バードリサーチニュース

第4回インターネット・バードソン 2,308カ所で285種を観察 群れる小鳥はどこにいる?

バードリサーチニュース 2021年2月: 1 【活動報告】
著者:神山和夫

 インターネット・バードソンは、全国のバードウォッチャーが期間内に見聞きした野鳥の観察記録を、野鳥記録データベース「フィールドノート」に登録して種数を競う競技です。2021年1月1日~17日に開催した第4回大会には285名の方が参加して、2,308カ所で3,323回の野鳥観察が記録されました。バードソンで観察頻度の高かった種は表1をご覧ください。冬鳥ではツグミやジョウビタキの他、カモ類がよく見られました。

 

群れる小鳥は雪の少ない地方に多かった

 今回のバードソンのテーマは「小鳥の群れを調べよう」でした。はじめに、群れる小鳥が記録された地域を見てみましょう。バードソン期間より少し早めからですが、渡りの移動が落ち着くと思われる12月1日以降~1月20日までの記録で分布図を描いてみました。すると、アトリ、カワラヒワ、カシラダカ、スズメは比較的雪が少ない太平洋側や九州で記録されています。これらの小鳥たちは地上でエサを探すため、雪が積もらない地域が住みやすいのでしょう。しかし例年だと日本海側でもアトリの群れが報告されていますので、今年は年末からの寒波の影響があったのかもしれません。スズメは留鳥と言われていますが、鳥類繁殖分布調査で北海道南部に広く記録があるのに冬はほとんど確認されなくなることから、ある程度、南北方向の移動をしているものと考えられます。ムクドリも地上で採食するので北国には少なく、それに加えて都市部に多いという特徴がありました。マヒワは樹上性のため降雪の影響を受けにくいのか、日本海側や北海道でも大きな群れが観察されています。

図1.カワラヒワとスズメの分布。円サイズは、大:100羽以上、中:30-99羽、小:1-29羽。黒点は対象種がいなかった観察地点。

図2.マヒワとムクドリの分布。円サイズは、大50羽以上、中:20-49羽、小:1-19。黒点は対象種がいなかった観察地点。(マヒワ写真 三木敏史)

 

出現場所はどんな環境?

 多くの個体が集まる場所の環境を調べるため、GISソフトウエアを使って観察地点から半径約900m(緯度経度0.01度区間で地域によりやや距離が異なります[※1])に含まれる植生面積[※2]を分析しました。すると、アトリ、カシラダカ、スズメ、カワラヒワは農地の割合が高い場所で大きいな群れが記録されていることが分かりました。図3はアトリの個体数と農地面積の関係です。また、アトリは大きな群れを作るイメージがありますが、ほとんどの記録は数十羽以下でした。アトリは通常は分散して小数の群れで暮らしていて、広い水田のように餌(落ち籾)が豊富な環境があれば大群になることがあるのかもしれません。

 

図3.アトリ個体数と記録地点から半径約900mの円内に含まれる農地の比率との関係。

図4.記録地点から半径約900mの円に含まれる樹林の比率。

 森林面積の割合は群れの個体数に影響がないようでしたが、種による違いが見られました(図4)。農地と関係が深い前述の4種の中で、スズメは比較的、森林が少なく農地の割合が高い環境にいますが、他の3種はスズメと同じような環境から農地と森林が混在するような場所まで、幅広い環境で観察されていました。植生図には河川に特化した分類がないので分析結果には表れなかったのですが、カワラヒワはその名のとおり河原で観察されることも多いようでした。それから先に書いたように樹上で生活するマヒワは、他種に比べて樹木の多い場所で観察されました。一方、ムクドリはこれらの種とは生息環境が違っていて、観察地点の周囲は市街地の割合が高く、そして草地が広いほど大きな群れが記録されていました。実際の観察地点を見たところ、公園や河川敷などに多くの記録がありました。

 今回のバードソンでも、参加者の皆さんの観察記録から野鳥の生態が分かってきました。バードウォッチングの記録は、野鳥の研究と保護のための貴重なデータになります。バードソン以外の時期にもフィールドノートでバードウォッチングの記録をしていただけると分布データの蓄積ができますので、ご協力をお願いいたします。

※1.半径が緯経度0.01度の円内の植生を分析していますが、緯経度で定めた円の面積は地域により多少変化しますので、厳密な分析ではないことをご了承下さい。
※2. 環境省の5万分の1現存植生図(第2回・第3回自然環境保全基礎調査)。