バードリサーチニュース

高山帯鳥類調査第2弾 イワヒバリを探せ!!

バードリサーチニュース 2022年7月: 3 【参加型調査】
著者:高木憲太郎

 鳥の図鑑の中には、生息している標高が図で示されていることがあります。中部山岳では高山帯に生息している鳥が、北海道では低山にもいるということが示されているのですが、しかし、どの鳥がどの山のどの標高にいるのかは、実はあまりわかっていません。車でささっと行って調べることができる平地と違い、高山帯に生息している鳥の状況を調査するのは準備と時間がかかるので、こうした鳥たちの情報は不足しがちです。

 そこで、高山帯の鳥のモニタリング体制を作っていくために、手始めとして2017年に識別のしやすいホシガラスを対象に登山者に声をかけて情報収集する調査を開始しました。ホシガラスは亜高山帯の森林に営巣し、高山帯にはハイマツの球果を求めてやってくる鳥ですが、目撃情報は開けた環境である高山帯に集中しました。この発見率の違いがネックになり、ホシガラスの生息適地の分析は頓挫していますが、当初の目的であった登山者に目撃情報を寄せてもらうという点では、多くの情報を送ってもらうことができ、ホシガラスが北海道から九州まで多くの山に生息しており、彼らに当面絶滅の心配はないことがわかりました。

イワヒバリ Photo by 星野雄軌

 しかし、高山帯の鳥にはより限られた環境に生息していたり、個体数が少ないと思われる鳥がいます。その一つがイワヒバリです。イワヒバリは、高山帯の岩場の岩の隙間などに営巣し、高山帯に滞在して繁殖する鳥です。山頂まで樹木に覆われた山には生息していません。そのため、ホシガラスよりも分布域が限られ、個体数も少ない可能性が考えられます。そのため、彼らの分布情報を多く得ることは、彼らの生息状況の把握や保全にとってより重要度が高いと考え、コロナウイルス感染症の状況を考えて延期してきていたイワヒバリの目撃情報の収集をこの夏から開始することにしました。

 

イワヒバリ目撃情報投稿フォーム。調査への参加は、山に登り、観察した日時や場所を報告する簡単なものです。

 イワヒバリは高山帯の岩場や雪渓に生息しており、岩の窪みにできた水場で水浴びをしたり、数羽で追いかけっこをしたり、時には足元までやってくることもあるため、名前は知らなくても登山者にはお馴染みの鳥です。しかし、識別難度はホシガラスに比べると格段に上がり、生息環境の周辺にはカヤクグリなど誤認する可能性のある鳥も生息しています。岩の上でさえずっていることがあるミソサザイも登山者に間違われることがあります。そのため集まった情報の中にはイワヒバリではない記録も含まれると思いますが、まずはより多くの情報を集めることで、イワヒバリの生息している可能性のある山を洗い出したいと思っています。
 ぜひ、鳥の観察に慣れた皆さんにも、山へ足を運んでいただき、イワヒバリの目撃情報を寄せていただけると嬉しいです。ただ、新型コロナウイルス感染症の第7波がきていますので、健康管理や感染拡大防止にはくれぐれもご配慮いただき、無理のないようにご協力ください。目撃情報の報告は、下記URLのホームページのフォームからお願いします。過去の記録も大歓迎です。

■参加型調査「イワヒバリを探せ!!」
http://www.bird-research.jp/1_katsudo/iwahibari/index.html

 

登山記録サイトから収集したイワヒバリの目撃情報の分布図

 登山した記録を投稿するWebサイトがいくつかあります。投稿された登山記録を見ると、イワヒバリの写真が出てきます。コロナ禍にあってイワヒバリの調査開始を延期していた期間に会員の嶋徹さんに協力していただき、予備調査として登山サイトの投稿を調査しました。そうして得られた情報のうち2017年から2019年の3年間の1085件の目撃情報をホームページで公開しました。
 この情報を参考に登山に出かけ、記録のない山を目指して穴埋めをしていただけるとうれしいです。記録が少ないのは東北です。岩手県の焼石岳、山形県の鳥海山、宮城県の刈田岳、福島県の安達太良山、新潟県境の飯豊山と烏帽子岳のみです。中部山岳の山々もみっしり記録があるように見えますが、地図を拡大していくと同じように続く山脈でも記録がない山があります(登山コースとして難易度が高いところもあるので、無理のないようにしてください。)。
 もちろん、記録のある山の情報を厚くしていただくのも、大歓迎です。この調査の次のステップとして、いくつかのモデルとなる山で現地調査を行い生息密度や環境選択を調べ、環境面積と比較することで個体数の推定ができたらと考えていますので、情報は多いほど助かります。

■イワヒバリの分布状況
http://www.bird-research.jp/1_katsudo/iwahibari/bunpu.html

 


 

 この調査の実施には、株式会社モンベルのご協力をいただいています。また、寄付つきTシャツとサポートカードによるご支援もいただいています。高山の鳥をデザインしたTシャツの購入が、調査活動への支援になります。オンラインでの購入も可能なので、ぜひご検討ください。詳しくは下記ホームページのリンクからモンベルオンラインショップでご確認ください。

■モンベルの寄付つきTシャツを買って活動を支援する
http://www.bird-research.jp/1_katsudo/iwahibari/index.html

 

 

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