バードリサーチニュース

内陸へ拡がるイソヒヨドリ・分布拡げるガビチョウ・ホンセイインコ GW イソヒヨドリ・ガビチョウ・ホンセイインコ調査の結果から

バードリサーチニュース2018年5月: 2 【活動報告】
著者:植田睦之

対象種のイソヒヨドリ(三木敏史),ガビチョウ(橋本和司),ホンセイインコ(松村茂生)


 全国鳥類繁殖分布調査のサイドイベントとして,ゴールデンウィークに開催したイソヒヨドリ・ガビチョウ・ホンセイインコ調査 207名の方から416件のデータをいただきました。調査にご協力いただいた皆様,告知にご協力いただいた都市鳥研究会の柴田佳秀さん,ありがとうございました。
 この調査は,ゴールデンウィークにみなさんが訪れるであろう山やショッピングセンターなどで見られそうな鳥の中から,分布変化が顕著な鳥ということでこれら3種を選び,情報収集しました。このデータに,2016年以降に全国鳥類繁殖分布調査に寄せられている情報やバードリサーチの野鳥観察データベース「フィールドノート(さえずりナビ)」に登録いただいたデータを加え,これまでのこれら3種の分布の変化をまとめてみました。

 その結果,イソヒヨドリはこれまでは海岸で観察される鳥だったのが,内陸へと分布を拡大させており,特に近畿から関東にかけて進出が顕著なこと。ガビチョウは南東北,関東から中部,九州で分布を拡げており,東京ではこれまで丘陵部の樹林帯に分布していたのが,住宅地の小規模な林へも分布を拡大させていること。そしてホンセイインコは東京周辺にのみ分布しており,武蔵野地域への分布拡大が顕著なことがわかりました。

 

 

イソヒヨドリ

図1 イソヒヨドリの分布変化(左:全国,右:東京)

図2 イソヒヨドリの観察地点の海岸線からの距離

 1990年代は全国の海岸沿いで見られる鳥でした。それが今回の結果ではかなり内陸でも普通に見られるようになっています。特に近畿から関東にかけて進出が顕著でした。
 今回の調査で寄せられたデータとフィールドノートに登録いただいたデータを基に海岸からの距離を測ってみると,海岸近く(海岸から0-2km)の記録も多いのですが,なんと10㎞以上内陸の記録が最も多かったのです。もちろん,そうした記録を積極的に送ってくれているから,という偏りは当然あるのですが,全国的に内陸への進出が進んでいる様子がうかがえます。
 北海道については海岸からの記録のみですが,もし内陸での観察があればお知らせください。

 

ガビチョウ

 これまでも全国鳥類繁殖分布調査の年報でも報告しましたが,南東北,関東から中部,九州で分布していたのが,それを核に分布を拡げ,東北と関東はほぼつながってしまったのが,さらに多くのデータを基に示すことができました。
 東京では丘陵部の樹林帯にのみ分布し,平地部では見られなかったのですが,現在は平地部の住宅地にある小規模な林でも見られるようになっていました。

図3 ガビチョウの分布の変化(左:全国,右:東京)

 

ホンセイインコ

図4 ホンセイインコの分布の変化(左:全国,右:東京)

 全国的にも東京圏でのみ記録されていました。国立環境研究所の「侵入生物データベース」によると,以前は,愛知,京都,広島でも繁殖していたそうです。しかし,それらの地域ではもう見られなくなってしまったようです。
 東京の分布をみると,1990年代と比べて北側へ,そして西側へと分布を拡げているだけでなく,1990年代は,飛んでいることを観察されることが多く周辺では繁殖しないであろうの記録が多かったのが,樹木等に降りているのを観察することが多くなりの記録が増えています。高い木の洞に営巣するため,繁殖の確認は難しいのですが,これらの場所で繁殖している個体も増えているのではと思われます。

 

情報収集にご協力ください

 今回はこれらの3種について情報収集集をしましたが,ほかにも分布が変化している鳥は多くいます。「全国鳥類繁殖分布調査」は日本で繁殖する鳥全種の情報収集をしていますし,「全国鳥類越冬分布調査」では,日本で越冬する鳥全種の情報収集をしています。ぜひこれらの調査への情報提供をお願いします。これらのサイトのフォームからの情報提供も大歓迎ですし,また「フィールドノート(さえずりナビ)」で記録いただいた情報はこれらの分布図に反映されます。入力もスマホからできて,使いやすくなっていますので,お試しいただき,ぜひ普段の観察結果を記録ください。
よろしくお願いいたします。

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