バードリサーチニュース

ナッツを振って重さを確かめるメキシコカケス

バードリサーチニュース2015年7月:6 【論文紹介】
著者:小島みずき
メキシコカケス

写真. 重さ計測中のメキシコカケス.わずか0.5秒程のハンドリングで捨てるか,持ち帰るかの判断をしている.  Photo by Elzbieta Fuszara

枝豆や殻つきピーナッツを食べるとき,中身が小さかったり,入っていなかったりすることがありますよね.持った時の感触,見た目,重さなどで,あれ?と思うこともあると思います.中身の質や量をみて,良いものから取っていく…そんなことをメキシコカケスもやっているという興味深い論文が発表されたのでご紹介します.
 メキシコカケスはメキシコからアメリカ南部にかけて分布し,日本のカケスと同じく秋にドングリなどの木の実を木の割れ目や地中に埋めて隠し,冬の餌が少ない時期に取り出して食べる「貯食」という行動をする鳥ですが,大事にとっておいた木の実が,いざ食べようとしたら殻だけのスカスカの木の実だったりしたらがっかりしてしまいますよね.そんなことにならないように,メキシコカケスは木の実を隠す時や食べる前に,中身がちゃんと入っているか確認して選別しているというのです.

 メキシコカケスが中身の詰まった良いものだけを持っていくという仮説を検証するために,ヤブロンスキーさんたちは何百ものピーナッツの殻を丁寧に開け,中身を変えて元に戻し,カケスたちがピーナッツの殻の見た目と中身の違いに気付くかどうかを確かめました.
 まずカケスたちに中身がないピーナッツ10個と中身がすべて入ったピーナッツ10個(どちらも見た目は変わらないようにしてあるもの)を与えたところ,カケスは一度ピーナッツを持ち上げた後,殻を開けることなく,中身のないものは捨て,中身のあるものだけを持って行きました.
 次に普通のピーナッツ(平均2.1g)と,普通のピーナッツに余分な粘土を加えたもの(平均3.4g)で試したところ,重いものから取っていきました.
 最後の実験では,3つ実が入るピーナッツから2つ実を抜いた物(平均0.97g)と,1つの実だけが入るピーナッツで中身はそのままの物(平均0.83g)で比べています.メキシコカケスたちは3つ実のピーナッツ(中身は1つ)の方を先に取るものの,それは捨ててしまい1つ実のピーナッツを優先的に持っていきました.見た目から想像できる量よりも実際には中身が少ないことを気付いたのでしょう.

図

図.メキシコカケスが,一度持ち上げたもののうち捨てずにそのまま持っていった割合.左から,粘土で重くした3粒ピーナッツ,普通の3粒ピーナッツ,3つ入る殻に1粒だけ入ったピーナッツ,普通の1粒ピーナッツ. Jablonski et al. (2015)をもとに改変.

 メキシコカケスがピーナッツの選別をする瞬間をスローモーションで見てみると,嘴でピーナッツをくわえて何度か小さくカタカタと振っていることが分かりました.どうやらその時の音もしくは振動を一つの判断基準にしているようです.
 日本のカケスもカシやナラなどのドングリを貯食することが知られています.ドングリでも中身が少ないものや詰まったものがあるので,よく観察してみたら日本のカケスも質や量を確かめているかもしれませんね.もしかしたら硬い殻につつまれた貝や木の実を食べる他の種でもこうした行動が確認されるかもしれません.鳥を観察する時は,その行動にも注目してみてください.楽しみが広がると思います.

メキシコカケスがピーナッツを振って重さを調べている動画
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-05/lobe-bp052215.php
スローモーション
http://www.eurekalert.org/multimedia/pub/92402.php?from=297054


Piotr G. Jablonski, Sang-im Lee, Elzbieta Fuszara, Maciej Fuszara, Choongwon Jeong, Won Young Lee. 2015. Proximate mechanisms of detecting nut properties in a wild population of Mexican Jays (Aphelocoma ultramarina). Journal of Ornithology DOI: 10.1007/s10336-015-1193-6