バードリサーチニュース

カシラダカが絶滅危惧II類に

バードリサーチニュース2016年12月: 2 【その他】
著者:植田睦之

 冬に里山に行くと群れ飛ぶ姿をみることができるカシラダカ。今回行なわれたIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストの改定で,彼らが世界のレッドリストで絶滅危惧II類に選定されるほど厳しい状況にあることが示されました。

カシラダカ(撮影:三木敏史)

カシラダカ(撮影:三木敏史)

 

急減しているカシラダカ

 これまでニュースレターでも紹介してきましたが,アジアの陸鳥のモニタリングの会議(2015年7月号2016年11月号)でもカシラダカの減少は注目されてきました。急減してしまったシマアオジと同じようにヨーロッパの繁殖地で個体数が急激に減少し,分布の縮小も見られています。そして日本でも福井県織田山の標識調査の捕獲記録でカシラダカが急減していることが報告されています(米田・上木 2002Edenius et al. 2016)。こうした情報がもとになって,今回,絶滅危惧II類に選定されたのです。
 では,なぜカシラダカは減少しているのでしょうか? 現在までのところ,よくわかっていません。カシラダカの分布はシマアオジと似ているので,シマアオジと同様に中国での狩猟も一因と考えられています。日本でカシラダカがよく見られる谷津田的な里山では開発や耕作放棄など環境の変化が起きていそうです。ロシアなどの繁殖地でも森林火災や伐採などによる環境変化が考えられています。

冬鳥ウォッチに参加ください

 急減しているといってもカシラダカはシマアオジと違ってまだ個体数が多く,保護を進める時間が残されています。そのためには,まずは減少要因をつきとめることが重要です。
 カシラダカのために,ぼくたちは何ができるでしょうか? 日本のカシラダカの好適な生息環境を明らかにすることや、個体数が減っているところと減っていない場所の違いを明らかにすることができそうです。バードリサーチでは「冬鳥ウォッチ」でこれまでもカシラダカの記録を収集してきました。この調査に皆さんも参加していただけないでしょうか? 普段よく行く探鳥地の冬鳥(カシラダカ、マヒワ、アトリ、イスカ、ハギマシコ、カワラヒワ)の情報をお知らせください。カシラダカがいない場所の「いない」という情報も,カシラダカにとって好適な環境をつかむための重要な情報となります。
 ぜひ調査へのご参加,よろしくお願いいたします

冬鳥ウォッチのページ http://www.bird-research.jp/1_katsudo/fuyudori/index_fuyudori.html


今回のIUCNリストの改定では,それ以外にも鳥に関する改定がありました。詳細はバードライフの記者発表資料をご覧ください。
http://tokyo.birdlife.org/wp/wp-content/uploads/2016/12/8dab7b7309a8abcf63c04e74d74701a2.pdf

 

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