する。

 イワヒバリの主な分布域は東北から中部山岳にかけての高山帯です。開けた岩場に生息し、まばらにハイマツ等の植物が生えている環境にも生息しています。ほとんどハイマツにもとまらず地面や雪渓の上で吹き上げられてきた小さな虫などを探して食べています。複数のオスと複数のメスがグループで繁殖し、オスもメスもさえずります。さえずりは4kHzを中心に2~6kHzと高い音から低い音まで幅広く使った声で、一音ずつの区切がカヤクグリやミソサザイよりもはっきり感じられます。
 同じ高山帯でみられるカヤクグリは、主にハイマツ帯に生息しています。ハイマツのまわりをウロチョロして、その上でさえずっていることが多く、開けた場所にいるイワヒバリよりも姿は見つけにくいです。ハイマツがまばらに生えている環境などでは両種が同所的に生息しているので注意が必要です。「チリリリ」 「チリリリ、チャリ」などと高い声(6kHzほど)で鈴が鳴るように鳴き、イワヒバリとは声が違いますが、慣れないと聞き分けるのは難しいかもしれません。
 このほかに、登山者に間違えられることの多い鳥がミソサザイです。標高3000mぐらいの山頂にはさすがにいないと思いますが、もっと標高が低い場所だと、岩の上でさえずっている姿を見つけて、イワヒバリと誤認されるようです。

冬に下山するイワヒバリは意外と近くまで来てるかも

図2.季節別のイワヒバリの目撃情報の分布。

 高山帯で繁殖するイワヒバリですが、雪が積もり寒さが厳しくなる冬には、低山におりてくると言われています。冬季の情報は限られるので、傾向などの分析はできませんが、人の目が多い関東では低山での目撃情報が少しだけ得られています(図2)。春や夏に目撃される山からだいぶ離れた場所の目撃情報もあり、群馬県の榛名山の東、標高1194mの水沢山でも冬季に観察されています。最も近い夏の繁殖地の浅間山からは30km以上離れていました。冬は意外と近くまで下りて来ているのかもしれません。



参加型調査の概要

 イワヒバリの生息の有無を調査してくれる会員の方を募集します。各自で調査対象リストの山に登山に出かけて調査していただきますので、登山経験があること、カヤクグリやミソサザイなどとの識別ができることが前提です。
 イワヒバリを野外で観察したことがない方でも、調査前にイワヒバリが良く観察される山に登り、識別について問題ないことを確認をしていただければ大丈夫です。イワヒバリには、頭部の灰色、嘴の淡黄色の斑、黒い雨覆の先端の白斑、腹側の赤褐色が鮮やかであるなど、全体的にカヤクグリよりも目立つ外見上の特徴がありますが、距離が遠いと厳しいかもしれません。上記のように鳴き声にも違いがあります。ただ、声の系統は似ているのでご注意を。バードウォッチングをある程度経験している方向けの調査です。
 リストにある山の中には、難易度が高い山もありますので、ご自身の登山の経験を踏まえて、実力にあった場所を選んでください。交通費全額をまかなえる調査費をお支払いできないので、遠方の山を選ばれるときは自費負担にご注意ください。
 調査は登山をしながら周囲に気を配り発見したイワヒバリの個体数を記録してもらいます。ルートの設定は参加者にお任せしますが、イワヒバリが生息する岩場を1時間以上かけて通過ないしは滞在するルート設定にしていただきます。ご協力いただける方には、交通費の補助として、1か所あたり2万円~3万円をお支払いします。

ご協力いただける方は、希望する山(複数可)の名前を添えて、高木までメールでご連絡ください。

———————————————–

  • 参加条件: バードリサーチ会員
          2,000mクラスの山への登山経験があること
          イワヒバリの識別が可能であること
  • 調査期間: 2023年9月30日まで
  • 調査方法: イワヒバリが生息していそうな岩場の環境を1時間以上
          かけて通過または滞在し、イワヒバリの発見に努める。
          イワヒバリを発見したら、山道を外れずに可能な範囲で
          追跡し、群れの個体数を記録する。
          地図上にイワヒバリがいた地点をプロットする。
          環境写真の撮影(スマホカメラ可)、観察メモ記録。 
  • 参加手順: リストから希望する山(複数可)の名前を添えて、
          高木(takagi@bird-research.jp)までメールしてください。
           ↓
          高木から調査をお願いする山について、メールでお返事します。
          その際、調査に使用していただく地図をお送りします。
           ↓
          登山ルートやコースタイムの確認、登山計画書の作成、保険加入
           ↓
          調査対象となった山に登山( ~9月30日まで)
           ↓
          上記調査方法で調査を実施して下山
           ↓
          位置をプロットした地図、環境写真のファイルを添付して、
          イワヒバリの確認の有無、個体数、観察メモをメール本文に
          記載して報告。(9月末日まで)
          調査費の請求。
           ↓
          バードリサーチから調査費のお支払い
           ↓
          オンライン報告会に参加(10月)
  • 費用負担: 登山口までの移動、車の駐車場代、山小屋宿泊費、登山保険等は
          各自で負担ください。
          1か所あたり、定額で調査費をお支払いします。
          通常:20,000円
          (応相談:山頂などの山小屋に宿泊の場合等:30,000円)

———————————————–

調査対象の山(リンクは登山記録サイト「ヤマレコ」より)

※下記の山で、イワヒバリを目撃したことがある方はお知らせください。
※また、複数回登山されていて、イワヒバリがいないと言える山がありましたら、お知らせください。

八甲田山(青森)
秋田焼山(秋田)
秋田駒ヶ岳(秋田)
以東岳(山形/新潟)
大朝日岳(山形)
磐梯山(福島)
守門岳(新潟)
会津駒ヶ岳(福島)
中ノ岳(新潟)
巻機山(群馬/新潟)
朝日岳(群馬/新潟

■イワヒバリの目撃情報の収集にもご協力ください。
http://www.bird-research.jp/1_katsudo/iwahibari/

 


 

 この調査の実施には、バードリサーチ調査研究支援プロジェクト(2022年度)において、たくさんの方からご支援をいただいています。

 また、株式会社モンベルより、寄付つきTシャツとサポートカードによるご支援をいただいています。高山の鳥をデザインしたTシャツの購入が、調査活動への支援になります。オンラインでの購入も可能なので、ぜひご検討ください。詳しくは下記ホームページのリンクからモンベルオンラインショップでご確認ください。

■モンベルの寄付つきTシャツを買って活動を支援する

https://www.bird-research.jp/1_kifu/sonota.html#Tshirt

 

Print Friendly, PDF & Email