新型コロナウィルス感染症は落ち着きつつありますが、海外では変異株が猛威を振るっていて、まだ油断はできません。長いですねぇ。しばらく仲間と集まって調査や研究について話す機会が減ったからでしょうか。今年度は大学に所属している方以外からの応募が少ない傾向がありました。それでも、数は少ないなりによく練られた調査や研究が集まりました。一次審査を経て支援対象に選ばれた10件の調査研究プランをご紹介します。皆さまにご支援いただける調査や研究がひとつでも多くあればと願っています。
一次審査を経て、10件の調査研究プランが決まる
2021年9月~10月に支援先となる調査研究プランの募集を行ない、12件の調査研究プランが集まりました。その中から支援先を決定するため、上田恵介立教大学名誉教授、金井裕日本野鳥の会参与、出口智広兵庫県立大学准教授、水田拓山階鳥類研究所保全研究室長、植田睦之バードリサーチ代表の5名で一次審査を行なったところ、9件が選定されました。この9件にバードリサーチからの1件を加えた10件の調査研究プランが今年度の支援対象です。
支援(寄付&投票)対象に選ばれた調査研究プラン
今年は、渡りや季節移動に関するものや、環境選択に関する調査研究プランが多く支援対象に選ばれました。また面白いことに、ダイトウコノハズク、リュウキュウオオコノハズク、アオバズクを対象としたものが並ぶことになりました。その他、鳥たちの保全に関するものや、音声の研究などの調査研究プランが選ばれています。下記の概要をお読みいただき、より詳しく知りたいと思う調査研究プランがありましたら、タイトルをクリックしてPDFをご覧ください。
ホームページには10件分全部をまとめたPDFもあります。
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001 北海道のアカモズがすみやすい環境は?
-アカモズの保全に配慮した森林管理の提案へ-
北沢宗大1,2・市川伸2・青木大輔1,2・先崎理之1,2
(1.北海道大学大学院 2.日本渡り鳥保全・研究グループ)
生息地が限られているアカモズ。北海道では国有林や道有林に生息していますが、そこには天然林が残るほか、樹齢の異なる植栽林が存在しています。北沢さんたちは、森林内をくまなく調査しアカモズがどの樹林にいるかを調べます。アカモズの環境選択を考えると若齢植栽林を好んでいそうですが、はたして実際はどうでしょうか?得られた成果をもとに、アカモズの保全に配慮した実現可能な森林管理の提案をまとめ、林野庁などに働きかけることも視野に取り組んでいきます。
002 謎多き鳥、ケリの渡りの解明-標識とGPSロガーを用いた追跡-
小丸奏(岐阜大学応用生物科部4年)
一年中いるけど季節によって個体数が変動していたり、渡りの季節に海峡を越えて飛んでいるのが観察される鳥がいます。こうした鳥は国内で小さな渡りをしている可能性がありますが、いわゆる渡り鳥に比べると、実は研究はあまり進んでいません。小丸さんはこうした鳥のひとつであるケリを対象に、個体数調査に加え、足環標識とGPSロガーを用いた調査でその実態に迫ります。
003 新しい渡り鳥調査手法-夜に渡る鳥の識別とカウント-
原星一
小鳥やカモ類など夜に渡る鳥は数多くいます。船舶レーダーなどを使ってその様子を捉える方法もありますが、しかし、種を識別することはできません。原さんは、津軽半島の北端に街灯の光で夜に渡っている鳥が識別できるポイントを見つけたことで、どんな鳥が渡っているのか調べられることを発見しました。夜の渡り鳥を種まで特定する手法を確立することができたら・・・ワクワクしますね。
004 メジロは何をしゃべっているのか?
-メジロの音声言語と混群構成種との関係-
近藤雅也(名城大学農学研究科1年)
近藤さんは、メジロの鳴き声にチーのほかにキュルキュルと連続した声があること、警戒声にあたる声を持っていそうにないこと、カラ類などと混群をつくることに着目し、メジロの持つ声の機能を明らかにしようと考えています。混群形成専用の声を持っていたり、他種の警戒声を借用していたり、なんてことがあったら面白いですね。
005 「ゴキブリの味はママの味!?」
-餌の好みは親からもらった餌で決まる?-
金杉尚紀1・白岩颯1・佐々木瑠太2・中村晴歌1・澤田明3
(1.北大 2.立教大 3.国環研学振PD)
学習は遺伝に寄らず親から子に行動を受け継ぐことを可能にします。どんなものを自分の食べ物として捕まえるかという選択は、学習によって受け継がれているのではないかと金杉さんたちは考え、大東島のリュウキュウコノハズクを対象に、餌の好みが親子間で似ているかどうか調査する計画です。
006 コウノトリは幼鳥の事故が多発中!
