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東京の島も法則に則っているか 東京都鳥類繁殖分布調査 中間報告

【活動報告】
著者:佐藤望

 バードリサーチなどのNGOは全国鳥類繁殖分布調査の一環として、2017年から東京都鳥類繁殖分布調査を実施しています.東京は世界有数の都市部や亜高山帯、伊豆諸島から亜熱帯地域の小笠原諸島など、面積は小さいながら様々な環境を有しており、全国鳥類繁殖分布調査よりも詳細な調査をする事で、より細かい鳥類の生態が見えてきます.本土部の結果の一部はニュースレターの6月号に掲載しました.今回は島しょ部のトピックスを紹介します.

写真1 伊豆諸島で繁殖しているアカコッコ(写真:矢本賢氏)

 島は色々な面で本州と異なります.まずは生息している鳥が違います.例えばイイジマムシクイやアカコッコ(写真1)など本州ではほとんど見る事のできない鳥類が繁殖しています.また,島しょでは一般的に「小さな島より大きな島ほど生息する動植物の種数が多い」事が知られています.今回の調査で他の島と同様,東京の島しょも本州と比べると繁殖している鳥類が少なく,島の面積と鳥の種数に相関がありそうだという事が分かってきました.

東京島嶼の繁殖分布調査

 東京の島しょで繁殖している鳥類の分布を調べるため,12の島でボランティア調査員(約50名)と共に調査を行いました.調査は約1km2の区画(メッシュ)毎にラインセンサス法で行い,確認した鳥の種類,個体数,そして繁殖の可能性を記録しました.
その結果,69種,1万8千羽以上の鳥を記録しました.そのうち,各島で繁殖の可能性がある鳥を表1にまとめました.

表1 各島で確認した繁殖の可能性のある種の数

東京の島の大きさと種数に相関はあるか

図1 東京島嶼12島の面積と確認された繁殖の可能性のある鳥の種数

 東京の島しょの中で大島,三宅島,八丈島は他の島よりも比較的面接が大きい島です.これらの島に生息する鳥はそれ以外の島より種数が多く,世界の他の島々同様,「小さな島より大きな島ほど生息する動植物の種数が多い現象」はありそうです.一方,それ以外の島に関してははっきりとした傾向はないように見えます(図1).たとえば,新島と父島の面積はともに約23km2ですが,今回の調査で確認できた繁殖の可能性のある鳥類の種数はそれぞれ23種と14種と差がありました.これは父島と本州との距離が約1000kmと,新島のおよそ10倍の距離がある事が関係していると考えられます.「大陸から離れた島ほど種数が少ない現象」も世界中の島で見られるので,本州と島の「距離の効果」が「大きさの効果」を打ち消しているのかもしれません.

種構成は時代と共に変化する?

 このように,これまでの生物学の知見で今回の調査結果を見てみると,伊豆諸島,小笠原諸島も世界中の島と同様,島の大きさや距離と種数の関係がある事が分かってきました.次に種数の内容を見ていきたいと思います.島しょ生物学の理論では,島は種の移住と絶滅が繰り返されるため,種構成は時間と共に変化していきますが,種数は一定に保たれるとされています(平衡種数).東京の島しょも種構成が変わっているのでしょうか.それを調べるため,東京大学名誉教授の樋口広芳氏が1970年代に行った伊豆諸島10島の鳥類調査の結果と今回の結果を比較してみます

図2 シジュウカラとツバメの繁殖分布図.赤色が繁殖確認,青色が繁殖の可能性のある行動(さえずりや巣材運びなど)を確認,緑色が生息確認をしたメッシュを示す.


 まずは1970年代よりも今回の方が多くの島で確認した種を見ていきます.シジュウカラとツバメは1970年代では10島中それぞれ6島と3島で確認されていましたが,今回の調査ではそれぞれ9島で繁殖の可能性を確認しました(図2).また,キビタキとハクセキレイは1970年代ではどの島でも確認されていませんが,今回はそれぞれ2島と3島で確認しています.
 一方,ヤマシギとミゾゴイは1970年代ではそれぞれ10島と8島で確認されていますが,今回はそれぞれ1島と2島でしか確認されませんでした.トビ,サシバ,オオコノハズクやアオバズクなども観察された島の数が1970年代のデータと比較すると減っていました.
 40年間の間にこれだけ多くの種で増減を確認することができたので,種構成が変化していく様子を捉える事ができました.ただ,どの島も種数は1970年代と比べて減っていました.これはほとんどの場所で夜間調査を実施していないため,フクロウなど夜行性の鳥類の記録率が低かったのが原因かもしれません.また,青ヶ島や利島では1970年代と比べて約10種少なかったのですが,これは調査時間が短かったため確認できなかった種がいた可能性があります.これらについては今後検証する必要があります.

 

ヒヨドリの不思議な分布

図3 ヒヨドリの繁殖分布.大島以外の島ではほぼ全域で見る事ができる

 ヒヨドリは今回の調査で最も多くの場所で確認された鳥の1つです(図3).しかし,本土に最も近い大島だけ例外で,大島内ではほとんどの場所で確認する事ができませんでした.大島でも砂漠地帯など,一部の場所を除いてほぼ全域を調査したので、この結果は不思議です.正直,これと言った仮説も思いつかない状況ですので,誰かアイディアがある方,是非教えてください.また国内のどこでも良いのでヒヨドリのいない島をご存知の方は情報提供をお願いします.その共通点などからヒヨドリのいない島の条件がわかるかもしれません.

 

 

 

八丈島の分布

図4 八丈島の鳥類の分布.イイジマムシクイやカラスバトは南東(三原山)に集中して分布している.

 今回はざっくりとしたデータ分析をした結果を紹介しましたが,それでも島の特徴を見る事ができました.今後は植生などの環境データと比較してより詳細な分析をして生息環境を明らかにしていきたいと思います.特に八丈島は場所によって、生息している鳥が異なる事がわかってきました.図4は八丈島に生息している鳥類の一部の繁殖分布を示しています.イイジマムシクイ,カラスバトなどは南東の方に分布が集中している一方,北西の方ではウグイスをのぞいてあまり生息していません.また,イソヒヨドリは真ん中(平地部)や海岸沿いに分布しています.八丈島は二つの山で構成されていて,それぞれの山の植生が異なっていて,このようにはっきりと分布が偏っていると考えられます(写真2).

写真2 八丈島の三原山頂上付近からの写真.森林性の鳥類が観察できる三原山に対して,奥に見える八丈富士はホオジロなど草原性の鳥類が生息していた.左奥に見えるのが八丈小島.