バードリサーチが2006/2007年冬から実施している冬鳥ウォッチは,今冬で早くも10年目になります。今冬は,12月までは例年にない暖冬でしたが,1月中旬ごろから日本海側や北日本で大雪が降り,さらには九州や沖縄県でも降雪が記録されました。このような冬は,冬鳥たちの生息状況にどのように影響したのでしょうか。今冬の冬鳥ウォッチはまだ情報収集の途中ですが,2月中旬までに届いた記録をもとに簡単に状況をご紹介いたします。
アトリ,アトリ,アトリ
今冬の記録で目を見張るのはアトリの記録です。宮城県北部では,1月に入ると大群が出現し,25万羽との記録もあります。その後,1月中旬から2月上旬には宮城県の各地で数千羽から数万羽の群れが記録されました。さらに,1月中旬から2月中旬には,福島県や栃木県でも大群が記録されました。
栃木県での様子
アトリは,栃木県では12月ごろから山地や里山の林で数十羽の小さな群れが記録されていました。しかし,1月中旬になると数百羽から数千羽の群れが山沿いの刈田や里山で記録されるようになり,それにともない都市公園などでも十数羽の群れが記録されはじめました。ほぼ時を同じくして,栃木県の中央部に位置する鹿沼市の農地に大群が出現し,2月中旬には数十万羽あるいは百万羽とも言われるまでになりました。この鹿沼市の農地は,9月の台風18号の豪雨で河川が氾濫し大被害をもたらした場所です。そのため,一帯のイネは刈取りが行なわれず放置されたままでした。アトリの大群は,この放置された大量のイネを食料とすることでひと月以上にわたって留まっているものと考えられます。
他の地域では?
2008年の冬も関東地方ではアトリの群れが各地で記録され,東京都の日比谷公園などでも数十羽の群れが記録されました。また,この年は九州地方には数万羽の群れも出現しました。しかし,今冬は,愛媛県などで1500羽以上の群れが記録されているものの,現時点では栃木県を除く関東地方や中部地方,西日本,九州地方からは大きな群れの記録はよせられていません。
他の冬鳥の渡来状況
一方,ほかの冬鳥ウォッチ対象種ではマヒワも各地に出現しているようです。ただ,現時点では数百羽のような大きな群れは少なく,数十羽規模の群れが多いようです。また,カワラヒワなども一部の地域を除くと全体的に少ないように見受けられます。さらに,ハギマシコの記録も数件あるだけです。
冬鳥ウォッチにご協力ください
しかし,情報はまだまだ少ないのが現状です。さらに詳しい今冬の各種の生息状況を明らかにするためにも全国からの情報をお持ちしております。宮城,福島,栃木以外の地域でアトリの大きな群れを見られた方はいませんか? マヒワやカワラヒワも地域によっては大きな群れが記録されていないでしょうか? ぜひ,皆さんのフィールドでのカシラダカ,マヒワ,アトリ,イスカ,ハギマシコ,カワラヒワの情報を以下のサイトからお寄せください。なお,今冬のとりまとめは3月上旬までの記録を基にしたいと思います。ご協力のほどよろしくお願いいたします。最後に,本文を記すにあたって嶋田哲郎氏をはじめ多くの皆様にご協力いただきました。お礼申し上げます。
冬鳥ウォッチ入力サイト:http://www.bird-research.jp/1_katsudo/fuyudori/index_chousakekka.html