-親元から旅立つまでの行動圏と期間を市民観察者との共同調査で解明したい!-
伊﨑実那(兵庫県立大院博士後期課程2年)
野生復帰の取り組みが始められて約15年、繁殖環境と採食環境の整備の甲斐あって260羽が生息するまでになったコウノトリ。順調な歩みの陰で140件にものぼる防獣ネットへの絡まりや電線への衝突などの事故が起きています。特に若鳥で事故が多発していることに着目した伊﨑さんは、市民の参加も得ながら事故が起きやすい若鳥の行動範囲や時期を特定し、地図上で事故要因と重ね合わせて、優先的に対処すべき対策を絞り込み、具体的な対策につなげようと調査計画を立てています。
007 リュウキュウオオコノハズクは都市で生きられるか
-適切な保全に向けた基礎生態の解明-
島嶼鳥学研究会 熊谷隼1・江指万里1・宮城国太郎2
(1.北大・院・理 2.沖縄野鳥の会)
分かっていないことが多い夜行性の鳥類。沖縄にのみ生息する固有亜種のリュウキュウオオコノハズクもそんな鳥のひとつです。島嶼鳥学研究会の熊谷さんたちは、沖縄本島南部の都市部でも観察されることがある本種の分布を明らかにするとともに、生息が確認された地域に巣箱を設置して繁殖行動を含めた基礎生態を調査し、都市部で繁殖する本種の謎に迫ります。
008 アオバズクの渡り戦略における島嶼の重要性の検証
竹田山原楽1,2・細谷淳2・塩見こずえ1・田谷昌仁1
(1.東北大学生命科学研究科 2.日本鳥類標識協会)
渡りをするフクロウの仲間、アオバズク。いったいどんな渡りをしているのでしょう?渡り経路として沖縄-台湾-フィリピンを通るルートが考えられていますが、これらの島々を中継地として利用しながら渡っているのでしょうか?もしそうだとしたら、中継地ではどんな環境を利用しているのか・・・。竹田さんたちは東北の雑木林でアオバズクを捕獲し、GPSロガーによる追跡を試みます。
009 九州で冬を越すツバメの分布と利用環境-気候と土地利用に焦点をあてて-
天野孝保(長崎大学大学院博士後期1年)
本来東南アジアで越冬するツバメですが、その一部が九州南部に残って越冬しています。しかし、その全貌は明らかになっていません。そこで、天野さんはまず九州南部のどこでツバメが越冬しているのか沿岸部に沿って探索調査を行い気候条件との比較や、スケールを変え流域スケールでツバメが採食している場所の特定とその場所の食物資源の調査を行い、本来より北の地で越冬できる要因を解明します。
010 みんなで作る「標識コハクチョウ名簿」
-カラーマーキング調査をロシアと共同実施-
バードリサーチ
ロシア北極圏のチャウン湾で繁殖するコハクチョウの標識調査をロシアの研究者のDiana Solovyevaさんが実施しています。ここで赤い首輪を装着されたコハクチョウは、日本にやってきて越冬します。多くの個体に首輪をつけることができれば、移動や繁殖開始年齢、死亡率などがわかってきます。バードリサーチでは、Dianaさんたちと共同で標識を行うとともに、標識個体の目撃情報を集めて分析する予定です。
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このプロジェクトは、皆さまの投票とご寄付によって成り立っています
ぜひ、頑張る調査者や研究者たちにお気持ちをお届けください。
調査研究支援プロジェクトでは、みなさんから寄付を募り、それをもとに鳥の調査や研究に対して支援を行ないます(図)。寄付していただく際は、応援したい支援先を選ぶことができます。鳥類の調査・研究をみんなで支え合いながら、発展させていける仕組みになればと思っています。ご協力、よろしくお願いいたします。
寄付&投票の方法は次の2通りです
クレジットカードで寄付を送る場合
下記のホームページをご覧ください.
http://www.bird-research.jp/1_event/aid/kifu-a.html
銀行または郵便局から寄付を送る場合
Step1.メールする.
次の情報を高木( br@bird-research.jp )宛てにメールでお伝えください.
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・お名前とご住所
・寄付口数
・支援する調査・研究プランと投票数
・あなたのお名前を支援先に伝えて良いかどうか
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Step2.お金を振り込む.
下記のホームページに掲載されているいずれかの口座に合計額を振り込んでください.
(振り込み手数料はご負担ください.)
http://www.bird-research.jp/1_event/aid/kifu-b.html