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研究誌新着論文:関東地方のオオセッカ,岡山のオオセッカ

バードリサーチニュース2017年1月: 1 【研究誌】
著者:植田睦之
ヨシの中でさえずるオオセッカ。繁殖期は飛びながら囀るが,春先はこうしてとまってさえずることが多い(撮影:内田博)

ヨシの中でさえずるオオセッカ。繁殖期は飛びながら囀るが,越冬地ではこうしてとまってさえずることが多い(撮影:内田博)

 昨年末に2本の論文が公開されました。偶然ですが2本ともオオセッカの越冬状況の論文です。オオセッカは繁殖期は飛びながらのさえずりが目立つ鳥ですが,冬はヨシ原に潜行してなかなか見つけられない鳥です。その調査方法が確立され,各地で調査が行なわれはじめたので,こんな偶然が起きたのでしょうね。

高橋雅雄ほか:関東地方の都市部および農村部におけるオオセッカの越冬状況. Bird Research 12: A65-A71.

 オオセッカはこれまで,スゲなどの下層植生が豊富なヨシ原で越冬することが知られていて,次に紹介する多田さんの岡山の事例も,こうしたヨシ原で越冬していました。高橋さんたちが関東地方の32か所の草原で調査を行なったところ,13か所でオオセッカが確認されました。オオセッカが確認されたのは,やはり下層植生の豊富なヨシ原でオオセッカが多く確認されたのですが,そのような環境だけではなく,水没したヨシ原や高層ヨシ原でも観察されました。また広いヨシ原だけでなく耕作放棄田や自然生態観察公園でも生息が確認されました。オオセッカは従来考えられていた以上に多様な植生環境で越冬しているのかもしれません。下層植生の豊富なヨシ原はあまり多くない環境なので,それ以外の環境でのオオセッカの環境選好性などを調べていくことも,越冬期のオオセッカの保護のためには重要なのだと思います。

論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.12.A65


多田英行:岡山県南部における越冬期のオオセッカの記録. Bird Research 12: S13-S18.

 岡山はオオセッカの越冬地の最西端ですが,ごく僅かな観察記録があるのみで,その越冬状況はよくわかっていません。そこで2014年から2016年にかけての越冬期に岡山県南部の3か所のヨシ原でオオセッカの生息状況を調べました。各調査地で1-3羽のオオセッカが確認され,岡山県南部はオオセッカの越冬地として継続的に利用されていると考えられました。越冬の目立たない鳥なので,調査をしていけば,さらに西に越冬地があることがわかってくるかもしれませんね。

論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.12.S13

 

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