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ツバメの親はヒナに貝殻を運ぶ 千年の時を越えて明かされた、かぐや姫伝説の真相

バードリサーチニュース2016年8月: 5 【活動報告】
著者:神山和夫

かぐや姫の伝説は本当だった!

takaragai_wiki

図1. タカラガイ(Sodabottle CC BY-SA 3.0

平安時代に書かれた「竹取物語」に「燕の子安貝」というものが出てくるのをご存じでしょうか。5人の男性からプロポーズされたかぐや姫は、結婚する条件としてそれぞれ別の宝物を見つけてくるように求めます。その宝物のひとつが、ツバメが産むという不思議な貝「燕の子安貝」でした。子安貝とはタカラガイ(図1)の別名で、古くから安産のお守りになるという言い伝えがあったそうですが、どうしてその貝をツバメが産むという伝説ができあがったのでしょうか。

さらに、これと似たような話は海外にも存在していて、ヨーロッパ各地には「燕石(swallow-stone)」と呼ばれる伝承があるそうです(中沢 2002)。それによると、ツバメは特別な石を海辺から運んできて巣の中にしまっていて、その石にはヒナ鳥の目の病気を治す効果や、人間の女性に安産をもたらす効果があるのだと言います。

「燕の子安貝」や「燕石」は伝説の中の存在だと考えられていました。ところが、本当にツバメが巣に貝殻を運んできている事例が見つかったのです。

 

4カ所のツバメの巣で貝殻が見つかった

図2. ツバメの巣の下で見つかった貝殻とその地点。貝殻のサイズは1片が5~10mm程度。京都の左上の貝殻や東京の貝殻はかなり摩耗している。埼玉県の写真は左がヒナがはき出したペリット、右がペリットに含まれていた貝殻。詳しくは観察している方のブログを参照

図2. ツバメの巣の下で見つかった貝殻とその地点。貝殻のサイズは1片が5~10mm程度。京都の左上の貝殻や東京の貝殻はかなり摩耗している。埼玉県の写真は左がヒナがはき出したペリット、右がそのペリットに含まれていた3つの貝殻の破片。詳しくは観察している方のブログを参照。

貝殻の情報が集まるきっかけは、バードリサーチでツバメの巣の下に落ちている虫の写真を募集したことでした。ツバメ巣の下にはヒナが受けとり損ねた餌の虫が落ちていることがあるので、その写真を集めてツバメの餌を調べようと考えたのです。ところが、京都市の方から巣の下に貝殻を見つけたという情報が寄せられ、そのことをツバメブログで書いたところ、さらにもう3カ所の巣で貝殻が見つかったという報告が届きました(図2)。いずれの巣も川の近くにあり、貝殻は淡水性のシジミの仲間か、または工事などで運び込まれた海砂に混じっていた二枚貝だと思われます。

ツバメは繁殖期に二度ヒナを孵すことが多いのですが、継続観察されていた3カ所の巣では二度の繁殖の両方で巣の下から貝殻が見つかりました。そして、これら3カ所では頻繁に巣の下のフン掃除をしていたことから、貝殻が落ちたのは造巣後と考えられ、巣材の土に混ざって貝殻が持ち込まれたのではなさそうです。そして埼玉県の巣ではヒナがはき出したペリットの中から貝殻が見つかっているため、親ツバメはヒナに与えるために貝殻を運んできていると考えられます。

 

なぜヒナに貝殻を与えるのか?

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2016-08-31 追記
読者の方からご指摘があり、アメリカのワシントン州で、ツバメのヒナの死体の胃から貝殻が見つかった記録のあることが分かりました。解剖結果の論文によると、悪天候の後で死亡していたヒナを解剖して159個の胃を調べたところ、127個から食物以外の固い粒(貝殻片、砂粒、ガラス片)が見つかり、そのうち36%はカルシウム成分を含む物質だったということです。論文の著者は、胃から見つかった「固い粒」には胃石とカルシウム補給の両方の役割があるのではないかと推測しています。
Barrentine C D (1980) The Ingestion of Grit by Nestling Barn Swallows. Journal of Field Ornithology. 51(4): 368–371.