バードリサーチニュース

研究誌新着論文:ハチクマから得られた日本初記録のシラミバエの1種

バードリサーチニュース2018年9月: 3 【研究誌】
著者:植田睦之

ハチクマの羽の中から採集されたシラミバエ Icosta(Icosta) longipalpis

 鳥の捕獲調査をしたことのある方はご存知かと思いますが,鳥の身体にはかっこいい虫が住んでいます。それがシラミバエです。ハエといってもそこらの蠅とは違います。羽の隙間に入りこむためのスーパーカーのような流線型のボディー。鳥の嘴による攻撃にも負けない硬質な身体。機能美です。そんなシラミバエの1種の日本初記録の論文がBird Research誌に掲載されました。


酒井淳一・久野公啓・堀田昌伸(2018)ハチクマから得られた日本初記録の Icosta (Icosta) longipalpis(ハエ目:シラミバエ科).Bird Research 14: S19-S21.

 

 このシラミバエはハチクマの捕獲調査の際にハチクマの雌成鳥の羽の中から採集されました。体長は10.2mm。ぼくが知っている小鳥のシラミバエと比べると,ハチクマに寄生しているだけにずいぶんと大きいです。翅など各部の形態的特徴から日本ではまだ記録のない Icosta (Icosta) longipalpisと判別されました。
 このシラミバエはパキスタン東部からフィリピンにかけて分布することが知られていて,タカやフクロウなどの猛禽類に寄生するシラミバエだそうです。猛禽類を捕獲して採集しないかぎり,その存在を知ることができませんから,これまで見つかっていなかっただけで,ハチクマに乗って,日本にも普通にやってきているのかもしれません。さらに,ハチクマの巣をほかの猛禽が乗っ取ったり,失敗後の巣を使うことで,シラミバエがほかの猛禽に乗り移ったりして,ほかの猛禽にも寄生が広まっていたりもするんですかね? ハチクマは繁殖開始時期がほかの猛禽類より遅いので,乗り移る機会はあまりないのかもしれませんが…。

論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.14.S19