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研究誌新着論文:ササゴイの繁殖成績と営巣樹種の変化

バードリサーチニュース 2020年11月: 4 【研究誌】
著者:植田睦之

獲物を狙うササゴイ(三木敏史)

現在ほぼ調査が終了し,とりまとめが佳境をむかえている「全国鳥類繁殖分布調査」では,1990年代に比べて小型のサギの多くが減少していることがわかっています。減少率が高い順に,アマサギ,コサギ,ゴイサギ,そしてササゴイです。ササゴイは減少率こそ一番低いですが,実はもっとも危機に瀕しているサギかもしれません。それは1970年代からの変化を見ると,アマサギ,コサギ,ゴイサギは1990年代にかけて一度増加した後に,減少に転じているのですが,ササゴイは1970年代から一貫して減少し続けているからです。
 こうしたサギ類に何が起きているかを明らかにするためには,何を食べているのか,繁殖成績はどれくらいか,などといった基礎的な情報が不可欠です。今回,Bird Research誌に掲載された平野さんの論文は,ササゴイの繁殖成績について調べたものです。

平野敏明 (2020) 都市公園におけるササゴイの繁殖成績と営巣樹種の変化. Bird Research 16: A25-A37.

 平野さんは2012年から2019年にかけて,宇都宮市の公園で営巣するササゴイ,113巣の繁殖状況を調べました。その結果,巣木が最初はヒマラヤスギが多かったのが,ケヤキに変わっていったこと,そして繁殖成功率は年により大きく変動していて38%の年から89%の年まであることがわかりました。繁殖の失敗の原因はわからないことが多かったものの,ハシブトガラスや哺乳類による捕食と思われるものや強風によるヒナや卵の落下がありました。
 木の高いところに営巣するササゴイの繁殖の失敗原因を明らかにするのは簡単なことではありませんが,それがわかるとササゴイの減少原因の一端が見えてくるのかなと思います。今後の研究の進展に期待したいと思います。


論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.16.A25

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