バードリサーチニュース

東京都鳥類繁殖分布調査にご参加ください

バードリサーチニュース2017年2月: 2 【参加募集】
著者:佐藤 望

図1 90年代に実施された東京都繁殖分布調査のコース。全国版よりも細かいメッシュで300以上の調査コースを設定しています

 バードリサーチなどのNGOは全国鳥類繁殖分布調査の一環として、東京都鳥類繁殖分布調査を開始する事にしました。東京都だけの繁殖分布調査と聞くと、全国よりもずいぶん規模が小さいと思われるかもしれません。たしかに調査の範囲は狭いですが、その分、詳細な調査を行ないます(図1)。そのため、全国調査では知ることのできない鳥類の現状を詳細に把握することができます。また、本調査では、伊豆諸島9島も対象としているため、アカコッコやモスケミソサザイなどの伊豆諸島ならではの鳥類の繁殖分布も明らかになることが期待されます。東京に在住の方もそうでない方も、ぜひ東京都繁殖分布調査にご参加ください!

 

東京都鳥類繁殖分布調査とは

図2 イギリス及びアイルランドのヒガラの分布図。詳細な調査によって、分布の密度が綺麗に表現されています。 東京の分布調査でもこれを目指します。

 大都市圏から奥多摩地域まで多様な環境を有する東京都内での鳥類の繁殖分布を明らかにすることを目的として70年代、90年代に実施された調査です。この2回の調査では島しょを除く都内全域を約1kmのメッシュで区切り、そのうちの300ヵ所以上でラインセンサス調査を実施しました。同時に、アンケート調査や文献調査も行われ、それを含めると東京都本土部のほとんどのメッシュでデータが得られました。現在行われている全国鳥類繁殖分布調査は、20kmメッシュ(1kmメッシュの400倍の大きさ)の中で2カ所を調査するという方法なので、これと比べると東京都の調査が非常に詳細に行われたことがわかります。また、実際に1kmメッシュで調査を実施したイギリスが作成したヒガラの分布図を見れば、その詳細さをより実感できるのではないでしょうか(図2)。
 過去2回の調査では、東京都で繁殖している鳥類の分布が明らかとなっただけではなく、1回目と2回目の調査の比較によって、20年間でどのように鳥類の分布が変化してきたのかもわかりました。また、これらのデータと東京都の環境の変化を照らし合わせる事で、鳥類が環境の変化に対して、どのように対応しているのかも垣間見る事ができます(過去2回の調査成果は全国鳥類繁殖分布調査ニュースレター第3号に掲載されていますので、そちらをご覧ください)。こういった調査結果、成果は東京都レッドデータブックの改定や、今後の都市開発を考える上でも重要なデータとなるでしょう。他の都市圏の開発計画の参考資料になるかもしれません。
 しかし、東京は刻一刻と姿を変えています。2回目の調査から20年が経過しましたが、その間にも東京は変化し続けています。当然、鳥類の分布にも変化が生じていることでしょう。20年毎のデータが3回分あれば、東京の変化と共に、そこに住む鳥類がどのように変化してきたのか、これまで以上に明らかとなります。

 残念ながら東京都では予算の目途が立っておらず、実施の予定はないとのことです。こんな貴重な知見を得られるチャンスを逃すわけにはいかないので、第3回東京都繁殖分布調査はバードリサーチなどのNGOが主体となって実施することにしました。過去2回と比較できるデータを得るためには、過去2回と同様に、詳細な調査を行なわなければなりません。これには皆様のご協力が不可欠です。是非、調査にご参加ください。100年後も色あせる事のない成果を残しましょう!

 

新たに追加する調査地:伊豆諸島

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図3 三宅島の様子。アカコッコをはじめ、本土ではほとんど見る事ができない鳥類が生息しています(山本裕撮影)。

 今回の調査では、過去2回の調査では含まれなかった伊豆諸島を新たに調査地として追加します。伊豆諸島は大小100近くの島で構成されており、そのうち9島が有人島です(図3)。この9島は空路や海路で本土から行くことができますが、天気によって船や飛行機が欠航する事があるため、予定通り上陸できない、あるいは予定日に帰れないというリスクがあります。過去の東京都繁殖分布調査で島しょ部が含まれなかったのは、こういったアクセスの難しさも関係しているかもしれません。しかし、伊豆諸島にはアカコッコやオーストンヤマガラ、ウチヤマセンニュウなど本土では見ることのできない固有種や固有亜種が生息しています(図4)。東京に近い島であるにもかかわらず、意外にも各鳥類がどのように分布しているのかを調査した例はあまりありません。伊豆諸島10島を調査した樋口

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図4 モスケミソサザイ 伊豆諸島には固有亜種が生息していますが、どのように分布しているのか明らかとなっていません。

(1973)は、「たとえこれまで行なわれた調査結果のすべてを重ね合わせたとしても、それぞれの島で繁殖している鳥の種類すら、まだ明らかになってはいないことがわかる。」と述べており、基礎的な調査が十分に実施されていないことを明記しています。

 その後も伊豆諸島では繁殖分布調査のような網羅的な調査は行われていません。レッドデータブック(2014 環境省)でも、モスケミソサザイ(絶滅危惧IB類で伊豆諸島の固有亜種)の個体数についての詳細は不明、となっています。今回の調査はこれまでにない規模の調査となるので、これまでわかっていなかった伊豆諸島の鳥類についても、多くの情報が得られることが期待できます。

 

調査参加方法

 調査に賛同、参加して頂ける方はまずホームページから、参加者登録をしてください。全国鳥類繁殖分布調査にすでに参加者登録をしている方も、こちらで新たに登録をお願いします。東京都以外にご在住の方の参加も歓迎致します。登録をしていただいた後、調査コース登録をおこなうためのURLをメールでお送り致します(2月下旬予定)。そこで調査可能な場所を登録してください。調査方法等の詳細についてはホームページをご確認ください。
 調査以外にも、データの入力やチェック,ホームページやニュースレターの作成まで様々スキルを持った多くのボランティアを必要としています。ボランティアができる方も是非,参加者登録をしてください!
 伊豆諸島調査は、5月中旬から6月下旬の間に行います。木曜夜(島によっては金曜夜も可)に竹芝桟橋から船に乗って島に移動し、滞在中に調査をして日曜の夜に帰ってきます。

 

調査協力団体募集

 東京都の各地域で活動されている野鳥関係団体様も是非、調査にご協力ください。普段の活動されている場所での調査を是非お願いします。団体として、ご協力して頂ける場合は、sato@bird-research.comまでご連絡下さい。ホームページ内の調査協力団体に掲載させていただきます。

 

説明会&交流会開催

 東京都鳥類繁殖分布調査の説明会と交流会を実施致します。ぜひ、ご参加ください!

・3月18日(土)14:00-16:00 + 交流会
日本野鳥の会東京 事務所 
東京都新宿区新宿5-18-16 新宿伊藤ビル3階

・3月25日(土)14:00-17:00 + 交流会
日本野鳥の会 会議室
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル3階

詳細は後日HP等でお知らせします。