バードリサーチニュース

繁殖分布調査につづき「越冬分布調査」も始めます

バードリサーチニュース2017年2月: 1 【参加募集】
著者:植田睦之
ベニヒワ(藤井 薫)

ベニヒワ(藤井 薫)

 バードリサーチは6団体と合同で,2020年の完成を目指した全国鳥類繁殖分布調査を進めています。調査は始まったばかりですが,夏鳥の復活の兆しをとらえるなど,少しずつ成果が上がってきています。でも何かちょっと物足りない気がしませんか? そう,越冬分布がわからないのです。

変化している冬の鳥たち

 ニュースレター2016年12月号でご紹介しましたが,冬鳥のカシラダカが減少が顕著だということで絶滅危惧II類に選定されました。また,ツグミなども昔と比べて減少していると聞きます。反対に,おそらく温暖化により分布域が拡がっている冬鳥もいます。ミソサザイは環境省が行なっているモニタリングサイト1000の結果から,これまで北海道南部から中部の太平洋側でしか越冬していなかったのが,道東でも越冬するようになるなど,越冬分布が拡がっていることが見えてきています(図1)。
 このように数も分布も大きく変化している冬鳥。繁殖分布だけでなく,越冬分布も明らかにしていく必要があるのではないでしょうか?

ミソサザイの分布の変化。赤丸がミソサザイが越冬期に記録された場所。環境省の第3回自然環境保全基礎調査の結果とモニタリングサイト1000の第2期の結果に基づく。1988年には記録されていない道央・道東域での越冬が記録されるようになっている

図1.ミソサザイの分布の変化。がミソサザイが越冬期に記録された場所。〇は調査は行なわれたが記録のない場所。環境省の第3回自然環境保全基礎調査とモニタリングサイト1000の結果に基づく。1988年には記録されていない道央・道東域での越冬が記録されるようになっている

 

越冬分布調査はじめます

 「まだ繁殖分布調査も途中なのに…」と思われるかもしれませんが,これだけ多くの野鳥観察者,研究者のネットワークができた機を逃すわけにはいきません。一気呵成。越冬分布調査も始めたいと思います。バードリサーチもこれまで冬鳥ウォッチで一部の冬鳥の調査はしてきましたが,この調査では全種が対象。同様に1988年に環境省により行なわれた冬鳥分布調査(第3回自然環境保全基礎調査)と比較して,冬鳥の現状とその変化を明らかにします。

 冬鳥の様子は年によって大きく変わります。毎年のように,今年は冬鳥が多いとか,少ないとか話題になります。実際,今年は東京の低地の林では例年はみられないアトリが観察されています。また,カラ類の混群のように,群れになっているものも多く,なわばりをもって万遍なく分布している繁殖期と違って,数回の調査でその生息数を明らかにすることは困難です。
 そこで,繁殖期の調査のようにセンサスはせずに,皆さんの普段の観察の情報をアンケート形式で収集します。

 

対象種 留鳥,漂鳥,冬鳥などすべての種
対象期間 2016-2020年の越冬期
送っていただく情報 

観察場所,種,そしてその鳥が例年越冬している鳥なのか,稀に越冬しているのか
といった越冬状況(不明でもOK)。留鳥も含めた全種の情報をお送りください。

情報の送信方法

Excelファイルで送っていただく方法とWEBフォームから送る方法があります。
 WEB: http://www.bird-atlas.jp/wba.html
 Excel: http://www.bird-atlas.jp/data/wba.xls
探鳥会の情報など,独自フォーマットの情報をお持ちの場合は場所(緯度経度か住所)と
日付があれば,データにできるので,そういったものは,メールでお送りください
(送付先:bbs@bird-research.jp)

 

 1980年代に環境省により行なわれた全国調査の情報と今回あつめる情報を比べたら多くの種の生息状況の変化が見えてくると思います。ぜひ,越冬分布を明らかにする「越冬分布調査」にもご参加ください。
 越冬分布調査のHP:http://www.bird-atlas.jp/winter.html

全国鳥類繁殖分布調査
主催団体:バードリサーチ,日本野鳥の会,日本自然保護協会,日本鳥類標識協会,山階鳥類研究所,環境省 生物多様性センター

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