バードリサーチニュース

研究誌新着論文:ベランダバードウォッチから明らかになった住宅地の鳥類相

バードリサーチニュース2018年11月: 1 【研究誌】
著者:植田睦之

キジバト(三木敏史).以前の都市鳥研究会の調査ではトップ3に入っていたキジバトが,今回の調査では8位に。何か起きているのだろうか?

 今,全国繁殖分布調査に合わせて東京都繁殖分布調査も実施しています。都会から住宅地を中心に調査しているこの調査では,すでにニュースレターでも紹介していますが,コゲラやメジロ,ヤマガラといった林の鳥が増えていて,モズやヒバリ,セッカといった草原の鳥が減っていること(2018年1月号),スズメが郊外で減少していて,都心では増加していること(2017年6月号)などが明らかになってきています。人の活動による影響の大きい都市域は,鳥の変化も大きいようです。
 そんな都市域の鳥の変化をモニタリングしようと始めたのがベランダバードウォッチです。その結果をまとめた論文が公開されました。


三上かつら・平野敏明・植田睦之(2018)参加型調査“ベランダバードウォッチ”から明らかになった関東地方の住宅地の鳥類相とその時間変動.Bird Research 14: A33-A44.

 都市域で記録の多い鳥が何か集計してみると,繁殖期でも越冬期でも,そして記録地点数で見ても記録率で見てもスズメとヒヨドリでした。都市鳥研究会の過去の記録では,キジバトが上位種の1つだったのが,今回のベランダバードウォッチの記録では,それほど上位に入っていなかった点も興味深いところでした。キジバトに何か起きているのか気になりますね。
 また,繁殖期,越冬期と季節による種のランクが大きく変動したのは越冬期に高くなったメジロ,逆に低くなったカワラヒワなどでした。実際にこれらの鳥の個体数が季節的に変化している可能性もありますが,利用環境が季節により変わったり,餌台による誘引があることなども考えられました。
 今後も調査結果を定期的に還元するなどしながら,皆さんの興味を喚起し,長期的な身近な鳥の変化など,明らかにしていきたいと思います。ぜひ調査にご参加ください。

論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.14.A33