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生態図鑑 ミヤコドリ

バードリサーチニュース2016年12月: 6 【生態図鑑】
著者:澤祐介

○英名 Eurasian Oystercatcher 学名 Haematopus ostralegus

○分類 チドリ目 ミヤコドリ科

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ミヤコドリ

○羽色 
 雌雄同色.頭部,胸部,背面,尾羽は黒色,側胸,腹部の体下面は白色,飛翔時には,腰から上尾筒にかけての白色と翼帯の白色が目立つ.成鳥の夏羽では,嘴,脚,虹彩は赤色になる.冬羽では,嘴は先端であるほど色がくすみ,脚の色も薄い桃色になる.幼鳥では背面は褐色味があり,羽縁が白色または淡色になる.嘴は橙色で先端部がやや暗色になる.脚の色は非繁殖羽に似る.虹彩は加齢とともに鮮やかな赤色になり,幼鳥時は赤黒い.

○分布 
 ミヤコドリは旧北区に広く分布し,ユーラシア大陸西部の沿岸地域,地中海,中央アジアのウクライナ,カザフスタン,ロシア内陸部,中国北東部,ロシア沿海州,カムチャッカ半島の南部などに非連続的に繁殖地が分布する.

○生息地 
 繁殖には,岩石海岸,砂浜海岸,乾いた海岸草原,潟湖など沿岸部の多様な環境を利用する.また内陸でも塩水湖,淡水湖沼,川岸の砂地草原,湿った雑草地なども利用する.越冬地では,海岸からあまり離れず,潮間帯の砂浜,砂利浜,岩礁地などで観察される.

○食性と採食行動
 二枚貝を好んで捕食する.ほかに,ゴカイやカニ,ミミズ,昆虫なども採食し,小魚もまれに採食する.日本における採餌環境は前浜干潟が多く,関東近辺では東京湾岸の干潟や九十九里浜などで観察され,引き潮時の汀線付近で採餌することが多い.また,捕獲した貝を波打ち際まで運び,中身を取り出して採餌する行動なども見られる.

○増えている日本のミヤコドリ
 日本に飛来するミヤコドリの個体数は近年増加傾向にあり,モニタリングサイト1000シギ・チドリ類調査第2期とりまとめ(環境省 2015)においても,冬季の個体数が有意に増加した種として報告されている.分布は局所的であり,主に東京湾湾奥部,伊勢湾西岸部でまとまった個体数が越冬している.東京湾では,湾奥部の三番瀬で1980年代から観察記録はあったが,定期的な越冬が確認されたのが1992年からであり,それ以降個体数が増加し,2004年には100羽超,2014年には300羽を超える数が越冬している(日本野鳥の会東京・研究部 2016).一方,伊勢湾西岸部では,安濃川河口付近において,2000年以降にミヤコドリの越冬数が増加しており,2011年1月には最大個体数104羽を記録しており,その後も60~100羽程度の個体数で越冬個体群が観察されている(岡ほか 2016).しかし,日本で越冬するミヤコドリ個体群の繁殖地や中継地は明らかになっておらず,増加の原因も不明である.

◆その他掲載記事
 ・分類
 ・全長,翼長,翼開長,嘴峰長,ふしょ長,体重
 ・形態
 ・鳴き声
 ・繁殖システム
 ・巣,卵,抱卵,育雛期間,非繁殖期
 ・嘴の形状と食性の関係は?
 ・保護上の課題

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