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生態図鑑 ドバト(カワラバト)

バードリサーチニュース2016年3月: 3 【生態図鑑】
著者:三上 修

○英名 Feral Pigeon 
 学名 Columba livia domestica 

○分類 ハト目 ハト科

写真1 ドバト

写真1 ドバト

 ドバトという種は存在しない.中東,アフリカ,ヨーロッパに現在生息しているカワラバトColumba livia を人間が家禽化し,それが再野生化したものがドバトである.
 ドバトが日本にいつからいたかは,正確にはわからない.平安時代以降にドバトと思われる記述があり,江戸時代には確実に輸入されたことがわかっている.
 現在,国内で,ドバトの姿をしているものは(1)飼い鳩が放し飼いにされており,夜に飼い主の下に戻るもの.(2)飼い鳩が,何らかの事情で,飼い主のもとに戻らず野生化したもの.(3)野生のドバトから生まれたドバトがいる.

○羽色

 個体により違いがある.主要なものとして,翼に二本の黒い線がある個体,全体が黒色,白色,赤褐色の個体,または,これらがモザイクになったものがいる.

○分布と生息環境
 北極と南極を除く世界中に分布している.日本では,北海道から沖縄で見られ,佐渡,隠岐,対馬,奄美などの島嶼にも生息している.小笠原諸島にはいない.
 商業地のような都市の中心部から,農地と住宅地がまざった都市の外周部までいる.

○繁殖システム 
 一夫一妻だが,一夫二妻の例もある(杉森 2002).繁殖は,後述するピジョンミルクによって1年中可能である.飼い鳩は,生まれて半年で繁殖が可能なので,ドバトも同様と思われる.

○抱卵,育雛期間,巣立ち率 
 抱卵は,日中は雌雄交代で行い,夜間はメスが抱卵する.約16日で孵化する.給餌は,ヒナが小さいころは,ハト全般で見られるようにピジョンミルクにより行われる.ピジョンミルクとは,親鳥が食べたものを分解消化し,それを素嚢から分泌した粥状のものである.ヒナが成長すると,普通の吐き戻しによる給餌も行う.
 孵化後5日くらいで目が開き,17日目で全身がほぼ羽毛でおおわれる.孵化から28-35日で巣立つ.巣立ち率(巣立数/産卵数)は,異なる地域から得られた記録として,30,48,62,75,76,80,92%がある(山階鳥類研究所 1979).ばらつきが大きく,調査をした場所,年,季節などに大きく影響を受けると思われる.

個体数の減少
 全国的な定量データはないが,東京の浅草寺,明治神宮などで減少していることを示す記録がある.減少要因として,(1)1981年に,ドバトによる害が問題になって,寺社における餌の販売,鳩舎の設置などが自粛された.(2)伝書鳩,レース鳩を一般の人が飼うことが減り,供給されるドバトの数が減った.(3)オオタカ,ハヤブサなどが都市に進出した猛禽類に捕食されている.(1)について補足すると,以前は寺社で積極的にハトを飼っていた.特に,八幡宮の系列では,ハトは神の使いして大事にされていた.

◆その他掲載記事
 ・全長,翼長,尾長,嘴峰長,ふしょ長,体重
 ・雌雄および成幼の違い:
 ・巣(位置,形と材質,大きさなど):
 ・食性と採餌行動
 ・侵略的外来種
 ・ドバトの黒色化
 ・求愛ディスプレイの多様さ

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