バードリサーチニュース

研究誌新着論文:キョウジョシギによるコアジサシ卵の捕食

バードリサーチニュース 2020年8月: 1 【研究誌】
著者:植田睦之

 キョウジョシギがほかの鳥の卵を食べることは海外ではよく知られています。しかし,日本では,キョウジョシギが何かの卵を食べたという事例は記録されたことがありませんでした。おそらく,日本ではキョウジョシギは旅鳥なので,鳥の繁殖期とはほとんど時期的に重複しないからだと思いますが…。
 そんなキョウジョシギの卵捕食の日本での初記録の報告がこの論文です。

奴賀俊光・松村雅行・北村亘(2020)キョウジョシギによるコアジサシ卵の捕食. Bird Research 16: S1-S5.

 奴賀さんたちは,千葉県九十九里浜と東京都の森ヶ崎水再生センターでそれぞれ 1例のキョウジョシギによるコアジサシ卵の捕食を観察し,ビデオ録画に成功しました。この捕食に対し,コアジサシは防衛しない個体もいて,捕食者として認識していないかもしれないということでした。

 


 現時点では,キョウジョシギによる卵の捕食は,日本では稀な事例にすぎませんが,シギチドリの中には,繁殖しない個体が繁殖地まで向かわずに,越冬地や中継地に滞在する個体がいます。もしキョウジョシギが日本にも「美味しい卵がたくさんある」ことを学習して夏も滞在する個体が出てきたりすると,コアジサシの保全上は大きな脅威になりますので,そうならない方がよいのですが,コアジサシのキョウジョシギに対する行動がどう変化(防衛行動をとるようになるのか)するのかな,とちょっと興味深く思いました。


論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.16.S1

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